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くさび緊結式足場とは?3つの種類とメリット・デメリットを徹底解説

「くさび緊結式足場について知りたい。くさび式足場とは違うの?」
「くさび緊結式足場ってよく使う足場だよね。人に説明できるくらいの知識を持っておきたいんだけど…」

足場についての情報を集めている方なら、代表的な足場のひとつである「くさび緊結式足場」について、正確な知識をしっかりと身につけておきたいですよね。

くさび緊結式足場とは、鋼管の骨組みに手すりや床材をハンマーで打ちつけて組み立てる足場のことです。通称「くさび式足場」や「ビケ足場」と呼ばれることがあります。

くさび緊結式足場の最大の特徴は、組み立て作業が簡単で、クレーンなどの大型重機を使わずに数時間で組み立てから解体まで行えることです。

小回りがきくため、クレーンが入れない狭い場所や、複雑な形状の建築物にも対応できる点が魅力ですが、境界線の間隔が狭すぎると設置が難しいというデメリットもあります。

この記事では、「くさび緊結式足場」について、建築業者(現場監督や一人親方など)が知っておくべき基本情報を網羅的に解説します。

【この記事を読めばわかること】
  • くさび緊結式足場についての基礎知識
  • くさび緊結式足場のメリットデメリット
  • くさび緊結式足場に使われる部材
  • くさび緊結式足場の安全のために定められていること

最後まで目を通していただければ、こうした「くさび緊結式足場」に関する基本情報がしっかり頭に入り、「使ったことはあるけど意外と知らないことが多い…安全上、大丈夫なのかな?」といった不安が払拭されるでしょう。

大切な工事の安全を守るため、よく読んで足場への理解を深めていただけたらと思います。

目次

1. くさび緊結(きんけつ)式足場とは

くさび緊結(きんけつ)式足場とは

くさび緊結式足場とは、鋼管(くさびパルプ)を支柱とし、手すりや筋交いをハンマーでくさび(楔)に打ち込んで緊結する足場です。

「緊結(きんけつ)」とは…

建築用語。歪みやズレがないようにきつく締め付けたり、打ち付けたりすること

「くさび緊結式足場」が正式名称で、略して「くさび式足場」と呼ばれたり、元は商品名である「ビケ足場」と称されることもあります。

くさび緊結式足場には、以下のような特徴があります。

くさび緊結式足場の特徴4つ
  • ハンマーだけで組み立ても解体も行う

→ 特別な工具が不要で、作業効率が良い

  • 組み立てが簡単で、少人数・短時間の作業が可能

→ 工期が短い現場でも活用しやすい

  • 傾斜地や複雑な形状の建物にも対応できる柔軟性がある

→ 狭小地や入り組んだ建物にも対応できる

  • 枠組足場に比べてコストが低い

→ 材料費や人件費を抑えられる

※枠組足場:建枠を中心に、手すりや斜材、作業床などを組み合わせて作る足場。強度が高く、高層建築や大規模修繕工事で使用される。

このように、くさび緊結式足場は、簡便さ、作業効率、柔軟性、コスト面で優れた特徴を持つ足場です。

安定性がある上に、速やかな組み立てが可能なため、近年では短期間での作業が必要な中規模以上の現場での利用が進んでいます。

その一方で、作業者の安全を守るべき事業者側には、足場の高さ制限等をしっかり理解しておくことが求められます。

次章では、くさび緊結式足場の設置基準について詳しく解説します。
安全な作業環境を整えるために、基準をしっかり押さえておきましょう。

2. くさび緊結式足場の高さ制限|原則31m未満、ビル工事用なら45mまで

くさび緊結式足場の高さ制限|原則31m未満、ビル工事用なら45mまで

くさび緊結式足場における原則的な高さ制限は、31m未満とされています。

ただし、ビル工事用のくさび緊結式足場に関しては、補強措置を施すことで45mまで設置可能となっています。

2章では、くさび緊結式足場の安全面を考慮する上で重要な高さ制限について解説します。

くさび緊結式足場の高さ制限
  • くさび式緊結式足場の高さは原則31m未満
  • くさび緊結式足場の中で「ビル工事用」なら45mまで設置可能

順にみていきましょう。

2-1. くさび緊結式足場の高さは原則31m未満

高所作業に使用される足場では、最も重要なのは安全性です。

労働安全衛生法では、足場のタイプごとに安全面を考慮して高さ制限が定められています。

下表をご覧ください。

【タイプ別】足場の高さ制限
くさび緊結式足場31m未満
枠組足場45m以下
単管足場31m以下
二側足場(低層住宅工事用足場)10m以下

※単管足場:単管パイプとクランプを軸に、ボルトで固定して組み立てるタイプの足場
※二側足場(低層住宅工事用足場):縦方向の支柱を内側と外側に2本設置し、間に作業板を渡した足場

