「北海道といえば京千」へ——託したオーナーが描く、次の景色〈京千・最終回〉

連続買収で建設業界を変える株式会社エルライン(以下、エルライン)が、自社の事例をもとに記録するM&A事例シリーズ。北海道・室蘭の専門工事会社・株式会社京千(以下、京千)を率いる代表取締役・木藤千秋氏(以下、木藤氏)へのインタビューも、今回が最終回です。

これまで、会社を託す決断(第1回)、統合がもたらした摩擦(第2回)、掛け算のシナジー(第3回)を記録してきました。最終回となる今回は、木藤氏が描く京千の未来と、同じ立場の経営者・これから現場を目指す若者へのメッセージをお届けします。

目次

5年後の目標|「北海道といえば京千」への構想

これからの京千を、どんな会社にしたいのか。そう尋ねると、木藤氏の答えに迷いはありませんでした。

「『北海道といえば京千だよね』と言ってもらえる存在になりたいんです。」

目標として木藤氏が掲げるのは、5年で、地域での存在感をいまの倍に(※具体的な数値目標は確認中)。エルライングループとしてM&Aを進めながら、その歩みを加速させていきたいと考えています。

そのために重視しているのは、拠点を広げることよりも、職人を増やすことです。エリアをむやみに広げるのではなく、地域に根を張り、現場を担える職人の層を厚くしていく。

「拠点を増やすより、職人を増やすこと。実際に現場で稼ぐのは、職人ですから。」

エルライングループが目指すのは、躯体工事を束ねる「躯体サブコン」という立ち位置です。その構想のなかで、京千は北海道を担う一社として、地域での存在感を高めていこうとしています。

職人の地位向上と待遇改善(年間休日120日)

木藤氏がとりわけ強くこだわるのが、職人の地位向上です。

躯体をつくる職人——鳶、鉄筋、型枠といった職種は、かつて現場の花形でした。しかし今、その働きに対価が見合っているとは言えない。それが木藤氏の問題意識です。

だからこそ木藤氏は、腕に見合う対価を払える会社にしたいと語ります。グループの基準に合わせ、年間休日は120日に(※制度・日数は確認中)。待遇面の改善も、着実に進んでいます。

「腕のある職人に、それに見合う対価を。そういう業界にしていきたいんです。」

そして、職人の地位向上は、木藤氏ひとりの想いにとどまりません。エルライングループ全体が目指す方向でもあります。グループとして適正な価格で仕事を受けられる立場を築き、その果実を現場で働く職人へ還元していく。第3回で触れた一次請け化や掛け算のシナジーは、最終的にはこの「職人の地位向上」につながっていきます。攻めの受注も、守りの判断も、すべてはその先にあるのです。

M&Aは「買って終わり」ではない|本社トップの地元まわり

グループインの後、印象的な出来事がありました。エルラインの代表・浅野氏自らが、京千とともに地元の有力企業へ挨拶に回ったのです。

地元での義理を尽くす挨拶は、北海道で信頼を築くうえで欠かせないもの。買収して終わりではなく、これからともに地域でやっていく——その姿勢の表れでした。

その足運びの根っこにあるのは、効率の計算ではありません。長くその地域を支えてきた企業への敬意です。建設業界には、担い手の不足や職人の地位といった、一社だけでは解けない社会課題があります。だからこそ、これまで地域を支えてきた人たちに敬意を払い、同じ課題に取り組む仲間として共感し、力を貸してもらえる関係を築いていく。挨拶に足を運ぶことは、その第一歩なのです。

事業承継を考えるオーナーにとって、本社のトップが自ら地元へ足を運ぶ姿は、何よりの安心材料になります。会社を託したあとも、ともに歩んでくれるのか——その問いへの、ひとつの答えがここにありました。

事業承継で失敗しないために|目的を明確にする

自ら譲渡を経験したオーナーとして、木藤氏は同じ悩みを持つ経営者に何を伝えるのか。その言葉は、とてもシンプルでした。

「目的をはっきりさせないと、M&Aは失敗します。引退したいのか、会社をこうしたいのか——人によって、まったく違いますから。」

M&Aを検討する経営者には、必ず何かしらの目的や悩みがあります。大切なのは、その目的を自分の中で明確にすること。そこが曖昧なまま進めると、たとえ条件が良くても後悔する、というのが木藤氏の実感です。

そして木藤氏は、美化せずにこうも付け加えます。グループに入れば、良くも悪くも、生活は変わる。第2回で記録したように、それは決してラクな道のりではありません。だからこそ、何のために託すのかを、自分の言葉で語れることが大切なのです。

手に職は、自分だけの武器になる

最後に、これから現場を目指す若い世代へ。木藤氏のメッセージは、自身がたどってきた道そのものでした。

「手に職をつければ、食いっぱぐれない。技術は一朝一夕には身につかないけど、身についたときには、それが自分の価値になります。」

からだを動かす仕事には、健康的で、余計なストレスをためにくいという良さもある。そして、簡単には機械や技術に置き換えられない——人の手と経験がものを言う世界です。手に職をつけることは、自分だけの武器を手に入れることだと木藤氏は言います。

経営者は交代せず、木藤氏は今も現場に立ち続けています。会社を託す決断から、統合の摩擦、掛け算のシナジー、そして未来へ。京千の物語は、これからも続いていきます。あなたの会社の、次の一歩。あるいは、あなた自身の、次のキャリア。その相談を、エルライングループはいつでも待っています。

この記事を書いた人

水野源太
株式会社エルライン 社長室 1級電気工事施工管理技士

新卒で大手総合設備会社に施工管理として就職し、大型現場の再開発工事を経験。その後、建設人材派遣会社へと移り、複数現場で施工管理としての実務経験を積む。1級電気工事施工管理技士に合格したのを機に、同社の本社へと出向し、教育に携わる。2024年4月にエルライングループにジョインし、教育や採用、広報・デジタルマーケティング・新規事業開発などに従事。

京千M&A事例_掛け算の先にある好循環

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