「解体工事を自社で手がけるに当たり、足場に張る防音シートについて知っておきたい」
「費用対効果の高い防音シートはどれ?」
新しく自社で解体工事を手がけるにあたり、さまざま準備を進める中でこのような疑問が出てきたのではないでしょうか。
解体工事の現場において防音シートは「最低限備えておくべきアイテム」であり、おすすめは厚さ1mmのもの(防音シートの中では比較的厚手のもの)です。
なぜなら、
- 解体作業で生じる騒音は一般的な建築工事よりもはるかに大きい
- シートの厚さで防音効果に明確な差が出る
という事情により、特に住宅密集地での作業では、防音対策が不十分だと近隣トラブルにつながるリスクが高いからです。
ただし、防音シートではなく、より防音効果の高い防音パネルの導入が望ましい現場もあります。
そこで本記事では、適切な防音対策により近隣トラブルや現場の手戻りを避けられるよう、以下の内容をわかりやすく解説します。
この記事を読むとわかること |
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どんな防音シートを選べばよいかが明確になり、近隣トラブルの予防に役立つ内容となっています。
ぜひ最後までご覧いただき、防音対策の第一歩を、自信を持って踏み出せるようにしていきましょう。
1. 足場に張る防音シートは解体現場において法的に必須

解体現場の足場に防音シートが張られているのをよく見かけるかと思います。
これは、単なるマナーや心がけではなく、近隣住民への配慮とともに、「義務」として行われている対応です。
というのも、解体工事における騒音や安全への対策は、法令や自治体の規制により明確に求められているからです。
この章では、防音シートに関連する法令や指針と、遵守しなかった場合の罰則について解説します。
解体工事を始めた後から「知らなかった」では済まされないため、今のうちからしっかりと理解しておきましょう。
1-1. 防音シートに関連する法令・指針
防音シートに関連する法令として代表的なものは騒音規制法です。
騒音規制法とは、建設工事などに伴って発生する騒音について必要な規制を行うことで、生活環境を保全し、国民の健康保全を目的とした法律です。
参考:環境省「騒音規制法の概要」
騒音規制法に伴い、より具体的でわかりやすい法令・指針として、以下のようなものがあります。
コンクリート構造物をとりこわす作業現場は、騒音対策、安全対策を考慮して必要に応じ防音シート、防音パネル等の設置を検討しなければならない。
特に騒音が大きくなってしまい、鉄骨やコンクリートの塊といった重量物の落下リスクも考慮しなくてはならないコンクリート構造物解体時の騒音対策と安全対策についての指針です。
特定建設作業の騒音が、特定建設作業の場所の敷地の境界線において、八十五デジベルを超える大きさのものでないこと。
解体工事でよく使われるブルドーザーやバックホウ(油圧ショベルの一種)を使う作業など、大きな騒音が発生する「特定建設作業」は、85dB以下に抑える必要があります。
都道府県知事等が規制地域を指定するとともに、環境大臣が騒音の大きさ、作業時間帯、日数、曜日等の基準を定めており、市町村長は規制対象となる特定建設作業に関し、必要に応じて改善勧告等を行う。
各自治体により定められた規制地域内での作業には、「早朝や深夜は不可」「日曜日は不可」「連続7日以上は不可」といった制限が設けられています。
上記の「騒音規制法の概要」に言及されている、都道府県知事等による規制地域の指定などの情報は、「◯◯県 騒音規制」などのキーワードで検索するとヒットする都道府県サイトで見られます。
【参考】
東京都環境局|建設工事に係る騒音・振動の規制 簡易表
大阪府|特定建設作業の規制について
愛知県|2.騒音・振動に関する規制
必ず現場の地域で定められている制限について、事前に確認しておくことが大切です。
1-2. 防音シートに関する法令・指針に違反した際の罰則
前項でご紹介したような法令に違反した場合、罰則もあります。
たとえば、作業音の大きさや作業時間帯などに設けられた制限に違反し、かつ改善命令に従わなかった場合には、5万円以下の罰金が科されます。
参考:騒音規制法第30条
法的拘束力を持たない指針などであっても、それを無視すれば企業の信頼性や評価に悪影響を及ぼし、今後の受注機会に支障をきたすことも考えられます。
防音シートの設置は、近隣への「気遣い」としての側面もありますが、それ以前に法令遵守の観点から欠かせない対応なのです。
次章では、その具体的な防音シートの効果について見ていきましょう。
2. 足場に張る防音シートの3つの効果

防音シートの効果は、大きく以下の3つがあります。