足場の高さとは、地盤面から“構造上重要な部分”までの高さのことです。

“構造上重要な部分”の定義は足場のタイプによって異なり、くさび緊結足場の場合は、最上層の手すり(布材等の主要部材)までの高さを指しています。

チェック!足場の高さについて
足場の高さは、地盤面から構造上重要な部分までの高さを指します。
この「構造上重要な部分」について、厚生労働省では、

 1.作業床が足場の最上層に設置されている場合は、基底部から最上層の作業床までの高さ
 2.作業床が足場の最上層に設置されていない場合には基底部から
  ・枠組足場では、最上層の建枠上端までの高さ
  ・単管足場等支柱式の足場では、最上層の水平材までの高さ
としています。

くさび緊結式足場の使用基準では、「緊結部付布材を手すり兼用として設置する場合は、この手すりは足場の構造部材であるため、墜落の危険がない場合であってもこれを取り外してはならない」と記載されています。

つまり、手すりは布材等の主要部材にあたり、手すりがくさび緊結式足場の最上端とみなされます。

出典:厚生労働省|滋賀労働局・労働基準監督署|足場に関する労働安全衛生法上 の規定について
一般社団法人 仮説工業会|くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(改訂版)
東京労働局教育機関 一般社団法人中小建設業特別教育協会|【第1章】第1節 足場の定義①

上表の通り、くさび緊結式足場は、低層工事に向くとされる単管足場と同等の「31m未満」という高さ制限が設定されています。

その理由は、くさび緊結式足場が構造的に風圧に弱いという特性を持っているためです。
この特性については、5.くさび緊結式足場のデメリット3つで詳しく述べます。

ここでは、くさび緊結式足場の高さとして、『地盤面から構造上重要な手すり部分までの高さ31m未満』までだということを覚えておきましょう。

参照:法令検索|労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)

2-2. くさび緊結式足場の中で「ビル工事用」なら45mまで設置可能

くさび緊結式足場の高さは原則31m未満ですが、補強措置を施すことで高さ制限は45mまで引き上げられます。

くさび緊結式足場には「住宅工事用」と「ビル工事用」という区分があり、ビル工事用では、補強条件を満たすことで高さ45m以下までの使用が認められているのです。

くさび緊結式足場の2つの「区分」
住宅工事用くさび緊結式足場のうち、軒の高さが10m未満の木造家屋などの低層住宅の建築、補修、解体工事に使用される足場
ビル工事用ビル工事などの建築、補修、解体工事に使用されるくさび緊結式足場で、高さ45m以下で使用される足場

※注意:住宅工事用とビル工事用という区分は、くさび緊結式足場自体の構造や品質の違いではありません。工事の目的によって、便宜上分類されているものです。

なお、ビル工事用として、高さが31mを超える場合に求められる補強措置は以下の通りです。

  • 建地となる緊結部付支柱の最高部から31mを超える部分までの支柱は、原則として2本組とする
  • 2本組の支柱は、緊結部付支柱と足場用鋼管を緊結金具で堅固に固定する
  • 固定する緊結金具は、足場用鋼管の上端部、下端部、および各層の腕木付近に取り付ける

補強措置を講じていても、高所作業での足場に関わる墜落や転倒事故の可能性がゼロになることはありません。

安全性を最優先に考慮し、高さの基準をしっかり遵守していくことが求められます。

チェック!10m以上の足場は届け出が必要
足場タイプに関わらず、高さが10メートル以上の足場で、設置から解体までが60日以上かかる場合は、工事開始の30日前までに所轄の労働基準監督署に「足場設置届」を提出しなければなりません。

