「クランプのこともちゃんと理解しておかないと、足場を組めないよね」
「クランプって種類がいろいろあるけど、どう選べばいいんだろう」
足場用のクランプについて、もっとよく知っておきたいと思っていませんか?
クランプとは、単管パイプ同士や、単管パイプと鉄骨などを連結・固定する際に使われる金具のことで、足場の組み立てにおいては主にパイプ同士を緊結するために用います。
足場用クランプは、とりわけ単管足場を組む上での必須パーツであり、その役割や種類、使い方を理解していないと、作業効率が下がるだけでなく、安全性にも大きく影響します。
誤った使い方をすれば、転倒や崩壊といった重大事故にもつながりかねません。
だからこそ、「自社に必要なクランプは何か」「どう使えばスムーズかつ安全か」を今のうちに理解しておき、適材適所のクランプ選びが可能な状態で自社施工を始めることが重要です。
そこで本記事では、足場用クランプについて以下のようなポイントを丁寧に解説します。
この記事を読むとわかること |
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お読みいただければ、「足場用のクランプとは何か?」「どれを選べばよいか?」が明確になり、単管足場の組み立てに向けて、より具体的な計画を立てられるようになるはずです。
足場用クランプへの理解を深め、安全で効率的な自社施工の第一歩を踏み出すために、ぜひ本記事をご参考になさってください。
1. 足場用のクランプとは

クランプとは、単管パイプ同士や、単管パイプと鉄骨などを連結・固定する際に使われる金具で、単管足場をはじめとした各種仮設構造の組み立てにおいて広く活用されています。
パイプを入れる穴と、それを締め付けるためのナットがついていおり、ナットで締め付けて固定する仕組みです。

そもそもクランプの語源である英語の”clamp”は、「締め付ける」「固定する」といった意味を持ちます。 名詞として使われる場合は、万力(まんりき)のように対象物をしっかりと固定するための工具や金具を指します。 |
足場用として用いられるクランプは、特に単管パイプを使って組み上げる単管足場において、パイプ同士をしっかりと緊結するという非常に重要な役割を果たします。
その他クランプの使われ方(一例) |
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単管足場以外の足場構造(くさび式足場や枠組足場)においても、状況に応じて補助的にクランプが使用されることがあります。 また、足場用途ではありませんが、クランプの汎用性の高さを示す例として、パイプ構造を伴うさまざまな場面で、たとえば次のような活用例も一般的です。 ・簡易ステージの設営 ・仮設の看板設置 ・配管の固定 ・進入・通行規制のための単管バリケード…など ![]() |
ただし、こうした補助的な用途で使われるクランプは、足場用のものとは強度や形状が異なる場合が多く、誤って足場で使用しないように注意が必要です。
次章では、クランプの種類やそれぞれの特徴について詳しくご紹介していきます。
2. 足場に使われるクランプの主な種類5つ

本章では、足場用途で広く使われている下記5種類のクランプについて、その特徴と用途を解説します。
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適切な種類のクランプを選ぶために必要な知識ですので、以下で確認しておきましょう。
2-1. 直交クランプ(直交型クランプ)
直交クランプは、単管パイプ同士を直角(90度)に交差させて固定するためのクランプです。
強度と安定性が高いこともあり、足場のメイン構造を形成するのに適しています。
足場の組立てにおいて最も一般的に使用されるクランプといえます。
2-2. 自在クランプ(自在型クランプ)
自在クランプは、単管パイプ同士を好きな角度で固定できるクランプです。
接続部が可動式になっているため、自由な角度での接続が可能で、垂直に立っている単管パイプに対して別のパイプを斜めに接続する際などに使われます。
ただし、可動式であるがために直交クランプに比べ強度が劣るため(下表参照)、足場のメイン構造には直交クランプを使用し、自在クランプは補助的に用いることが一般的かつ推奨されています。
【クランプの引っ張り強度と許容荷重】
クランプ種類 | 引っ張り強度 (厚生労働省の定める規格) |
許容荷重 (業界標準) |
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直交型 | 1,500kg以上 | 500kg |
自在型 | 1,000kg以上 | 350kg |
参考:朝日機材株式会社「クランプの強度資料」
2-3. 3連クランプ
3連クランプは、3本の単管パイプを同時に固定するためのクランプです。
直交型と自在型の2タイプがあり、1本の建地(支柱)に対して2本の水平材を取り付ける際などに使用されます。
複数のパイプを一度に固定できるため、効率的な組立てが可能です。
2-4. 単クランプ
単クランプは、単管パイプに他の部材を取り付ける際に使用されます。
活用例としては、足場に作業灯を設置する際などが挙げられます。
また、足場用途ではありませんが、工事現場で侵入・通行を規制するために設置される単管バリケードも、単管パイプと単クランプの組み合わせとして一般的です。
2-5. 鉄骨クランプ(キャッチクランプ)
鉄骨クランプは、鉄骨構造物に単管パイプを固定するためのクランプです。
片側が万力状になっており、それを鉄骨のフランジ部分に噛ませることで、足場を鉄骨に接続できます。

