「垂直ネットってどんなもの?他のネットやシートとどう違うの?」
「垂直ネットが必要になるのはどういった現場?」
垂直ネットの存在をはじめて知った方にとっては、足場によく使われるメッシュシートとの違いや、垂直ネットそのものについて、よくわからないという方もいらっしゃるでしょう。
垂直ネットとは、名前の通り、足場の外側に垂直に張って設置する種類のネットです。高所からの工具・資材などの落下防止のために足場に張ります。
垂直ネットとメッシュシートでは、主な使用目的が異なっています。
シートの種類 | 目的 |
---|---|
垂直ネット | 工具・資材などの落下防止 |
メッシュシート | 塗料・粉塵などの飛散防止 |
垂直ネットは工具や資材などの落下を防ぐため、メッシュシートは塗料や粉塵などの飛散を防ぐために使います。
そのため、垂直ネットは主に次の2つのケースで使用されます。メッシュシートでは、以下の用途では使用できないため、注意が必要です。
垂直ネットの使用シーン |
---|
|
ただし、垂直ネットはあくまで「モノの落下防止」を目的とした資材であって、「作業員の墜落防止」を担うものではない点に注意が必要です。
そこで本記事では、垂直ネットについて基本から他のネットシートとの違いや、具体的な利用シーンなど解説していきます。
この記事を最後まで読めば、垂直ネットに関する疑問がなくなり、自分の現場で必要かどうか、どう活用するのか、お得な入手方法も判断できるようになります。
安全で信頼される現場づくりの第一歩として、資材についての正しい理解がきっと力になります。
ぜひ最後までお読みください。
1. 垂直ネットとは足場の外側に張る落下防止用ネット

垂直ネットとは、足場の外側に垂直に張ることにより、工具や、防音パネルなどの資材が周囲に落下するのを防ぐためのネットです。下記のような特徴を備えています。
素材:ポリエステル、ポリプロピレン 目合い(網目の大きさ):15mmが主流 色展開:グリーン、グレー、ブルーが主流 |
高所での作業がある現場では、ちょっとした不注意で落とした工具や資材が、作業員や通行人に深刻な被害を与えるおそれがあります。
実際の事故事例 |
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実際に、12階建てのビルで足場の解体作業中、屋上から誤って落下した鉄パイプが通行人を直撃し、命を奪うという痛ましい事故が発生したケースもあります。 |
こうした事故は決して他人事ではなく、「ほんの一瞬の油断」が重大な結果を招く可能性があるという現実を、あらためて突きつけられます。
たとえば、人通りの多い道路に面したビル解体現場。
足場に取り付け中の防音パネルがふとしたミスで外側に倒れそうになった――そんなとき、垂直ネットが張られていれば、防音パネルが道路上に落下することを防げます。
このように垂直ネットは、工具や資材の落下を防ぎ、特に都市部や人通りの多い場所など、周囲への安全配慮が欠かせない現場で、安全性を高める役割を果たします。
2. 垂直ネットが使われる現場は主に2種類

