「移動式の足場にはどんな種類があるのだろう」
「うちの現場に移動式の足場が本当に向いているのかわからない……」
移動式の足場の導入を検討しているものの、どれを選べば良いのか、それ以前にそもそも導入すべきかどうかの判断がつかずお困りではありませんか?
移動式足場とは、その名称が示す通り、移動させることの可能な簡易足場で、作業効率の向上に大きく貢献する設備です。
移動式足場というとローリングタワーをイメージする人が多いですが、実はそのほかにもあり、大きく分けると以下の4種類に分けられます。
- ローリングタワー
- アップスター(昇降式移動式足場)
- リフター(高所作業台)
- 移動式室内足場
それぞれの特徴によって、活かせる現場・用途が異なるため、現場の状況や作業内容に合ったタイプを選ぶことが重要です。
そこで本記事では、下記について解説します。
この記事を読むとわかること |
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お読みいただければ、移動式足場の種類やそれぞれが向く現場や工事内容がわかり、移動式足場を導入すべきかどうかを判断できるようになります。
「本当に必要なのか?」から、「どう選ぶべきか?」「どう入手するか?」まで、移動式足場の検討に役立つ情報をまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。
1. 移動式足場とは

移動式足場は、その名の通り「移動できる足場」です。
脚部にキャスター(車輪)がついているので、組み上がった状態のまま人力で移動させることがで切る点が特徴です。
一般的な固定式の足場との相違点は、下表の通りです。
機能・特徴 | 移動式足場 | 固定式足場 |
---|---|---|
移動性 | 人力で移動可能 | 移動不可 |
組立時間 | 5〜40分程度 | 約1日(戸建て住宅) 数日〜数週間(大規模マンション、ビル等) |
対応高さ | 3階建まで (一般的には2階建までで使用) |
高層階でも対応可能 |
設置場所 | 平坦かつ安定した地面の場所 | 基本的に制限なし (足元の状態に応じて組む) |
設置範囲 | 規模によらず一定 | 対象建築物の壁一面または全面など広範囲 |
コスト | 低コスト | 高コスト |
小回りがきき、スムーズに位置を変えられるため、複数の作業箇所をこまめに移動する必要があるようなケースで効率的な作業を実現します。
そんな移動式足場には、いくつかの種類があります。次章でご紹介していきます。
2. 移動式足場の種類は主に4つ

移動式足場の代表格といえるのがローリングタワーで、「移動式足場=ローリングタワー」という捉え方もよくされます。
ですが、厳密にはローリングタワーを含め、移動式足場は主に4種類あります。
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上記4種類の仕様などをまとめたものが下表です。
項目 | ローリングタワー | アップスター (昇降式移動式足場) |
リフター (高所作業台) |
移動式室内足場 |
---|---|---|---|---|
高さ | 主流は5m前後 | 1〜4m程度 | 〜10m前後 | 〜2m前後 |
移動方法 | 組み立てた状態のままキャスターで人力移動 | キャスターで人力移動(運搬時は一番低い位置に下げた状態で) | キャスターで人力移動 | キャスターで人力移動(運搬時は折り畳んだ状態で) |
組み立ての必要性 | 必要(有資格者作業) | 不要 | 不要 | 組み立て式・完成品両方あり |
上記4種類を一つずつ、以下で解説していきますので、「あの現場にはどの種類が向きそうかな?」という視点でお読みいただければと思います。
2-1. ローリングタワー