提出時に必要な書類は以下の通りです。
  • 機械等設置届(様式第20号)
  • 案内図
  • 工程表
  • 平面図
  • 立面図
  • 詳細図
  • 足場部材等明細書
  • 構造計算書

届出書類は、厚生労働省のWebサイトからダウンロードすることができます。
提出する所轄の労働基準監督署については、下記のリンクを参考にしてください。

参照:全国労働基準監督署の所在案内|厚生労働省

出典:建設業労働災害防止規程|建設業労働災害防止協会
足場等に係る安全対策について|全国仮設安全事業協同組合
くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(改訂版)|一般社団法人 仮設工業会

3. くさび緊結式足場にはABCの3タイプがある

くさび緊結式足場にはABCの3タイプがある

くさび緊結式足場は、製造メーカーやパイプの長さ・くさびの形状などの特徴から、3つのタイプに分けられます。

くさび緊結式足場の3つのタイプ
  • Aタイプ(キャッチャータイプ):国内で使われるくさび緊結式足場の約50%に該当
  • Bタイプ(ビケタイプ):Aタイプと比べて横揺れが少なく、広く名称が知られている
  • Cタイプ(三共タイプ):軽量で施工が早いが、他より揺れが大きく、価格も高いため、流通量は少ない

同じくさび緊結式でも、異なるタイプの部材を使用すると、うまく組み立てられないことがあります。
仮に組み立てられたとしても、不安定になるため、最悪の場合事故の原因にならないとも限りません。

そのため、くさび緊結式足場を採用する際には、各タイプの特徴を知り、適切なものを選ぶことが重要です。

それぞれの特徴を解説しますので、しっかり理解しておきましょう。

3-1. Aタイプ(キャッチャータイプ)

Aタイプは、(株)信和の商品名称から「キャッチャータイプ」とも呼ばれます。

3タイプの中で最も流通量が多く、国内で使われるくさび緊結式足場の約50%に該当するといわれています。

そのため、製造メーカーや商品数も他のタイプより多く、ホームセンターでも取り扱いがあります。

特徴は以下の通りです。

  • 支柱についている「くさびポケット」間の長さが450mmで、1層(段)のスパン(高さ)が1800mm
  • 施工解体が他タイプより早い
  • コストが他タイプより低い
  • 流通量が多く部材を調達しやすい

特にデメリットがないのも特徴で、一般的な工事で、コストを少しでも抑えてくさび緊結式足場を組みたい場合には、Aタイプがおすすめです。

Aタイプ|主な製造メーカーと商品
メーカー名商品名
信和キャッチャーA
平和技研ビルダー
ホリーサスコム450A
ユハラ産業スーパーマイキット
KRHKRH SYSTEM

3-2. Bタイプ(ビケタイプ)

Bタイプは、最初に開発した(株)ダイサンの商品名称から「ビケタイプ」とも呼ばれます。
くさび緊結式足場全般のことを「ビケ足場」と呼ぶ場合もあるほど、知られている名称です。

Aタイプの次に利用されているタイプで、Aタイプと比べて横揺れが少ないのが大きな違いになります。

これは、生産当初、戸建て住宅の低層足場使用を重視して作られたため、踏板、ブラケットにAタイプにはない「くさびポケット」が付いているためです。

他の特徴は以下の通りです。

  • 「くさびポケット」間の長さが475mmで、1層(段)のスパン(高さ)が1900mmと、Aタイプより大きい(作業性が良い)
  • 施工解体はAタイプに比べると手間がかかる(くさびの打ち込み、抜きの作業が多い)
  • コストはAタイプより割高

揺れの少ない足場である一方、組み立てや解体に多少手間がかかる点、またAタイプに比べると費用が高くなる点に注意が必要です。

Bタイプ|主な製造メーカーと商品
メーカー名商品名
ダイサンビケ足場
信和キャッチャーB
平和技研サスコム475B

※ダイサンの「ビケ足場」に興味をお持ちの方は、下記の記事がおすすめです。
ビケ足場とは|勘違いしやすいポイントと特徴・相場・入手方法を解説

3-3. Cタイプ(三共タイプ)