垂直ネットがどういったもので、何のために使われるのかについてご理解いただけたかと思います。
では、「じゃあ基本的に高所作業の現場で普通に使われてるの?」といった疑問がうまれているのではないでしょうか。
実は、「垂直ネットを使いなさい」という明確な規定は、記事執筆時点の2025年7月の段階では存在していません。そのため、義務遂行のためにどの資材を選ぶかは現場の判断に委ねられています。
そして、垂直ネットが使われる現場は、主に以下の2種類です。
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下記に挙げるような各種法令では、物品の落下や破片の飛散などによって作業員や通行人に危険が及ぶことを防ぐための「何らかの措置」を義務付けているに過ぎないのです。
- 労働安全衛生規則 第537条
- 労働安全衛生規則 第538条
- 労働安全衛生規則 第563条第6号
- 建築基準法施行令 第136条の5 第2号
- 建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事編)「第11 飛来落下による危険防止」
垂直ネットの使用要否が現場の判断に委ねられている中で、適切に判断できるようになるためにも、まずはよく使用される現場をしっかりと理解しておきましょう。
2-1. 防音パネルが設置される現場
垂直ネットが使われる現場としてもっとも代表的なのが、防音パネルが設置される現場です。
防音パネルは、設置や取り外しの際に落下しやすく、強風の影響により崩落するリスクもあります。
重量も大きさもあるだけに、路上などに落下すれば被害は甚大です。
こうしたリスクを軽減するために、防音パネルの外側を覆うように垂直ネットを張っておくことで、万一の落下にも備えるわけです。
とりわけ人通りが多く、建物も密集している都市部では、防音と安全確保の両立が求められます。
その意味でも、「防音パネル+垂直ネット」の組み合わせは、もはや常識といってもよいでしょう。
実際、安全対策に厳格なゼネコン案件では、このセットでの設置が仕様として標準化されていることが一般的です。
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足場で使う防音パネルのおすすめ5選!特徴別に迷わず選べる
2-2. 鉄骨建て方中の現場
垂直ネットがよく使われるもうひとつの代表的な現場が、鉄骨建て方工程(鉄骨で建物の骨組みを作る工程)にある現場です。
というのも、この工程では、次の2つの理由から工具や資材が構造物の外に落下するリスクが高く、落下防止措置として垂直ネットの設置が強く求められるからです。
- ボルトや工具など、落としやすい道具を扱う高所作業が多い
- 建築初期段階のため、落下物を受け止める壁や柱がまだない
鉄骨梁(柱の間に水平に渡す構造部材)を取り付ける前に、鉄骨柱の間に垂直ネットを張っておく「ネット先行設置工法」で骨組みの外周を垂直ネットで覆い、万一作業中に工具や資材を落としてしまったときにネットに引っかかるようにします。
このように、高所作業中の資材落下リスクを最小限に抑えるため、垂直ネットが重要な役割を果たしているのです。
3. 垂直ネットとその他のシートの違い

前章では、垂直ネットが主にどういった現場で使われるかについて解説しましたが、現場で使われるネットやシート類は垂直ネットだけではありません。
垂直ネットの他、仮設・工事現場でよく使われるネット(メッシュシート・水平ネット)の比較を整理したものが下表です。
比較項目 | 垂直ネット | メッシュシート | 水平ネット |
---|---|---|---|
主な目的 | 工具・資材など「モノ」の落下防止 | 塗料・粉塵などの飛散防止 | 「ヒト(=作業員)」の墜落防止 |
張り方・位置 | 足場外側に垂直に張る | 足場外側に垂直に張る | 鉄骨梁間や吹き抜け部分などに水平に張る |
目合い(網目の細かさ) | やや粗い | 細かい | 粗い |
通気性・風耐性 | ◯ 風をよく通すので、風耐性が高い |
△ ある程度風を通すが、強風だと煽られる |
◎ 水平方向に張るため、そもそも風の影響を受けにくく、万一の場合にも非常によく風を通す |
強度 | ◯ 工具や資材を受け止められる |
△ 落下物が突き破ってしまうことも |
◎ 墜落した作業員を受け止められる |
価格 | ¥¥ 水平ネットより廉価 |
¥ 垂直ネットより廉価 |
¥¥¥ 丈夫な分だけ高額 |
呼び名が似ていたり、設置される場所が同じだったりしても、用途・構造・強度・価格帯などに明確な違いがあります。
本章では、垂直ネットと似ている次の2種類について、違いを説明していきます。
|
ほかにも、防音シートや防炎シートとの違いについて知りたい方は、下記の別記事にて詳しく解説してます。ぜひご参照ください。
「足場に貼る防音シートは解体工事に必要不可欠!効果とおすすめ仕様」
「防炎シートとは?特徴・用途を知って工事現場で正しく使い分けよう」
3-1. メッシュシートの特徴と垂直ネットとの違い