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これらの効果はすべて、「ラミネート加工が施されている目の詰まった生地」である防音シートだからこそ発揮できるものです。
それぞれの効果が現場でどのように役立つのかについて、以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
2-1. 【効果1】騒音の低減
防音シートには、騒音が周囲に広がるのを抑える効果があります。1-1. 防音シートに関連する法令・指針でも解説した通り、解体現場では騒音レベルを85dB以下に抑える必要があります。

解体作業で発生する音は、コンクリートを砕く音、重機の作動音、瓦礫が崩れる音など、近隣住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすレベルの騒音です。
足場に防音シートを張ることで、これらの騒音を10〜20dB程度カットできるとされており、近隣トラブルの予防に直結します。
たとえば、防音シートを張ることで騒音レベルが、
- 電車通過時のガード下(100dB前後)→ゲームセンター店内(85dB前後)
- パチンコ店内(90dB前後)→航空機内(80dB前後)や幹線道路沿い(70dB前後)
程度まで抑えられるイメージです。
騒音規制で上限値として定められている85dBは、「騒がしいものの会話は可能」とされる範囲に収まる騒音レベルです。
逆に言えば、それを超えると「会話が困難」と感じるレベルに達する可能性があるということ。罰則もさることながら、近隣住民から苦情が来るであろうことは想像に難くありません。
このように、法令遵守の面でも、工事期間中も普段通りの生活を送る近隣住民への最低限の配慮としての側面からも、解体現場での防音シートの設置は不可欠の措置なのです。
2-2. 【効果2】粉塵の飛散防止
防音シートには、音を遮るだけでなく、粉塵が外部に飛散するのを防ぐ効果もあります。
解体現場では、大量の細かな粉塵が発生しやすく、それが周囲に舞い上がると、洗濯物の汚れや住民の健康被害といったトラブルにつながるおそれがあります。
特に、近隣に喘息などの呼吸器系の疾患を抱える住民がいる場合、粉塵による被害を理由に慰謝料を請求されるといったケースも考えられるでしょう。
こうした微細な粉塵の飛散を抑える上で効果的なのが、防音シートです。
ラミネート加工されているため細かな粒子も通過させず、現場外への飛散をしっかりと防ぎます。
防音シートは、騒音対策としてだけではなく、粉塵によるトラブルを未然に防ぐためにも、解体現場に欠かせない資材といえるのです。
2-3. 【効果3】廃材の飛び出し防止
防音シートには、廃材が周囲に飛び散るのを防ぐ効果もあります。
解体現場では、木片や石材の破片など大小さまざまな廃材の飛散が避けられません。
こうした飛来物が通行人や隣家の窓ガラスに被害を与えるリスクだけでなく、落下した大きな廃材が足場で跳ね返って現場外に飛び出すようなことがあれば大事故となりかねないため、対策は必須です。
防音シートは、目の詰まった厚手の生地にラミネート加工が施された丈夫な構造になっており、こうした飛散物を現場の内側でしっかりと受け止め、外部への飛び出しを防ぎます。
ある程度の厚みと強度があることで、万が一に備えた「最後の壁」としての役割も果たしてくれるのです。
3. ビルやマンションの解体には、防音シートよりも高性能な「防音パネル」が必要

防音対策が法令遵守と近隣配慮の両面で不可欠であること、その実現手段として防音シートが有効であることは、すでにご理解いただけたかと思います。
ですが、防音シートだけが防音対策の選択肢ではありません。
事実、大型ビルなどの解体現場では、防音シートではなく「防音パネル」が使用されます。
大規模な構造物の解体作業では、コンクリートの破砕時などに特に大きな騒音が発生するため、防音シートよりも遮音性能の高い防音パネルでないと、騒音を基準値以下に抑えられないためです。
下表は、防音シートと防音パネルの主な違いを比較したものです。
防音シート VS 防音パネル | ||
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防音シート | 機能・特徴 | 防音パネル |
◯ パネルほどの遮音性能はない | 防音性 | ◎ シートの約2倍の遮音性能* |
◯ 丈夫だが、破れるリスクはある | 強度 | ◎ 構造的に強度が高い |
◯ 同じ面積ならパネルよりもずっと軽い | 重さ | × 重いため運搬は楽ではない |
△ 張り方にコツが必要 | 施工性 | ◯ 形状が整っていて設置しやすい |
