「単管足場についてちゃんと理解しておきたい」
「うちではまだ単管足場を使っているけれど、そろそろ替え時なのかな……?」
最近では同業者の多くが単管足場からくさび式足場に移行している中、「このまま単管で続けていいのか?」と不安がよぎり、改めて単管足場について調べているのではないでしょうか。
単管足場とは、かつて丸太を紐や番線(鉄線)で縛って固定していた足場の構造を、「単管パイプとクランプ」で引き継いだシンプルな足場です。そのため、後から登場したくさび式足場や枠組足場に比べ、安全性や施工性の面で劣るといった側面があります。
現場の安全対策が年々厳しくなっている現状において、先行手すり式で組めるくさび式足場が標準仕様とされていることもあり、単管足場の利用ケースは減少してきています。
もちろん、狭小地や特殊な形状の建物など、単管足場でないと対応しづらいケースも存在します。しかし、「単管足場しか対応できない」状態では、対応可能な現場が限られ、受注の機会を逃すリスクがあると言えるでしょう。
だからこそ、単管足場の特性と限界を今一度正しく理解した上で、現場の安全性と近い将来の事業拡大に備え、くさび式足場(あるいは枠組足場)への切り替え準備を進めておくことが重要となります。
そこで本記事では、下記について解説します。
この記事を読むとわかること |
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本記事を通じて、普段なんとなく使っている単管足場が他の足場とどう違うのかが明確になり、今後も使い続けるべきかどうかを判断するためのヒントを得られるはずです。
ぜひ最後までお読みいただき、日々の現場作業をより安全で効率的なものにしていきましょう。
1. 単管足場とは「単管パイプ+クランプ」で組むシンプルな足場

単管足場とは、単管パイプをクランプ(単管パイプなどを挟み込んだ状態でネジで締め付けて固定する金具)で固定して組み立てるシンプルな足場です。
(クランプについては「足場用クランプ完全ガイド|種類・選び方・価格・注意点まで解説」で詳しく解説していますので、ご参照ください)
冒頭でもお伝えした通り、丸太を紐や番線(鉄線)でしばって固定して組んでいた昔の足場のいわば現代版であり、複数の種類がある足場のうちもっとも伝統的な形態の足場といえます。
そんな単管足場には、主に以下のような特徴があります。
- 細かな調整が可能なため、幅広い形状に組み上げることができる
- ごくシンプルな構造であるため、組み立てる作業者のスキルが仕上がりに影響する
- 構成部材の種類が少ないため、部材調達コストを抑えることができる
しかし同時に、近年ではあまり見かけなくなってきている種類の足場でもあります。
この点について、その理由も含めて、次章で解説していきます。
クランプではなくジョイントを使った固定・連結も可能 |
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クランプの代わりに、単管パイプに差し込んでパイプ同士を連結する専用金具である「ジョイント」(下写真)を使って単管パイプを固定する方法もあります。![]() [出典]足場JAPAN 単管パイプの先端同士がきっちり同じ位置で連結されるため、段差のないまっすぐな長い直線を作ることが可能です。 たとえば勾配のきつい屋根の工事を行う際の屋根足場(作業員の墜落防止用の足がかり)として、ジョイントを使ってまっすぐに連結された単管パイプを設置することがあります。 ただし、強度の点で言えばクランプのほうが勝っているため、大きな荷重がかかることが前提の足場にはクランプが適切であり、使い分けが必要です。 |
2. 単管足場の利用ケースは減少してきている

前述の通り、単管足場はもっとも伝統的な形態の足場ですが、近年ではその使用が減少傾向にあります。
減少傾向の主な理由は次の2つです。
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それぞれの理由について、以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