Cタイプは、代表的な製造メーカー(株)三共の名称から「三共タイプ」とも呼ばれます。

他タイプとの大きな違いは、くさびが平べったい鉄板の形状になっている所です。

軽量で施工が早いのが利点ですが、他より揺れが大きく、価格も高いため、流通量は少なくなっています。

Cタイプの特徴は以下の通りです。

  • 手摺(てすり)、ブラケットのくさびが鉄板の形状
  • 軽量で扱いやすく、施工期間が短くできる
  • 他タイプより揺れが大きい
  • 他タイプよりコストが高い

Cタイプは、先述のように流通量が少なく、現状手に入れにくい足場になっています。

特有の鉄板形状にこだわりがある場合を除き、基本的には、Aタイプ、Bタイプの使用が一般的であることを把握しておきましょう。

Cタイプ|主な製造メーカーと商品
メーカー名商品名
三共セブン足場
信和キャッチャーC

4. くさび緊結式足場に使われる8つの部材

くさび緊結式足場に使われる8つの部材

くさび緊結式足場の基準や種類を理解していただけたでしょうか。

4章では、構成する部材について解説します。

くさび緊結式足場はシンプルな構造のため、使用される部材は比較的少なめです。
ただし、墜落等の事故を防ぐため、安全資材を整備することが推奨されています。

くさび緊結式足場に使われる8つの部材
  • くさび緊結式足場本体に使われる5つの部材
  • プラスαで推奨される安全資材3つ

しっかり確認して理解を深めていきましょう。

4-1. くさび緊結式足場本体に使われる5つの部材

くさび緊結式足場の主な構成部材は、下記の5つです。

くさび式緊結式足場本体に使われる5つの部材
1.ジャッキベース
足場を地面に固定するための土台となる部材。足場の水平を確保する役割を持ちます。


出典:足場JAPAN

<一般的なサイズ>
100mm~300mmの正方形や円形
<材質>
高強度鋼製で、錆びにくい亜鉛メッキ加工
2.支柱(くさびパイプ)
くさび緊結式足場組立の基本材料。くさびで緊結され支柱の役割を果たします。
多くの場合、強度と耐久性を確保するために鋼管が使われます。


出典:足場JAPAN|国産くさび式足場Aタイプ

<一般的なサイズ>
直径:通常48.6mm
長さ:1.8m、2.4m、3.0mなど
※現場の高さや組み立て方に応じて使い分けます。
3.踏板
作業員が実際に歩行したり作業を行う「床」を形成するための部材です。


出典:足場JAPAN|鋼製足場

<鋼製踏板の一般的なサイズ>
幅:300mm~450mm
長さ:1.5m~3m程度
※鋼製以外に、木製やアルミ製の踏板が使用される場合もあります。
4.ブラケット
足場の外側に突き出る構造を支えるために使用される部材です。
主に建物の壁面に足場を設置する際に有用となります。


出典:足場JAPAN

<一般的なサイズ>
全長:1m~2m程度
張り出し幅:30cm〜50cm
※現場や用途に応じて異なるサイズが使用される場合もあります。
<材質>
高強度鋼製で、錆びにくい亜鉛メッキ加工
5.筋交い材
足場の安定性を保つ斜め材です。
足場の横揺れを防ぎ、構造の強度を確保するために使用されます。

<一般的なサイズ>
長さ:2~4m
角度:45度
※特殊なケースもあります。
<材質>
鋼製、アルミ製
※亜鉛メッキ加工されている場合が多いです。

足場の部材についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事でわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
足場材の種類|今さら聞けない基礎知識と種類別の仕入れのコツを解説

4-2. +αで推奨される安全資材3つ

くさび緊結式足場の安全資材として、先行手摺(てすり)(セーフハンガー)、幅木(セーフアングル)、足場階段(鋼製・アルミ)が挙げられます。

これらは必須ではありませんが、政府がくさび緊結式足場において、手すり先行工法※を推奨しているほか、一般社団法人仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」でも、手摺や幅木の設置が推奨されています。

「手すり先行工法」とは…

足場の組立や解体時に手すりを先行して設置する工法。作業床に乗る前に手すりを設置することで、墜落や転落などの事故を防ぎやすい。

くさび緊結式足場での事故防止のために欠かせない、3つの安全資材について知っておきましょう。

くさび緊結式足場で推奨される安全資材3つ
1.先行手摺(セーフハンガー)