△ 価格相場:5,000円〜20,000円/枚 | コスト | × 価格相場:20,000円〜40,000円/枚 |
(*一般社団法人仮設工業会の「技術基準Q&A」掲載の情報に基づく)
上の表からもおわかりいただける通り、防音パネルは、
- 防音性
- 安全性(強度)
- 施工性
のいずれにおいても防音シートを上回る高性能な資材です。
ただし、防音パネルは防音シートと比べコストがかかるため、実際に使われる現場は、以下のように予算がある現場か、「防音シートでは遮音性能が不十分」と判断される次のような現場に限られがちなのが実情です。
- マンションやビルなど、中規模以上の非木造住宅の解体現場
- 学校や病院など、騒音苦情が予想される場所の付近にある解体現場
- より厳しい騒音対策を求める元請けから防音パネル設置を指示されている現場
一般的な戸建て住宅の解体であれば、防音シートでも十分に騒音対策は可能ですが、特に、住宅密集地やクレームリスクの高いエリアなど、より丁寧な対応が求められる場面では、防音パネルの導入は、元請けや近隣住民からの信頼につながる選択肢となるでしょう。
4. 足場に張る防音シート選びで迷ったら、厚さ1mmのものが安心

前章でお伝えした通り、一般的な解体現場における「現実的かつ有効な選択肢」といえる防音シートですが、製品により厚さは0.4mm、0.5mm、0.7mm、1mm……とさまざまあります。
実際に防音シートを導入するとなったとき、どの厚さのものを選べばよいのか迷ってしまいますよね。
多くの現場を手がけてきた私たちエルラインの結論としては、厚さ1mmのものがおすすめです。
この厚さの製品は、防音性能・強度ともに十分で、一般的な解体現場で求められる性能を安定して満たすからです。
「どうせ一時的に使うだけだし、安くて軽い薄手のもので十分」と考えがちですが、特に住宅密集地など、近隣への影響が大きい現場では、防音性の高さがトラブル回避のカギとなります。
実際、元請け側から「厚さ1mm以上の製品を使用してください」といった指定が入るケースも少なくありません。そういった意味でも、最初から「1mm厚」を基準に製品を選んでおくと安心です。
ご参考までに、厚さ1mmの防音シートと厚さ0.7mmの防音シートを比較したものが下表です。
防音シート 厚さ1mm VS 厚さ0.7mm | ||
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厚さ1mmの防音シート | 機能・特徴 | 厚さ0.7mmの防音シート |
◯ 500Hz帯域の音を12dB 程度低減* |
防音性 | △ 500Hz帯域の音を8dB 程度低減** 薄い分だけ音が漏れやすい |
◯ | 強度 | △ 薄い分だけ破れやすい |
× 厚手な分だけ重い |
重さ | ◯ 防音シートとしては軽量 |
× 厚手な分だけ重く、足場に張る作業の負担大 |
施工性 | △ 厚さ1mmのものより軽い分、設置作業が楽 |
× 2万円前後/枚が目安 |
コスト | ◯ 1万円前後/枚が目安 |
*参考:鉄建技術報告 2019 No.33掲載「防音シート・防音パネルの遮音性能現場測定事例」
**参考:一般社団法人仮設工業会「認定基準」
設置作業の負担を軽くし、コストも抑えられるという点では、薄手で軽量の防音シートは確かに扱いやすい選択肢です。
元請けから指定がない場合は、そういったタイプを状況に応じて柔軟に使うのも一つの方法でしょう。
遮音性能の基本は「厚み」です。一般に、シートが厚くなるほど音を通しにくくなります。
騒音対策を最優先に考えるのであれば、できるだけ厚手のシートを選ぶのが理にかなっています。
おすすめは、前述の通り厚さ1mmのものですが、最終的には「施工のしやすさ」「コスト」「遮音性」のバランスを考えて選ぶことになるでしょう。
なお、サイズは足場のスパンに合わせた1.8m幅(インチサイズの場合は1,829mm幅)がおすすめです。長さについては現場に応じて選ぶことになりますが、主流は1.8m×3.4mです。
防音シートは同じメーカー・同じ型番で揃える必要あり |
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見落とされがちですが、現場で使用する防音シートは「同じメーカー・同じ型番のもので統一する」ことが原則です。 防音シートの効果を最大限に引き出すには、すき間なくピッタリと張る必要があります。 ところが、異なるメーカー・型番のシートを混在させてしまうと、耳(ハトメの並んだ端の補強部分)の部分が揃わず、継ぎ目に生じるズレや段差が音漏れの原因となってしまうのです。 「耳の向きが合わず、張り直しになった」「継ぎ目が浮いて音漏れし、近隣からクレームが入った」といったトラブルにつながらないよう、同一メーカー・同一型番で揃えるようにしましょう。 |