移動式足場の中でももっとも一般的なタイプが、ローリングタワーです。
必要な作業高さに応じて段数を積み上げて組み立てる仮設足場で、現場での柔軟な対応が可能です。
規格はないため段数や高さが製品ごとに異なりますが、2〜3段(高さ5m前後)で使うケースが多く、最大で6段程度まで対応可能です。
現場で必要な高さに合わせて組み立てる仕組みで、製品にもよりますが、3段以上(安全性を重視するなら2段以上)の場合は、アウトリガー(地面方向に突っ張って倒れを防ぐ補助脚)を併用します。
キャスター付きのため、一度組み立てた後は解体することなくそのまま移動可能。
工具や資材を載せたまま次の作業場所まで手押しでスムーズに動かせます。
ローリングタワーについてのさらに詳しい説明は、「ローリングタワー(イントレ)とは?主な種類やおすすめケースをわかりやすく紹介」をご参照ください。
2-2. アップスター(昇降式移動式足場)
アップスター(昇降式移動式足場)は、作業床の昇降も可能なタイプの移動式足場です。
キャスター付きで人力で移動させられるローリングタワーに、組立・解体不要でその場で高さ調整(おおよそ1〜4m程度の範囲)できる機能が付加された足場といえます。
高さ調整は、バネバランス式(バネの力が動きを補助する方式)により、作業者が手動で簡単に行えます。
また、組み立て不要な上、運搬時には最下段まで下げることでコンパクトになり移動が楽なので、ちょっとした補修作業にも重宝するのがアップスターです。
前述したローリングタワーと機能・特徴を比較したものが下表です。
機能・特徴 | アップスター | ローリングタワー |
---|---|---|
移動性 | 人力で移動可能 | 人力で移動可能 |
高さ調整 | その場で手動で調整可能 | 解体して組み立て直す必要あり |
組立・解体 | 不要 | 必要 |
運搬 | コンパクトに畳んだ状態で運搬可能 | 解体した部材の形で運搬 |
それぞれおすすめのケースは、3. 【種類別】移動式足場の導入がおすすめの現場・作業で解説していきます。
2-3. リフター(高所作業台)
リフター(高所作業台)は、作業床を2m以上の高さまで持ち上げられる簡易タイプの高所足場です。
バスケット(手すり付きの作業台)を垂直方向に昇降させて使用する点が特徴です。
消防のはしご車の作業台をイメージするとわかりやすいでしょう。
高さ調整を手動で行うタイプもありますが、現在主流となっているのは油圧式や電動式。
よりスムーズで安全な高さ調整が可能です。
すべてが移動式というわけではありませんが、キャスター付きのモデルであれば、人力で水平方向に移動させることができます。(自走装置付きのものは高所作業“車”として区別されています)
組み立て不要で、動力式であるにもかかわらず、狭いスペースでも比較的扱いやすいサイズ感の移動式足場がリフターです。
2-4. 移動式室内足場
移動式室内足場は、その名の通り、主に室内での使用を想定したキャスター付きの簡易足場です。
対応できる作業高さは2m前後とそこまで高くないため、イメージとしては「高さのあるテーブルの上に載って作業する」ような感覚に近いです。
高さ調整は可能ですが、調整幅は数十cmの範囲にとどまるため、施工場所の高さに見合った製品をあらかじめ選んでおく必要があります。
ジャバラ式あるいは折りた畳み式の構造で、使わないときは卓球台のようにスリムに折り畳んでおけて、一般的なアルミ製のものは軽量で移動しやすいため、狭い室内への持ち込みもスムーズです。
省スペース性と取り回しの良さが特長の足場が、移動式室内足場です。
3. 【種類別】移動式足場の導入がおすすめの現場・作業

移動式足場はさまざまな場面で便利に使えますが、前章でご紹介した各種類の特性と、特に適している現場・作業の例は、下表の通りです。
ローリングタワー | |
特性 | 広い作業エリアを区画分けし、順番に作業を進めるような現場に適している |
適している現場・作業の例 |
|
アップスター(昇降式移動式足場) | |
特性 |
高さの異なる場所での作業が多い現場、ちょっとした補修や短時間の作業に適している |
適している現場・作業の例 |
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リフター(高所作業台) | |
特性 | ビルの内部工事や改修作業に適している (エレベーターへの搬入やドアの出入りが可能なサイズのものが多いため) |
適している現場・作業の例 |
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移動式室内足場 | |
特性 | 極端に広くない屋内空間での天井付近の施工に適している |
適している現場・作業の例 |
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4. 各種移動式足場の価格相場

移動式足場には異なる特性を持った複数の種類があるとわかったところで気になるのは、その価格ではないでしょうか。
上記でご紹介した各種移動式足場の価格相場は、下表の通りです。
種類 | 価格相場 |
---|---|
ローリングタワー(3段) | 15〜50万円 |
アップスター(昇降式移動式足場) | 50〜80万円 |
リフター(高所作業台) | 200〜250万円 |
移動式室内足場 | 数万〜数十万円(製品によりかなり幅あり) |
移動式足場は、どのタイプも決して安価とはいえませんが、固定式足場を組み立てるための人手・時間・資材コストを考慮すると、トータルで大きなメリットをもたらすケースが少なくありません。
すべての現場に適しているわけではなく、現場条件や作業内容によって向き・不向きはあります。
それでも、移動式足場の利点が活かせるような環境であれば、作業効率・段取りのスムーズさ・安全性の向上につながり、結果として工期短縮やコスト削減にもつながります。
次章では、それぞれの移動式足場がどのような現場や作業内容に特に適しているのかについて、具体的にご紹介していきます。
5. 移動式足場をお得に手に入れる方法