比較項目 | 垂直ネット | メッシュシート |
---|---|---|
主な目的 | 工具・資材などの落下防止 | 塗料・粉塵などの飛散防止 |
張り方・位置 | 足場外側に垂直に張る | 足場外側に垂直に張る |
目合い(網目の細かさ) | やや粗い | 細かい |
通気性・風耐性 | ◯ 風をよく通すので、風耐性が高い | △ ある程度風を通すが、強風だと煽られる |
強度 | ◯ 工具や資材を受け止められる | △ 落下物が突き破ってしまうこともある |
価格 | ¥¥ メッシュシートよりも高め | ¥ 垂直ネットより廉価 |
メッシュシートは、目の細かい網地でできたシートです。
垂直ネットと同様に、足場の外側に垂直方向に張って使用されますが、「シート」と呼ばれるとおり、ネットというよりは「透け感のある幕」のような性質を持っている資材です。
以下、垂直ネットとの違いを比較してみましょう。
- 垂直ネットとは使用目的が異なり、「塗料や粉塵などの飛散防止」が主な用途
(そのため、外壁塗装の現場でよく使用される)。 - 網目が細かいため、垂直ネットよりも風を逃しにくく、風が強いとバタつきが発生しやすい
- 垂直ネットよりも強度が劣るため、ボルトや小型工具程度であれば落下防止効果は見込めるが、防音パネルのような大きく重量のある資材の飛び出しまでは防げない
垂直ネットが落下防止に特化している一方、メッシュシートは「飛散防止」が主目的で、落下防止はあくまで副次的な機能という点が、両者のもっとも大きな違いといえるでしょう。
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足場で使うメッシュシートの基本とおすすめ仕様・相場・入手先を解説
3-2. 水平ネットの特徴と垂直ネットとの違い

比較項目 | 垂直ネット | 水平ネット |
---|---|---|
主な目的 | 工具・資材など「モノ」の落下防止 | 「ヒト(=作業員)」の墜落防止 |
張り方・位置 | 足場外側に垂直方向に張る | 鉄骨梁間や吹き抜け部分などに水平方向に張る |
目合い(網目の細かさ) | やや粗い | 粗い |
通気性・風耐性 | ◯ 風をよく通すので、風耐性が高い | ◎ 風を非常によく通すので、風耐性がとても高い |
強度 | ◯ 工具や資材を受け止められる | ◎ 墜落した作業員を受け止められる |
価格 | ¥¥ 水平ネットより廉価 | ¥¥¥ 丈夫な分だけ高額 |
水平ネットは、鉄骨梁の間や吹き抜け部分などに「水平方向に」張るネットです。
耐久性に優れたラッセル編みという強靭な網目構造を持ち、その構造名から「ラッセルネット」と呼ばれるほか、「安全ネット」と呼ばれることもあります。
両者の最大の違いは、垂直ネットが「モノ」の落下を防ぐ資材であるのに対し、水平ネットは「ヒト」の墜落を防ぐための安全装置であること。
垂直ネットでは、墜落する作業者を受け止められるだけの強度がありません。
垂直ネットを張ったからといって、「作業員の墜落防止にもなる」という認識でいると大変危険です。
墜落防止措置としてネットを張るのであれば、水平ネットを張る必要があります。
4. 垂直ネットの価格相場

垂直ネットの機能や使用シーンを理解した上で、実際に導入するとなるとどの程度の予算が必要となるのかについても把握しておきましょう。
市場に流通している主な製品の価格情報をもとに算出したサイズ別のおおよその価格相場は、下表のとおりです。
【垂直ネットの価格相場】(※仮設工業会認定品の場合)
サイズ | 価格相場 |
---|---|
1m×10m | 1万円前後 |
4m×14m | 2.5〜4万円程度 |
6m×6m | 2万円前後 |
6m×12m | 3.5〜5万円程度 |
以上から、垂直ネットの1平米当たり価格相場は400〜700円程度と考えておけば、おおまかなコストの予測が可能でしょう。(ただし、細長く小ぶりな1m×10mサイズはより割高な傾向があります)
また、上記は購入する場合の価格相場ですが、レンタルする場合の料金は基本的に都度見積もり対応となっているため、明確な価格相場をお伝えするのは難しいのが実情です。
一般的にレンタル料金は新品購入費より安く設定されていますが、利用が長期化するとトータルコストがかさみ、いずれ「購入したほうが割安」になるのが、あらゆるレンタル品に共通する仕組みです。
しかし、実際の現場では、たとえそのラインを超えたとしても、あえてレンタルを継続するという判断をするケースが少なくありません。
この「レンタル継続の合理性」について、次章で詳しく解説していきます。
仮設工業会認定品を選ぶのが基本 |
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垂直ネットを選ぶとき、強度などをいちいち細かくチェックをする必要はありません。 仮設工業会認定品(=仮設工業会の認定基準をクリアしている製品)であれば、落下防止に必要な強度や構造は担保されているため、「認定品であるかどうか」だけ確認すれば十分です。 また、認定品は日本防炎協会の定める防炎性能も有しています。そのため、特に都市部や公共施設、商業ビルなど防炎対応が求められる現場では、認定品の使用を指定されるケースが多いです。 逆に言えば、認定品ではない製品は、必要なスペックを満たしていない可能性があるため、基本的には選ばないことをおすすめします。 |
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足場材ってどれくらい?種類別に新品・中古・レンタル価格を比較
5. 垂直ネットの調達方法はレンタルが主流