2-1. より効率的な他の種類の足場が主流となってきているため
現在は、くさび式足場や枠組足場が主流となってきているため、単管足場の出番が徐々に少なくなっています。
既に述べた通り、単管足場は、材質こそ丸太から鉄パイプに変わったものの、クランプで部材を接合するという構造は本質的に丸太足場と変わっていません。そのため、効率面では、より新しく設計されたくさび式足場や枠組足場に劣る傾向があります。
そもそも、丸太足場の課題を解決する目的で、くさび式足場や枠組足場が開発されてきたという経緯を踏まえれば、単管足場の利用が減少するのは自然な流れだと言えるでしょう。
実際、単管足場はシンプルな構造ゆえに「決まった組み方」がなく、他の足場のように規格化されていません。そのため、組み立てには高い技術が求められます。
こうした特性から、狭小地など特殊な現場を除けば、以下の点において、くさび式足場や枠組足場の方が優れていると言えるでしょう。
- 施工性(組立・解体のしやすさ)
- 作業効率(足場上での作業のしやすさ)
高所作業での安全性向上、人手不足への対応、技術継承の平準化といった点からも、今後はより効率的な足場への需要がさらに高まっていくことは間違いありません。
なお、
くさび式足場については「くさび式足場とは?単管・枠組足場との違いを交えてわかりやすく解説」
枠組足場については「枠組足場とは|特徴から見るおすすめケースと事例から考える安全対策」
でそれぞれ詳しく解説しています。
気になる方は、ぜひチェックしてみてください。
2-2. 単管足場の組み方の中でも、特にコンパクトな形式が法令により原則禁止されているため
詳しくは「4. 単管足場の3つの種類」で後述しますが、3種類ある単管足場の組み方のうち、狭いスペースにも設置可能な
- ブラケット足場
- 抱き足場
の2種類は、設置できる現場が限られているため、単管足場の活躍は限定的となっています。
というのも、ブラケット足場は建物側にしか支柱が立たず抱き足場は単管パイプの上を作業員が歩くことになるため、いずれも転落リスクが高く、労働安全衛生規則561条の2により原則禁止されているのです。
単管足場でないと対応できないという特殊な現場も一定数存在しますが、あくまで例外的。
多くの現場では使えないことのほうが多く、主流になり得ないのは当然といえるでしょう。
さらに、残るもう1つの組み方(本足場)は、一定の安全性はあるものの、単管足場で組み上げるのは手間がかかり、前項で解説したようにくさび式足場や枠組足場に比べて非効率的です。
こうした事情も、単管足場が次第に使われなくなってきている理由のひとつです。
3. 単管足場が活躍する現場やシーンの例4つ

前項で述べたような背景がある中で、単管足場が今なお活躍している現場やシーンもあります。
代表的なものとして挙げられるのは、以下の4つです。
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より効率的な足場があってもなお、昔ながらの単管足場が選ばれる上記の現場・シーン例について、以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
3-1. 狭小地や密集地といったスペースに制約のある現場
狭小地や密集地といったスペースに制約のある現場では、単管足場が選ばれるケースが多くあります。
単管足場なら、足場板を使用しないスリムな形状での組み立ても可能だからです。
足場の設置スペースが極端に限られている場合、一般的なくさび式足場などではどうしても対応しきれないこともあります。
たとえば家屋が密集している地域で、隣家との間に数十cm程度の隙間しかないような場合、そこに足場板を入れることはできません。
そうした「建物の周囲に足場板を配置する幅すら確保できない現場」では、単管足場が唯一の解決策となるのです。
3-2. 規格化された足場では対応しきれない現場
建物の形状が複雑だったり、法面など地形に制約があったりといった現場では、単管足場が重宝されます。
というのも、くさび式足場や枠組足場といった規格化された足場では、複雑な形状や特殊な地形に柔軟に対応することが難しいためです。