5. 購入?それともレンタル?足場に張る防音シートのおすすめ入手方法

前章では、おすすめのシート厚についてご紹介しました。
最後に、本章では「購入」と「レンタル」という2つの入手方法について解説していきます。
「購入」については、新品を購入するケースと中古品を購入するケースとを比較しており、
- 新品購入
- 中古品購入
- レンタル
の実質3つの入手方法について解説していますが、おすすめは安全性を確保する上で不可欠な強度面での劣化の心配がない「新品購入」です。
とはいえ、状況によっては中古品購入やレンタルが最適ということもあります。
自社の状況ではどの入手方法が最適かを考えながらお読み進めください。
5-1. 購入
防音シートを購入すると言っても、新品を購入するケースと中古品を購入するケースがあるため、それぞれのコストや購入場所などを下表にまとめました。
防音シート購入 新品 VS 中古品 | ||
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新品を購入する場合 | 比較項目 | 中古品を購入する場合 |
× 価格相場:5,000円〜20,000円/枚 |
価格目安 | ◯ 価格相場:3,000円前後/枚〜 |
・仮設資材販売業者 (実店舗またはオンラインストア) ・ホームセンター |
購入場所 | ・中古仮設資材販売業者 ・同業他社からの譲り受け ・ジモティー ・フリマアプリ ・Yahoo!オークション |
◯ 新品なのでダメージ等はなし |
品質 | △ ピンキリ。中古仮設資材販売業者から購入する整備品であれば、一定の品質は担保される |
ただし、中古品購入という選択肢も取り上げてはいますが、基本的には新品の購入をおすすめします。
というのも、解体現場で廃材の飛来を受けて破損するリスクがつきものなのが防音シート。
中古品の中には「突き破られかけている」といった状態のものも混在している可能性があるからです。
耐用年数は3〜7年程度と言われていますが、使用環境や管理状態により劣化スピードは変わります。
中古品は使用履歴が不明なため、実際にあとどれだけ使えるかの判断が難しいのが実情です。
また、今回の現場が次の案件獲得に影響する可能性も考慮すると、美観も軽視できません。
まっさらでなくても構いませんが、汚れや傷みが目立つシートは避けたいところです。
こうした点を総合的に見ると、安心して使える強度と見た目を確保したいなら、新品購入がもっとも確実な選択といえるでしょう。
どうしてもコストを抑えることを優先したいのであれば、取引相手と直接やり取りできる地元での購入を検討し、現物を確認した上での判断をおすすめします。
なお、防音性だけを求めていて、強度にはこだわらない用途であれば、少なくとも危険性はないため、中古品の活用は一つの有力な選択肢といえるでしょう。
5-2. レンタル
防音シートは、レンタルすることも可能です。
特に、以下に挙げるようなケースでは合理的といえます。
- 通常使っているものより高性能な防音シートが一時的に必要となった場合
- 元請けから、普段は使っていない1mm厚以上の防音シートの使用を指定された場合
- 使ったことがない製品の施工性や防音性を試してみたい場合
レンタル品である以上、新品というわけにはいかないことが大半ですが、検品・メンテナンスは行き届いていると考えられるため、品質面で過度に不安になる必要もないでしょう。
一定以上の品質が担保された防音シートを、現場ごとの使用期間や規模に応じて柔軟に利用できるのがレンタルの魅力です。
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6. まとめ
解体現場に欠かせない防音シートについてお伝えしてきました。
以下に要点をまとめます。
▼解体現場への防音シートの設置は、単なるマナーや心がけではなく、法的義務。
▼防音シートの効果は以下の3つ。
- 騒音の低減
- 粉塵の飛散防止
- 廃材の飛び出し防止
▼防音パネルは防音シートのいわば上位互換として、主にビルやマンションの解体現場で採用されている。
▼防音シートのおすすめの厚さは1mm。
▼防音シートを入手するなら、中古品購入でもレンタルでもなく、新品購入がおすすめ。
本記事が、貴社の防音シート購入ご検討の際の参考情報として、お役に立ちましたら光栄です。
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