垂直ネットは、自社保有するよりもレンタルを利用するのがむしろ一般的です。
その主な理由は次の2つです。
- メンテナンスが大変
- 現場ごとに必要なサイズが異なる
購入かレンタルかで迷っているなら、この2つの理由の詳細をぜひ知っておきたいところです。
以下で解説していきますので、お読みになって、判断材料としてください。
5-1. 【理由1】メンテナンスの手間がかかる
垂直ネットはレンタルで調達するのが一般的である理由のひとつ目は、メンテナンスに手間がかかることです。
使用後は泥や塗料、粉塵などが付着して汚れるため、クリーニングがほぼ必須。
汚れがあっても使用自体に問題はありませんが、企業イメージの観点から「見た目の清潔感」にも気を配る元請けは多く、汚れたネットの使用を避けるよう求められるケースが少なくないからです。
加えて、破れの修繕、乾燥→畳み→保管場所の確保など、メンテナンス作業がひと通り必要になります。
これらを自社でまかなおうとすると、相応の手間が発生し、外注すればコスト負担がかさんでしまいます。
目安として、ネット1枚当たり200〜600円程度の料金がかかるため、毎月700〜800枚程度のクリーニングと簡単な補修までを外注する場合、年間で180万円前後のコストが発生することになります。
一方、レンタルなら、保管料・クリーニング料・修繕料はすべてレンタル料金に含まれているため、常にメンテナンス済みの垂直ネットを手間なく利用できます。
メンテナンスの手間や費用を大幅に削減し、現場運営を効率化できることを考えれば、レンタル料金が割高であるとは必ずしも言えないでしょう。
5-2. 【理由2】現場ごとに必要なサイズが異なる
建築物の規模や足場の高さは現場ごとに異なるため、自社調達では複数サイズを揃える必要があり、保管スペースを圧迫します。
それぞれのサイズを購入する分だけ、初期投資も大幅に増加します。
たとえば、1万平米(壁面)の現場の場合、6m×12mサイズの垂直ネットを使うとすると140枚程度、倍の2万平米の現場なら280枚程度用意しなくてはなりません。
このように垂直ネットは、ひとつの現場につき何百枚、何千枚と使うケースも珍しくなく、その都度購入・管理するのは負担が大きいです。
実際、多くの業者が、垂直ネットをはじめとしたネット・シート類をレンタルしています。
使用頻度が高まり、一定量を継続的に使うようになれば購入も一案ですが、現状保有しておらず、使用頻度もまだ低いなら、まずは必要なサイズのものを必要な枚数だけ借りられるレンタルからスタートするのがおすすめです。
6. まとめ
垂直ネットの特徴や用途、利用シーン、類似品の違い、価格相場などについてご紹介しました。
要点を以下に整理します。
▼垂直ネットとは、資材が周囲に落下するのを防ぐために、垂直方向に張るネットのこと
▼垂直ネットが使われる現場は、主に下記の2種類
- 防音パネルが設置される現場(防音パネルの落下を防ぐため)
- 鉄骨建て方中の現場(落下した工具などが外部へ飛び出すのを防ぐため)
▼垂直ネットとメッシュシートの目的の違い
シート | 目的 |
---|---|
垂直ネット | 工具・資材などの落下防止 |
メッシュシート | 塗料・粉塵などの飛散防止 |
▼垂直ネットと水平ネットの目的の違い
シート | 目的 |
---|---|
垂直ネット | 工具・資材など「モノ」の落下防止 |
水平ネット | 「ヒト(=作業員)」の墜落防止 |
▼垂直ネット(※仮設工業会認定品)の価格相場
サイズ | 価格相場 |
---|---|
1m×10m | 1万円前後 |
4m×14m | 2.5〜4万円程度 |
6m×6m | 2万円前後 |
6m×12m | 3.5〜5万円程度 |
▼垂直ネットは、購入よりもレンタルが一般的
本記事が、垂直ネットの理解と、貴社の現場に必要な資材を見極める上での判断材料となれば幸いです。
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