その点、「単管パイプ+クランプ」というシンプルな構成で成り立つ単管足場は、現場ごとに必要な長さ・高さ・角度に合わせた細かな調整が可能です。
このように現場状況に応じた柔軟な対応が可能な単管足場は、規格化された足場では対応しきれない現場において、今なお有力な選択肢とされています。
3-3. 解体工事で養生足場を設置するシーン
解体工事では、粉じんの飛散や騒音を防ぐために「養生足場」が設置されることが多く、その際に単管足場がよく活用されます。
作業者が上に乗って作業する足場とは異なり、養生足場は養生シートを張れさえすれば十分です。
そのため、単管パイプを格子状に組んだだけの簡易な構造も可能な単管足場がふさわしいのです。
※下の動画で「単管パイプを格子状に組んだだけの簡易な構造」をイメージしていただけます。
また、解体現場では足場が破損・汚損するリスクもあるため、資材コストが比較的安い単管足場であれば、万が一損傷しても費用面の負担を抑えられるというメリットがあります。
養生用に単管足場が組まれることが多い解体工事現場の具体例としては、次のようなものがあります。
・低層住宅の解体工事現場(足場はなくても作業自体は可能だが、養生シートは張りたい)
・敷地外周に養生シートを張り巡らす必要がある解体工事現場
単管足場は、養生足場を組む際の実用的な選択肢として、根強い支持を得ているのです。
3-4. 足場に手すりの追加や補強が必要なシーン
単管足場は、手すりとして利用されたり、他の種類の足場の高所部分の支柱を2本仕立てにして補強する用途で利用されたりするケースも見られます。
その理由は、単管足場で使う「単管パイプ」と「クランプ」という組み合わせが、こうしたオプション的な使い方に最適だからです。
あくまで部分的な活用方法ではありますが、手すり設置や補強は足場の安全性を高めるために重要であり、そうした役割を柔軟に担えるのが単管足場なのです。
このように、単管足場は「足場一式」としてではなく、安全性を高める補助資材としても活用価値の高い存在といえます。
4. 単管足場の3つの種類

単管足場は「単管パイプをクランプで固定して組む足場」であるのは既に述べた通りですが、その組み方によって下記の3種類に分類されます。
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使う部材は同じでも、組み方によって構造自体が大きく変わるのが単管足場です。
くさび式足場や枠組足場にはない、単管足場ならではの可能性を把握するためにも、それぞれの形態について確認しておきましょう。
4-1. 単管本足場
単管足場の中でもっとも安全性の高いのが、「本足場」の形態です。
本足場とは、単管パイプとクランプを使い、支柱(建地)を建物側と外側の2列に設置し、その間に足場板を渡して作る形式です。作業床と手すりをしっかりと確保でき、安全性が高まります。

なお、本足場の形態は、単管足場に特有のものではありません。
実際、くさび式足場は本足場として組まれることが多く、枠組足場は本足場としてしか組めません。
その意味で、本足場は足場全般における基本形であり主流形態であるといえるでしょう。
(本足場については、「本足場とは|義務化で一側足場はもう使えない?対処必須の理由を解説」で詳しく解説していますので、ご参照ください)
ではなぜ、そのようにくさび式足場や枠組足場でも実現できる本足場という形態をあえて単管足場で組むのでしょうか。
その主な理由は、「3-2. 規格化された足場では対応できない現場」でご紹介したような特殊な施工条件です。
たとえば建物の外壁に配管が複雑に這っているようなケースでは、くさび式や枠組足場では配管をかわしながら組むことは困難で、細かな調整が可能な単管足場が活躍します。
このように、本足場は足場の基本形であり、単管足場であっても現場の状況に合わせて高い安全性を確保する手段となります。
4-2. 単管ブラケット足場
狭いスペースでも足場を設置したい場合に有効なのが、単管ブラケット足場です。
単管ブラケット足場とは、支柱を建物側に1本だけ立て、そこにブラケット(持ち送りとも)と呼ばれる金具(下写真)を取り付け、その上に足場板を敷いて設置する形式の足場です。

