後継者も財務も解決できる。でも、PMIで向き合うのは自分たちしかいない

この連載では、日成工業株式会社(以下、日成工業)がエルライングループに加わってから変わってきたことを、4つの角度からお伝えしてきました。財務の立て直し、自社職人の採用、経営会議による組織変革、リニューアル工事への参画 -それぞれに具体的な変化がありました。

最終回となる今回は、少し違う角度からお伝えします。M&Aで解決できることと、できないこと。グループインした現場責任者として、代表の口田次男氏が正直に語ってくれた言葉をもとに記録します。

目次

M&Aが解決する3つの入口——後継者・財務・採用

事業承継を検討するオーナーが抱える悩みの奥底には、共通した切実な思いがあります。後継者がいなければ、会社を続けられない。財務が行き詰まれば、経営はままならなくなる。その先にあるのは、従業員とその家族の生活を守れなくなるという現実です。

エルライングループが建設業の事業経営者を対象に実施した認知調査では、譲渡先に求める条件の1位は「従業員の雇用確保(36.3%)」でした。売上でも利益でもなく、まず従業員のことを考える。それがオーナーの本音です。

※建設業経営者の事業承継に関する詳細な調査結果はこちら【確認待ち:認知調査レポートページのURLを差し込んでください】

日成工業がエルライングループに加わった2019年当時も、状況は似ていました。後継者がいない、財務が厳しい、採用もままならない。この3つの入口の問題は、M&Aによって解決できる可能性があります。

後継者問題は、エルラインが経営を引き継ぐことで解決されました。財務の不安定さは、グループのバックアップと口田氏による改革で立て直されました。採用は、グループブランドとリファラル採用の仕組みによって、むしろ以前より強くなりました。

株式会社エルライン(以下、エルライン)は2019年以降(2026年5月現在)、7社のM&Aを実施。日成工業はその最初期の事例で、売上高は約1.9倍、経常利益は約28倍へと回復しています。

「サクセスストーリーっぽく見えても」——反発と摩擦を越えて、同じ方向を向くまで

この連載を通じてお伝えしてきた変化は、振り返れば確かにポジティブな話が多い。しかし口田氏は、そこに釘を刺します。

「なんかこうサクセスストーリーっぽく見えたとしても、そこって一生懸命みんなが同じ方向を向いてくように働きかけてきたというところがある。今までと違う努力はやっぱりしなくちゃいけない。」

変革には、必ず摩擦が伴います。勤怠ルールを変えれば、受け入れるまでに時間がかかる人が出る。人員配置を変えれば、不満が出る。数字を共有しても、最初は誰も真剣に受け止めない。

特に重要だったのが、現場の中核を担うメンバーとの価値観のすり合わせです。口田氏は、レイヤーの異なる社員とも丁寧にコミュニケーションを重ね、時間をかけて信頼関係を築いてきました。「散々やってきた」という言葉の裏には、その積み重ねがあります。

売上を上げ、費用を削減する努力とは、また別次元の努力です。組織が同じ方向を向くまでの、地道で粘り強い働きかけ。それがPMIの本丸であり、グループインすれば誰かがやってくれるわけではありません。現場の責任者が、自分で向き合うしかないのです。

現場を知るエルラインだから、一緒に歩みたい会社がある

では、エルラインはどんな会社と一緒にグループを作っていきたいのか。口田氏はシンプルに答えます。

「グループとして一緒に事業を進めていきたいのは、お客さんといい関係を持ってる塗装業の会社。」

財務が苦しくても、採用ができていなくても、それはM&Aで変えられる可能性があります。しかし、長年かけて築いてきた顧客との信頼関係は、M&Aでは作れません。その会社が積み上げてきたものの中で、最も引き継ぎたいのはそこだと口田氏は考えています。

同時に、こうも話しています。

「エルライングループの方式や進めてきたことも、そんなにすぐできたことじゃないので、グループとして同じ方向を向くには反発はいくらでも起きる。」

一緒に歩んでいける会社かどうかは、財務の数字だけでは測れません。変化を受け入れ、同じ方向を向いていける組織かどうか。それが、長期的な連携を左右します。

その先を変えるのは、自分たちだ——PMIと向き合う覚悟

口田氏が社員に対して、常日頃から言い続けている言葉があります。「利益を上げるには売上を上げるか費用を削減するかしかない」-シンプルですが、これが腹落ちして動けるかどうかが、PMIの成否を左右します。

経営会議で数字を共有し、賞与の原資を自分ごとにさせ、ルールを整え、一体感を作る。この連載でお伝えしてきた変化の根底には、常にこの問いがありました。

事業承継を検討されているオーナーの方へ。後継者・財務・採用という入口の問題は、エルラインとともに解決できる可能性があります。ただし、その先のPMIで向き合うのは、オーナーご自身と、その組織です。それができる会社と、エルラインは一緒に歩んでいきたいと考えています。

この記事について

本記事は2026年3月に実施したインタビューをもとに構成しています。登場する数値は取材時点の情報であり、将来の結果を保証するものではありません。本記事に掲載した調査データはエルライングループ実施の認知調査(建設業の事業経営者対象)によるものです。

この記事を書いた人

水野源太
株式会社エルライン 社長室 1級電気工事施工管理技士

新卒で大手総合設備会社に施工管理として就職し、大型現場の再開発工事を経験。その後、建設人材派遣会社へと移り、複数現場で施工管理としての実務経験を積む。1級電気工事施工管理技士に合格したのを機に、同社の本社へと出向し、教育に携わる。2024年4月にエルライングループにジョインし、教育や採用、広報・デジタルマーケティング・新規事業開発などに従事。

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