本章では、移動式足場をお得に入手する主な方法として、次の3つをご紹介します。
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それぞれにメリットとデメリットがあり、自社の使用目的や運用体制、予算規模などによって最適な選択肢は異なります。
以下で詳しく解説しますので、自社にとって最も合理的な入手方法を見つけるご参考になさってください。
5-1. 中古品を購入する
移動式足場をできるだけお得に入手したい場合、まず検討したいのが中古品の購入です。
移動式足場に限らず、建機・資材全般にいえることですが、一度使用されただけでも新品との価格差は大きいため、品質に問題がなければ中古品購入はコストパフォーマンスの高い選択肢になるでしょう。
以下は中古品を購入するメリットとデメリットです。
メリット | 新品の5〜7割程度の価格で買える |
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デメリット |
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中古品といっても使い込まれたものから新品同様のものまで状態はさまざま。
そのため一概にはいえませんが、中古品の価格相場は新品の5〜7割程度が目安です。
ただし、中古品は「売りに出されているタイミング」に左右されることから、欲しい機種や仕様のものが、必要なタイミングで手に入るとは限らないのがネックです。
急ぎでなければ、こまめに情報収集を行いつつ条件に合うものが出るまで待つという方法は有効ですが、中古市場はタイミング次第で掘り出し物に出会える可能性もあるため、候補のひとつとして押さえておく価値は十分にあるでしょう。
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5-2. 同業者から譲り受ける
同業者から譲ってもらうのも、移動式足場をお得に手に入れる方法の一つです。
販売業者を介さない直接取引のため、中間マージンが発生せず、その分コストを抑えられるからです。
以下は、同業者から譲り受けるメリットとデメリットです。
メリット | 交渉次第でかなり安く買える可能性あり |
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デメリット |
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まだ使える移動式足場を手放すタイミングとしては以下のようなケースが考えられます。
- より高性能で使いやすいタイプに買い替えるタイミング
- 事業縮小や方向転換のため不要となる移動式足場を手放そうとしているタイミング
そのようなタイミングは頻繁に訪れるものではありませんが、うまく互いのニーズが合致すれば、相場よりも大幅に安い価格で譲ってもらえる可能性もあります。
こうしたチャンスを逃さないために、「譲れる足場材が出たら教えてほしい」と日頃から声をかけておくことが大切です。
顔なじみ同士の取引だからこそ、気持ちの良い取引とするために気を遣う部分もありますが、信頼関係に基づく良心的な価格で譲ってもらえる可能性のある、有力な選択肢といえます。
5-3. レンタルを利用する
厳密には「手に入れる」方法ではありませんが、コストを抑えつつ現場に導入できる手段が、レンタルです。
移動式足場をレンタルする際のメリットとデメリットは下記の通りです。
メリット | 保管・点検・修理の手間がかからない |
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デメリット | あくまで「借りるだけ」で、所有できない |
「借りるだけ」と聞くと、もったいなく感じるかもしれません。
しかし、購入した場合に必ず発生する保管・点検・修理といった維持管理の手間が不要なことから、総合的に見るとレンタルのほうが合理的・経済的なケースも少なくありません。
特に、以下のようなケースでは、レンタルが有力な選択肢になります。
- 利用期間が短期間・限定的なケース
- 自社に保管スペースやメンテナンス体制がないケース
- 移動式足場を購入前に、まず試して使い勝手を確認したいケース
下表で、移動式足場各種の購入時とレンタル時の費用感を比較しています。
(※レンタル料金は期間や業者によっても変動するため、参考程度にご覧ください)
種類 | 新品購入の場合 | レンタルの場合 |
---|---|---|
ローリングタワー(3段) | 15〜50万円 | 10,500〜11,500円/日 |
アップスター(昇降式移動式足場) | 50〜80万円 | 1,000〜15,000円/日 |
リフター(高所作業台) | 200〜250万円 | 6,000〜15,000円/日 |
移動式室内足場 | 数万〜数十万円 | 要問合せ |
長期レンタルの場合は、日割り単価が安くなる傾向がありますので、利用前に必ず複数社見積もりを取り、比較検討しましょう。
また、購入すれば、保管やメンテナンスの手間がかかる一方で、必要なときにいつでも使える安心感があります。費用面だけでなく、そういった点も加味して検討しましょう。
仮設資材全般のレンタルに関しては「仮設資材レンタル」で解説していますので、詳しくはそちらをご参照ください。
6. 移動式足場の組立・解体は「資格保有者のもと教育受講者が従事する」必要があるケースも