棚受けのような直角三角形の形をしたブラケットを使うことで、足場板がちょうど軒のように外に張り出す形状となります。

ブラケット足場も単管足場に特有の形態というわけではなく、くさび式足場でも組み立てが可能です。
(※下の写真は、くさび式足場をブラケット足場の形態で組んだものです)

支柱が片側にしかないことから「一側足場(ひとかわあしば/いっそくあしば)」とも呼ばれ、両側に支柱がある本足場より省スペースで設置できるのが最大のメリットです。
ただし、支柱が片側にしかない分だけ本足場より安全性が劣るため、労働安全衛生規則561条の2の定めにより、ブラケット足場を使用できるのは原則として幅が1メートル未満の箇所に限られています。
ブラケット足場については「一側足場とは?本足場との違いと使用可能なケースを法令に基づき解説」で詳しく解説していますので、ご参照ください。
4-3. 単管抱き足場
足場板を使わず、単管パイプを連結しただけの形態の単管足場が、単管抱き足場です。
丸太を金属製の単管パイプに代えた、昔ながらの丸太足場の進化版に一番近いイメージで、この組み方ができるのは単管足場だけですので、抱き足場といえばすなわち単管足場ということになります。
「3-3. 解体工事で養生足場を設置するシーン」で言及したような格子状に組まれた足場ですが、名称の由来ともなっているように、支柱を水平方向の2本の単管パイプで挟む(=抱く)ように固定します。

しかし、足を載せる部分には単管パイプ2本が並んでいて一定の幅はあるとはいえ、「丸みを帯びていて滑りやすい平均台」の上で作業するようなもので、転落リスクが高いことは否めません。
そのため、抱き足場は原則禁止されており、前項でご紹介したブラケット足場さえ設置できないような極端な狭小スペースでのみ設置可能な形態の足場です。
5. 単管足場の特徴を他の足場と比較しながらおさらい!

単管足場がどういったものなのか、今日でも利用されているのはどういった現場・シーンかがわかったところで、くさび式足場や枠組足場と比較した際の単管足場の特徴を改めて確認しておきましょう。
単管足場の特徴を、他の足場と比べたときの強み・弱みの視点でまとめたものが下表です。
単管足場 | 機能性・特性 | くさび式足場・枠組足場 |
---|---|---|
◯ | 形状の自由度 | × |
× | 組立・解体 | ◯ |
× | 強度 | ◯ |
× | 安全性 | ◯ |
× | 高層建築物への対応 | ◯ |
◯ | 運搬効率 | × |
◯ | 部材の調達先 | × |
△ | コスト | △ |
× | 作業効率 | ◯ |
単管足場の利用を検討するなら、単管足場が他の足場に比べて勝っている点と劣っている点をしっかりと把握しておく必要があります。
上の表の各項目について、以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
5-1. 形状の自由度……◯
仕上がり形状の自由度の高さは、単管足場ならではの大きな強みです。
単管足場は、クランプを使って単管パイプ同士を自在に組み合わせられる構造になっていることに加え、必要に応じパイプの長さをカットして調整できるという柔軟性があるからです。
こうした特性により、
- 凹凸の多い複雑な形状の建物
- 傾斜地に立地する現場
- 極端に幅の狭いスペース
といった、くさび式足場や枠組足場では対応が難しいケースにも柔軟に対応可能です。
シンプルで自由度の高い部材構成を活かせば、条件の多い現場にもフィットした足場を設計できる。
この強みこそが、今なお単管足場が特定の現場で重宝されている理由のひとつです。
5-2. 組立・解体……×
組立・解体のしやすさという点では、単管足場はくさび式足場・枠組足場に比べて劣ります。
くさび式足場は、ハンマー1本で部材を固定できる構造になっており、枠組足場はモジュール化された部材を手順通りに組み上げるだけで、作業のスピードと再現性に優れています。
それに対して単管足場は、パイプ一本一本をクランプを使い手作業で固定していく必要があり、どうしても時間と労力がかかる傾向があるためです。
また、構造がシンプルであるがゆえに、組み方や固定の仕方に作業者の技量が大きく影響するという側面もあります。