直交型・平行型(平行方向に固定するタイプ)・自在型のバリエーションがあり、用途に応じて選択されます 。
3. 特定の用途に使う足場用クランプ一覧

足場の構造自体を支えるクランプのほかに、特定の目的を果たすためのクランプも数多く存在します。
以下に、特定用途に使われる足場用クランプのうち8種類について、その特徴を表にまとめました。
活用すれば、足場の安全性や作業効率を高められますので、ぜひ確認しておきましょう。
なお、前章でご紹介したような「直交型」「自在型」「平行型」や、コーナー用の「コーナー型」といったバリエーションがあるものについては、それも下表中でご紹介しています。
クランプ種類 | 特徴・用途 | 使用例 |
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垂木止めクランプ![]() |
単管パイプと垂木を接続。 直交・平行・自在の3種類がある |
簡易倉庫や仮設建物の構造づくり |
筋交い止めクランプ![]() |
単管パイプと手すりやブレス(筋交い)を接続 | 足場の補強 |
巾木止めクランプ![]() |
巾木を設置するためのクランプ。 ノズル(押さえ棒)で巾木を押さえる |
落下物防止措置としての巾木設置 |
板止めクランプ | 単管パイプに板材(コンパネなど)を固定するためのクランプ。 直交・平行・自在、コーナー型あり |
目隠し・雪よけ・仕切り等の設置 |
リング付きクランプ | 墜落制止用器具(親綱、安全帯アンカー、ライフブロックなど)を取り付けるためのリング付き金具 | 安全対策用途 |
養生クランプ![]() |
防音パネルなどを固定するための2本のツノ状の棒付き。(パネルフレームの穴に差し込む) 通称「鬼クランプ」 |
防音パネルや養生金網などの取り付け |
シートクランプ![]() |
養生クランプと同様のツノつき形状。落下防止ネットや防音シートなどのハトメ部分を引っ掛けてきれいに張る | 風によるシート類のバタつき防止策 |
ルーフクランプ![]() |
折板屋根に単管パイプを固定するためのクランプ。屋根のハゼ(屋根材を折り曲げて接合させた部分)を挟むように設置する | 屋根足場の設置 |
4. 足場用クランプの価格相場

ここまで足場用のクランプについて見てきましたが、実際に購入しようとなると、やはり気になるのは価格ですよね。
下表は、各種クランプの価格相場をまとめたものです。
クランプ種類 | 価格相場(1個当たり) |
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直交クランプ | 約200~800円 |
自在クランプ | 約200~800円 |
3連クランプ | 約700~1,500円 |
単クランプ | 約300~700円 |
鉄骨クランプ | 約1,000~2,500円 |
クランプの価格は、鉄骨クランプや3連クランプのように、より構造が複雑で高度な役割を果たすものほど価格が高くなる傾向があります。
なお、一般的な2階建戸建て住宅1棟の全周に足場を設置する場合、住宅の規模や形状にもよりますが、必要なクランプの数と費用の目安は、概ね下表の通りとなります。
一般的な2階建戸建て住宅1棟の全周に足場を設置するケース | |
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直交クランプの数の目安 | 200~300個程度 |
自在クランプの数の目安 | 20~30個程度 |
費用合計 | 44,000~264,000円 |
必要なクランプの数は、製品カタログの標準使用数例などを参考にして算出しますが、明確な数量の算出が難しいこともあるでしょう。
試算結果に関して不安がある場合は、足場・仮設資材の販売を手がける足場JAPANにお気軽にご相談ください。
本足場に必要な足場材をお得に手に入れられる「足場JAPAN」 |
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5. 足場用クランプの選び方