ここまで、移動式足場の種類や入手方法についてご紹介してきました。
しかし、足場を入手すればすぐに現場で使えるとは限らないという点には注意が必要です。
実は、移動式足場を扱う上で、法令によって一定の条件や資格が求められる場合があるのです。
要件を満たしていなければ、移動式足場が手元にあっても、現場での使用が認められません。事前に使用予定の現場で要件を満たせるか、確認しておきましょう。
たとえば、ローリングタワーが3段以上(高さ5m以上)となる場合、組立や解体では「足場の組立て等作業主任者技能講習」の修了者を主任者にするという法令が関わってきます。
事業者は、令第六条第十五号の作業については、足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者のうちから、足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない。
その他にも、
- 満18歳にならなければ足場の組立て等に従事できない
- 厚生労働省「労働安全衛生規則」第36条39項の定めに該当する作業を行うには、「足場の組立て等の業務に係わる特別教育」(厚生労働省「安全衛生特別教育規程」第22条参照)の受講が必要
などの制限があります。
足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除く。)
アップスターは組立・解体不要ですが、タラップの設置が組立に該当したり、昇降作業が変更の作業に係る業務に該当するため、特別教育受講が必要です。
これらの法令や資格要件を守らないまま作業を行えば、重大な労働災害や法令違反につながるリスクがあります。
安全かつ適法に運用するためにも、使用前には必ず必要な資格や条件を確認し、適切な体制で作業を行いましょう。
7. まとめ
▼移動式足場とは、脚部にキャスター(車輪)がついており、使用しているそのままの状態で移動させることのできる簡易足場のこと。
▼移動式足場の主な種類は以下の4つ。
- ローリングタワー
- アップスター(昇降式移動式足場)
- リフター(高所作業台)
- 移動式室内足場
▼各種移動足場の特性と、特に適している現場・作業の例は、下表の通り。
ローリングタワー | |
特性 | 広い作業エリアを区画分けし、順番に作業を進めるような現場に適している |
適している現場・作業の例 |
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アップスター(昇降式移動式足場) | |
特性 |
高さの異なる場所での作業が多い現場、ちょっとした補修や短時間の作業に適している |
適している現場・作業の例 |
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リフター(高所作業台) | |
特性 | ビルの内部工事や改修作業に適している (エレベーターへの搬入やドアの出入りが可能なサイズのものが多いため) |
適している現場・作業の例 |
|
移動式室内足場 | |
特性 | 極端に広くない屋内空間での天井付近の施工に適している |
適している現場・作業の例 |
|
▼各種移動式足場の価格相場は、下表の通り。
種類 | 新品購入の場合 | レンタルの場合 |
---|---|---|
ローリングタワー(3段) | 15〜50万円 | 10,500〜11,500円/日 |
アップスター(昇降式移動式足場) | 50〜80万円 | 1,000〜15,000円/日 |
リフター(高所作業台) | 200〜250万円 | 6,000〜15,000円/日 |
移動式室内足場 | 数万〜数十万円 | 要問合せ |
▼移動式足場を扱うに当たっては、下記のような一定の条件や資格が法令の定めにより求められる場合がある。
- 3段以上(高さ5m以上)のローリングタワーの組立や解体
→「足場の組立て等作業主任者技能講習」の修了者を主任者にする必要あり - 足場の組立、解体又は変更の作業に係る業務
→「足場の組立て等の業務に係わる特別教育」を受講する必要あり
本記事が、移動式足場導入のご検討のお役に立ちましたら幸いです。
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