つまり、スキルに自信のある作業者が組むなら問題ないものの、誰が組んでも一定の品質を確保しやすい足場ではないということです。
5-3. 強度……×
構造的な強度の面でも、単管足場はくさび式足場や枠組足場に一歩譲ります。
単管足場は構造が単純であるだけに、高く組み上げると不安定になりやすく、風など外的要因の影響を受けやすい傾向があるためです。
さらに、クランプによる連結は徐々にゆるみが生じやすく、長期間設置していると耐久性も課題となり得ます。
正しく施工された単管足場が即座に危険というわけではありませんが、高所作業や長期間設置されたままとなるような現場では、強度と安定性により優れた足場の選択が望ましい場面が多くなります。
5-4. 安全性……×
単管足場は、安全性の面でくさび式足場や枠組足場に劣ります。
理由は、足場の構造的な安定性に加え、実際の作業時のリスクにも差があるからです。
くさび式や枠組足場は、くさびの打ち込みにより構造全体が一体化するため剛性が高く、作業者は常に安定した足場の上で作業できます。
これに対し単管足場では、クランプの締め付け具合次第でグラつきが生じやすいため、たとえ足場板を置いた本足場であってもやや不安定となりがちです。
さらに、足場板ではなくパイプの上に立って作業することになる抱き足場の場合は、転落リスクが特に高くなります。
安全性を重視するのであれば、標準仕様で安定した作業床を確保できるくさび式足場や枠組足場のほうが適しています。
単管足場の事故率は明らかに高い |
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足場作業中の事故は毎年発生しており、それは単管足場に限られた問題ではありません。しかし、単管足場の使用率は減少傾向であるにもかかわらず、単管足場に関係する事故が多く報告されているのが実情です。 [参考]『建設業における仮設機材に関する死亡災害事例集』(一般社団法人 仮設工業会) この傾向は、単管足場が構造的に他の足場(くさび式足場や枠組足場)よりも安全性が確保しにくいという実情を示しているといえるでしょう。 |
5-5. 高層建築物への対応……×
単管足場は、高層建築物への対応には向いていません。
その理由は、高く積み上げるほど不安定になりやすいのはどの足場にも共通することですが、中でも単管足場は構造的に不安定になりやすいからです。
「5-3. 強度……×」でも言及したように、単管パイプとクランプで構成されるシンプルな構造の単管足場は、高さを出すと風などの外的要因による影響を受けやすくなるのです。
安全性の観点から、単管足場の実用的な高さの上限はおおむね2階建て程度とされており、それ以上の高さになると、くさび式足場や枠組足場に比べて安定感が大きく劣ってしまいます。
したがって、3階建て以上の建築物に対応する場合には、より強度と安定性に優れたくさび式足場や枠組足場への切り替えが現実的な選択肢となります。
5-6. 運搬効率……◯
単管足場は、運搬効率の面で優れています。
構成部材が非常にシンプルで、主に単管パイプとクランプで成り立っているため、形状が統一されており、部材ごとのサイズや形がバラバラにならない分、荷台スペースを無駄なく使えるからです。
しかも、単管パイプはすべて直線ですから、たとえ本数が多くてもコンパクトにまとまります。
そのため、比較的小さなトラックでも一度に多くの部材を運ぶことが可能です。
また、狭い通路や出入口でも搬入しやすく、建物内での運搬にも対応しやすいというメリットもあります。
施工そのものだけでなく資材の搬出入まで含めた全体の作業効率を高めたい場合、運搬しやすい単管足場は選択肢となり得るでしょう。
5-7. 部材の調達先……◯
必要な部材を身近な場所で調達しやすいことも、単管足場の強みです。
というのも、単管足場に使われる単管パイプやクランプは非常に基本的な部材であり、もっとも利用されている部材のひとつでもあるからです。
そのため、追加の部材が急に必要になった場合でも、現場近くで入手できる可能性が高く、柔軟に対応できるのです。