複数の種類が存在し、それぞれ適した用途や構造がある足場用のクランプ。安全かつ効率的な足場づくりのためには、現場の条件や目的に応じたクランプを適切に選ぶことが大切です。
そこで本章では、次の3つの視点からのクランプの選び方を解説します。
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クランプ選びは、作業効率だけであればまだしも、安全性にも関わってきますので、確実に理解しておく必要があります。
それぞれの視点について、以下で確認しておきましょう。
5-1. 用途で選ぶ
クランプを選ぶ際には、何を固定したいのか、どのような役割を持たせたいのかという用途・目的に応じた判断が必要です。
足場用のクランプは、用途によって形状や機能が異なり、必要な役割を果たせないクランプを使うと、構造が不安定になったり、安全性が損なわれたりするおそれがあるからです。
特に気をつけたいのは、直交クランプと自在クランプの選択です。
板を取り付けたいから板止めクランプ、シートを張りたいからシートクランプといった専用タイプの選択は比較的容易ですが、直交クランプと自在クランプは一見すると「どちらでも良さそう」です。
しかし、2-2. 自在クランプ(自在型クランプ)でもお伝えした通り、直交クランプと自在クランプでは構造的に強度が異なり(下表参照)、本来直交クランプでがっちり固定すべき部分に自在クランプを使うと、安定性が低下してしまいます。
【クランプの引っ張り強度と許容荷重】
クランプ種類 | 引っ張り強度 (厚生労働省の定める規格) | 許容荷重 (業界標準) |
---|---|---|
直交型 | 1,500kg以上 | 500kg |
自在型 | 1,000kg以上 | 350kg |
また、自在クランプは角度調整ができるため、結果として水平・垂直が取りにくくなり、足場全体のバランスにも影響が及びかねません。
自在クランプは便利な反面、「何でも自在クランプで済ませる」ことは危険なのです。
用途に合ったクランプを選ぶことは、安全性と施工性を両立する上で重要なポイントですので、使い分けを明確にしましょう。
5-2. 足場用か否かで選ぶ
クランプ選びでは、必ず「足場用」の製品を選ぶことも欠かせません。
見た目が似ていても、農業用や簡易構造物向けのクランプでは強度が足りず、足場に使うと重大な事故につながる可能性があるためです。
たとえば、ビニールハウスや簡易倉庫などで使われる安価なクランプは、一見似た形状でも構造強度がまったく異なり、足場用途には不適です。
見分け方としては、
- 足場用と明記されているか
- 仮設工業会の認定品か
を確認すると間違いがないでしょう。
事故防止のために、必ず足場用としての強度基準を満たした製品を使用するようにしましょう。
5-3. サイズで選ぶ
クランプ選びにおいては、対応するパイプのサイズの確認も必要です。
クランプには、取り付けられるパイプの外径(対応サイズ)に応じた種類があり、パイプ径に合わないクランプを使用すると、しっかり固定できず事故の原因になるためです。
主に使用されるサイズは以下の2種類です。
対応サイズ | 対象パイプ |
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φ48.6mm | 主に単管足場で使われる単管パイプ |
φ42.7mm | 枠組足場の建枠のパイプ |
基本的には、単管用クランプと枠組足場用クランプは規格の異なる別物であり、互換性はありません。そのため、間違えて使用すると固定不良につながり、事故の原因になりかねません。
ただし、両方の規格に対応でき、現場での使い分けの手間を省ける兼用クランプもあります。
(価格は、通常の単管パイプ用のクランプとほぼ同じです)

「単管パイプ用だと思っていたら枠組足場用だった」といった誤使用を防ぎたい、資材管理をシンプルにしたいという場合には、こうした製品を活用するのも一つの手です。
パイプのサイズに応じたクランプを選ぶことは、安全性に直結する重要なポイントですので、くれぐれも対応サイズ違いを見逃さないようにしましょう。
クランプの「金色」と「銀色」の違いとは? |
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ちなみに、足場用クランプには金色と銀色のものがあります。 この色の違いは主に表面処理によるものです。 金色のほうがやや耐食性に優れるとされていますが、強度などの基本性能に差はなく、どちらを選んでも問題ありません。 |
6. 足場クランプは「正しく施工する」を徹底しないと事故につながる

