新築塗装からリニューアル参画へ。グループ連携が生んだシナジーの実態

前回の記事では、経営会議を通じて職人が会社の数字を自分ごととして捉えるようになり、組織の行動が変わっていった話をお伝えしました。財務・採用・組織——この3つの変化は、日成工業の「内側」の話です。今回は「外側」、つまり受注できる工事領域の変化についてお伝えします。

グループに入ることで、日成工業株式会社(以下、日成工業)が参画できる工事領域はどう変わったのか。代表の口田次男氏に話を聞きました。

目次

新築工事の工程に左右される経営——M&A前の日成工業が抱えていた構造課題

日成工業はもともと、新築工事の塗装をメインとしていた会社です。

新築工事の塗装は、ゼネコンの工程に大きく左右されます。工程が遅延すれば、塗装の出番も後ろにずれる。受注はあっても、売上が入ってくるタイミングが読めない。2019年のオリンピック需要による好況の裏側には、そういった構造的な不安定さがありました。

グループインから数年が経った今も、この課題は続いています。新築工事の工程遅延が売上目標の達成に影響を与える状況は、新築依存の経営が持つリスクを示しています。

だからこそ、エルライングループとの連携を活かして、リニューアル工事へと事業領域を広げていくことが、日成工業の次のチャレンジになっていきました。

「お客さんは技術で話をする」——専門知識なき営業が成立しない理由

リニューアル工事への参画は、塗装会社にとって自然な拡張ではありません。新築とリニューアルでは、工程・納め方・顧客との会話が全く異なります。技術の話ができなければ、そもそも商談のテーブルにも着けない。

「新築とリニューアルの両方を分かるスペシャリストの応募ってなかなか来ないと思うんです。お客様は技術力で会社選定をしているため、それに応えられる施工技術を持っている方が必要だと思っています。」

と口田氏は話します。塗装会社が単独でリニューアル営業を展開しようとすれば、そこに高い壁があります。

エルライングループに入ったことで、この壁を越えるチャレンジができるようになりました。株式会社エルライン(以下、エルライン)のリニューアル事業部が一式工事を受注し、日成工業が塗装工事を担う。専門知識を持つ人材がグループ内にいることで、日成工業単独では参画できなかった工事領域への関与が可能になっていきました。

グループがあるから広がった——リニューアル参画と染めQ連携が生んだ新しい仕事

グループ連携によるリニューアル参画は、既に具体的な実績を生んでいます。

エルラインのリニューアル事業部が案件を受注し、グループ内のとび土工事業部が足場を組み、日成工業が塗装を担う。このグループ完結型の体制で、電波塔など100mを超える建物の鉄塔塗装案件などを手がけてきました。グループ内で完結した案件の実績は、2025年10月〜2026年9月の1年間で7件・約1億4,000万円に上ります。

単独では参画できなかった規模・種類の工事がグループ連携によって可能になり、日成工業の売上に占めるリニューアル工事の比率は現在38%まで拡大。M&A前は新築塗装がほぼ全てだったことを考えると、グループ連携が事業領域の広がりに直結していることを示しています。

さらに、工事領域を広げたもう一つの連携があります。株式会社染めQテクノロジィ(以下、染めQ)との業務提携です。2025年10月に締結したこの提携により、老朽化した建物を壊さずに補強できる「染めQの特殊塗料技術と日成工業の施工力」を組み合わせた新たな受注ルートが生まれました。

「染めQさんの技術提供と僕らの足場も防水とかも含めた施工提案できるので、1つの会社に頼むことによってお互いの不足するとこを補えることができる。」

と口田氏は話します。

工場・倉庫・プラントなど継続的な需要が見込める新しい顧客層へのアクセスが生まれた。提携が生んだ効果は、業務提携以降、染めQ経由で68件・約1億2,200万円の受注につながっています。

染めQにとっては施工パートナーが見つかり、日成工業にとっては工場・倉庫・プラントなど継続的な需要が見込める新しい顧客層へのアクセスが生まれました。

足場・塗装が一体で動く体制が、顧客の信頼と次の案件を生む

グループ連携が生む価値は、コスト面だけではありません。

「お客様からの信用度も上がる。重層構造の下請会社の場合だとどこの誰が来るかもわかんないというのはやっぱり不安になる。それがグループ内でまるっというのはメリット。」

と口田氏は話します。

発注する側からすれば、複数の業者を個別に管理する必要がなく、窓口が一元化される。施工する側からすれば、グループ内で調整が完結するため、品質と安全管理を自社の方針で統一できる。

一般的に、リニューアル業界における塗装工事は外注比率が高く、自社施工体制を持つ会社は少ないとされています。その中でグループ内に専門工事会社を持ち、自社施工できる体制を整えていくことが、エルライングループとしての競争優位性になっていきます。日成工業のリニューアル参画は、その一つの具体的な形です。

新築塗装からリニューアルへ。染めQとの連携で広がった顧客層へ。グループに入ることで、日成工業が担える工事領域は、着実に変わってきています。

次の記事では、M&Aで全てが解決するとは言えない——グループインした現場責任者のリアルな言葉をお伝えします。

この記事について

本記事は2026年3月に実施したインタビューおよび社内資料をもとに構成しています。登場する数値は取材時点の情報であり、将来の結果を保証するものではありません。

この記事を書いた人

水野源太
株式会社エルライン 社長室 1級電気工事施工管理技士

新卒で大手総合設備会社に施工管理として就職し、大型現場の再開発工事を経験。その後、建設人材派遣会社へと移り、複数現場で施工管理としての実務経験を積む。1級電気工事施工管理技士に合格したのを機に、同社の本社へと出向し、教育に携わる。2024年4月にエルライングループにジョインし、教育や採用、広報・デジタルマーケティング・新規事業開発などに従事。

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