たとえば、枠組足場の建枠などは、通常は専門業者から仕入れる必要があり、一般には流通していません。しかし、単管パイプやクランプであれば、ホームセンターなどでも手軽に入手できます。
現場で急きょ足場部材を追加する必要が生じた際に、納期を待ったり、輸送手配をする手間をかけたりする必要なく近くのホームセンターで調達できるのは、大きな利点です。
納期や輸送の都合に左右されず、必要なタイミングですぐに補充できる手軽さは、特に地方の現場や、部材の追加・交換が頻繁に発生する現場では、大きな強みとなるでしょう。
5-8. コスト……△
コスト面については、単管足場とくさび式足場・枠組足場のどちらが安いか、一概には判断できません。
というのも、部材がシンプルで1本単位で必要な分だけ調達できる単管足場は初期費用を抑えやすい一方、施工性や作業効率の面で劣るため長期的に見るとトータルコストが膨らむ可能性があるからです。
反対に、一式での導入が前提となるくさび式足場や枠組足場はまとまった初期投資が必要である一方、施工性や作業効率が高い(下記詳述)ことから工期の短縮につながり、トータルコストを抑えられる可能性があります。
したがって、導入コストだけでなく、使い続けた場合の運用コストも含めて判断することが重要といえるでしょう。
5-9. 作業効率……×
単管足場は、作業効率の面ではくさび式足場や枠組足場に劣ります。
その主な理由は、足元の安定性が低く、作業スペースが限られているためです。
たとえば、くさび式足場では幅広の足場板が設置できるため、安定した作業床の上で安心して作業ができ、工具や部材を置きながら効率よく作業を進めることができます。
一方、安定性が劣り、荷物を置く余裕もない単管足場では、常に道具を手に持ちながらの作業や、上げ下ろしの手間が発生しやすくなります。
足元の不安定さと作業スペースの狭さという作業効率を下げる要因を考慮すると、安全性と生産性を両立できるくさび式足場や枠組足場を検討するのがひとつの選択肢となるでしょう。
6. 単管足場からくさび式足場への切り替えがおすすめの3つのケース

ここまでお読みいただき、現行の単管足場からくさび式足場(あるいは枠組足場)への切り替えを真剣に考え始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしそうは言っても、新しい足場の導入にはそれなりの費用もかかりますので、パッと切り替えるというわけにはなかなかいきませんよね。何かしらのきっかけが必要です。
そこで本章では、現在は単管足場をお使いの方にとって、くさび式足場(あるいは枠組足場)への切り替えが現実的かつ有効な選択肢となるような下記の3つのタイミングをご紹介します。
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もし「これ、うちに当てはまる!」と感じたなら、今こそ切り替えの好機である可能性が高いですので、ぜひご参考になさってください。
6-1. いずれにしても買い替えが必要な時期を迎えているケース
部材の劣化や老朽化が進んでいるなら、切り替えの絶好のタイミングです。
劣化・老朽化した部材を使い続けるのは安全面でリスクがあり、新しい部材への入れ替えが必要です。
「どうせ買い替えるならくさび式にしてみる」というのは、悪くない考えでしょう。
単管足場に使われるパイプやクランプは、日々の使用によって徐々に傷みます。
たとえ見た目に損傷がなかったとしても、サビや摩耗で耐久性が落ちていることは珍しくありません。
5~10年と長年使ってきた単管足場がそろそろ限界を迎えているという場合、同じ部材を買い直すのではなく、これを機にくさび式足場へ切り替えることで、安全性や作業効率の向上につなげられるでしょう。
6-2. 安全基準が厳しい現場の受注を目指しているケース
公共工事や大手ゼネコンの現場を狙うなら、切り替えのタイミングといえます。
安全基準の厳格化が進む中、特に自治体や大手ゼネコンからの安全面での要求レベルは高く、「足場はくさび式を使ってほしい」といった指定が入ることもあるからです。
単管足場では現行の安全基準を満たすのが難しいと判断されれば、受注できません。
自治体や、安全意識の高い元請け企業との取引を目指す場合には、今後の事業展開を見据え、くさび式足場への切り替えをぜひ検討しましょう。