適切なクランプ選びの重要性を前章でお伝えしましたが、足場用のクランプは、どれを選ぶかだけでなく、「どう取り付けるか」も極めて重要です。
どれほど適切なクランプを選定していても、施工ミスがあれば重大な事故につながりかねないからです。
実際に、クランプの不備や固定ミスに起因する、以下に挙げるような事故も報告されています。
- 単管を固定するクランプがゆるみ、鉄筋が落下し、1.2m下で結束作業をしていた被災者を直撃。結果、被災者は右手・前腕挫創、右手末梢神経障害(約4週間の通院加療を要する見込み)を追いました。
[参考]■九州地方整備局の平成21年度事故発生状況と改善策●5月の事故概要と改善策
- 解体作業中、安全帯を掛け替えるために手をかけた縦の単管が、クランプを緩めてあったため傾き、作業者がバランスを崩して約3mから墜落。結果、被災者は10日後に死亡。
また、足場での事故ではありませんが、橋梁工事でチェーンブロックを使った資材の吊上げ作業中に、クランプが外れてチェーンブロックが落下し、資材が作業員を直撃したという事例も報告されています。

この事故は、取扱説明書で取り付けが禁止されている形状の部材に設置していたことのほか、力がかかる方向の判断ミスなど複数の施工不備が重なった結果でした。
足場クランプは、正しく施工して初めてその性能を発揮します。
事故を未然に防ぐ意識を持って取り付けることが、安全な現場づくりの第一歩です。
7. 足場用クランプの使用時に気をつけたいこと

足場用クランプは、適切に選んだものを正しく施工することで安全性を保てますが、本章では「正しい施工」のための、以下に挙げる具体的な注意点をご紹介します。
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いずれも間違えれば事故につながりかねないポイントですので、以下でしっかりと確認しておきましょう。
7-1. クランプの向きを間違えない
クランプは、力がかかる方向に「受け」が来るように取り付けるのが原則。
周辺部材との干渉を避けるために致し方ない場合を除き、必ず正しい方向に取り付けます。

誤って逆向きに取り付けてしまうと、力がかかり続けた末にクランプが緩み、最悪の場合、パイプが抜け落ちる可能性があるからです。
グッと荷重のかかるパイプを手で受けて支えることをイメージすると、わかりやすいでしょう。

特に、受けが上でボルトが下に来る「逆さクランプ」はリスクが高く、大きな事故の原因にもなり得るので要注意です。
7-2. 適度なトルクで締め付ける
クランプを締め付ける際には、メーカーが推奨するトルクを守ることも重要です。
(一般的には250kg/cm~350kg/cmの範囲が適正とされています)
締め付けが弱すぎると不十分な固定となり、強過ぎるとクランプやパイプの損傷につながるからです。
足場用クランプに多く使われるのは17×21サイズのラチェットレンチで、
- 17mm:単管パイプ同士の緊結に
- 21mm:鉄骨用クランプに
といったように使い分けます。
トルクを設定できるタイプのラチェットレンチなら、締め付けトルクを一定に保てるため、締め付け不足や締め付け過ぎのリスクが減り、安心です。
7-3. 劣化したものを使い続けない
クランプは繰り返し使ううちに、劣化が進みます。
- ナットがうまく締まらなくなった
- 締め付けるときに滑るようになった
- 爪(パイプなどを挟み込む部分)がすり減っている
- 変形している
- 錆・腐食がある
といった状態が見られるクランプは、使用を避けましょう。
劣化したクランプは、たとえ一見まだ使えそうであったとしても、締め付け機能が落ちてパイプをしっかり固定できず、事故につながる恐れがあるからです。
たとえば、摩耗して滑りが生じれば、いくらトルクをかけてもパイプが固定されません。
錆や腐食が見られれば、強度が低下していると考えられ、危険です。
劣化が疑われるクランプは迷わず交換し、常に万全な状態で作業に臨むことが、安全確保の基本です。
8. まとめ
最後に、本記事のまとめです。
▼足場に使うクランプとは、単管パイプ同士や、単管パイプと鉄骨などを連結・固定する際に使われる金具のこと
▼足場用途で広く使われているクランプは下記の5種類
- 直交クランプ(直交型クランプ)
- 自在クランプ(自在型クランプ)
- 3連クランプ
- 単クランプ
- 鉄骨クランプ(キャッチクランプ)
▼足場の構造自体を支えるクランプのほかに、特定の目的(防音パネルの設置等)を果たすためのクランプも各種ある
▼足場用のクランプは、下記3つの視点から選ぶ
- 用途
- 足場用か否か
- サイズ
▼安全性確保のために欠かせない「正しい施工」のために気をつけたい点は以下の3つ
- クランプの向きを間違えない
- 適度なトルクで締め付ける
- 劣化したものを使い続けない
本記事を、適切なクランプ選び、正しい取り付け方の実現のためにお役立ていただけましたら幸いです。
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