6-3. 人手や時間の制約があるケース
人手や時間の制約にお悩みなら、くさび式足場への切り替えのタイミングである可能性が高いです。
「人手が足りない」「工期をもっと短縮する必要がある」といった場合、作業効率アップにつながるくさび式足場への切り替えがおおいに有効だからです。
限られた人数で多くの現場をこなすには、作業負担の軽減が欠かせません。その点、くさび式足場ならハンマー1本で組み立てられ、作業経験の浅い作業者でも比較的スムーズに扱えます。
また、たとえば、10棟、20棟といった複数棟の戸建て住宅を建てる分譲地の開発現場などでは、足場を順々に移設するため、スピーディーな組立・解体が現場運営の鍵となります。
人手不足対策や工期短縮を目指すのであれば、少人数でも対応できる、スピーディーに対応できるという点で単管足場よりも有利なくさび式足場への切り替えを前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
7. くさび式足場に切り替えるなら状態の良い中古足場材を安く入手しよう

単管足場からくさび式足場への切り替えを検討する際、「初期コストが気になる」という方は多いのではないでしょうか。
そんな方におすすめしたいのが、状態の良い中古足場材をお手頃価格で手に入れるという方法です。
新品を一式揃えるとなると、まとまった金額の出費は避けられません。
しかし、状態の良い中古足場材を上手に活用すれば、初期コストを大きく抑えることが可能です。
たとえば、建坪30坪の2階建て住宅の工事用にくさび式足場を設置する場合、必要な足場材一式を購入しようとすると、新品および中古品ではそれぞれ下表の金額が目安となります。
くさび式足場一式の価格相場 (延べ床面積30坪の2階建て住宅の工事の場合) | |
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新品 | 中古品 |
80〜150万円 | 50〜120万円 |
信頼できる業者から良質な中古足場材を適正価格で入手できれば、導入コスト負担が大きく軽減されるはずですので、ぜひ中古足場材も視野に入れて探してみましょう。
8. まとめ
最後に、本記事のまとめです。
▼単管足場とは、単管パイプをクランプで固定して組み立てるシンプルな足場のこと
▼単管足場は、組み方により下記の3種類に分類される
- 単管本足場
- 単管ブラケット足場
- 単管抱き足場
▼近年ではその使用が減少傾向にある単管足場が今なお活躍している現場やシーンの代表例は、以下の4つ
- 狭小地や密集地といったスペースに制約のある現場
- 規格化された足場では対応しきれない現場
- 解体工事で養生足場を設置するシーン
- 足場にてすりの追加や補強が必要なシーン
▼単管足場の特徴を、他の足場と比べたときの強みと弱みは下表の通り
単管足場
|
機能性・特性
|
くさび式足場・枠組足場
|
---|---|---|
◯ | 形状の自由度 | × |
× | 組立・解体 | ◯ |
× | 強度 | ◯ |
× | 安全性 | ◯ |
× | 高層建築物への対応 | ◯ |
◯ | 運搬効率 | × |
◯ | 部材の調達先 | × |
△ | コスト | △ |
× | 作業効率 | ◯ |
▼単管足場からくさび式足場(あるいは枠組足場)への切り替えが現実的かつ有効な選択肢となるのは、下記の3つのケース
- いずれにしても買い替えが必要な時期を迎えているケース
- 安全基準が厳しい現場の受注を目指しているケース
- 人手や時間の制約があるケース
▼くさび式足場を導入する場合、中古の足場材を活用することで初期コストを抑えることが可能
くさび式足場一式の価格相場 (延べ床面積30坪の2階建て住宅の工事の場合) | |
---|---|
新品 | 中古品 |
80〜150万円 | 50〜120万円 |
単管足場を今後も使い続けるかどうかを判断するための材料として、本記事をご活用いただけましたら幸いです。
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