足場を組み立てる際に、作業床の端に設置する手摺(てすり)で、手すり先行工法で用いられます。


出典:足場JAPAN|くさび式足場 据置式先行手摺 セーフハンガーSXⅡ

足場の組み立てから解体時まで、常に手すりがある状態を保つことで墜落を防止する役割を果たします。
また、安全帯取付け設備としても使用が可能です。

2.幅木(セーフアングル)

足場の高さに応じて足場板の下に取り付けられる金具です。
擁壁のような役割で、支柱と踏板の間の隙間を埋めることで、人や物の落下ををガードします。


出典:足場JAPAN|L型巾木 セーフアングル

特にくさび緊結式足場では、足場板の設置時に隙間ができやすいため、幅木の使用が推奨されます。

3.足場階段(鋼製・アルミ製)

作業員が安全に、足場を昇降するために取り付ける資材です。
素材は鋼鉄とアルミの2種類があり、サイズはタイプ等によって様々です。


出典:足場JAPAN|クサビA仕様アルミ階段

※足場階段については、労働安全衛生規則(526条)で、高さが1.5mを超えるところで作業をする場合に設置が義務付けられています。

現場の安全を確保するためにも、安全資材についての理解を深め、積極的にこれらを設置することが大切です。

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署|手すり先行工法の足場を使用しましょう
一般社団法人仮設工業会|くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(改訂版)

5. くさび緊結式足場のメリット3つ

くさび緊結式足場のメリット3つ

くさび緊結式足場は、組み立てが簡単で柔軟性が高いため、さまざまな現場で広く使用されている足場です。

ここでは、くさび緊結式足場のメリットを詳しくみていきましょう。

くさび緊結式足場のメリット3つ
  • 組み立てが簡単で早く行える
  • コンパクトで柔軟性が高い
  • コストパフォーマンスが高い

順に解説します。

5-1. 組み立てが簡単で早く行える

くさび緊結式足場の最大の利点は、組み立ての簡便さとスピードです。

特別な工具を必要とせず、ハンマーを使うだけで少人数でも迅速に組み立てられます。

くさび緊結式足場は組み立てが簡単で早く行える
  • クレーン不要
    ハンマーだけで組み立てられる
  • 単純な構造
    部材が少なく作業がスムーズ
  • 時間短縮
    少人数で数時間あれば設置完了

外壁工事等では足場の組み立てに数日かかることがありますが、くさび緊結式足場なら半日以内に完了することがほとんどです。

さらに、解体もハンマーだけで行えるため、余計な時間や手間をかけずに工事を終えられます。

シンプル!くさび緊結式足場の組み立て手順
  1. 支柱(鋼管)に、一定の間隔をあけて「くさびポケット」を設置する

※くさびポケット:手すりや筋交いなどの部材を固定するための金具

2.手すりや筋交いなどの部材に付いているくさびを、くさびポケットにハンマーで打ち込む

一見、簡単すぎる作業に思えますが、この手順でしっかりと固定できるのがくさび緊結式足場の強みです。
安全かつ効率的に足場を設置でき、現場での作業がスムーズに進みます。

限られた人員や時間の中でも、効率的に作業を進められるのが、くさび緊結式足場の大きなメリットです。

5-2. コンパクトで柔軟性が高い

くさび緊結式足場は、コンパクトな構造と高い柔軟性を兼ね備えています。

比較的軽量で小回りがきくため、狭い場所や傾斜地でも設置が可能です。

くさび緊結式足場は柔軟性が高い
  • 軽量な部材
    現場での移動や配置が簡単(狭い通路でも搬入可能)
  • コンパクトな構造
    足場の奥行きや幅を調整できるため、道路沿いや狭小地にも対応
  • 省スペースでの運搬・保管が可能
    短い部材が多く、トラック積載や倉庫保管に有利

くさび緊結式足場は、部材が軽く、シンプルな構造のため、傾斜地や段差のある現場でも組みやすいという特徴があります。

そのため、都市部の狭小地や山間部など、設置スペースや作業時間に制約がある現場に適しており、多くの建設現場で採用されています。

5-3. コストパフォーマンスが高い

コストパフォーマンスの高さも、くさび緊結式足場のメリットのひとつです。

組み立ての簡便さが、資材費や人件費の削減につながり、現場の予算に対して最適な費用対効果を生み出します。

くさび緊結式足場はコストパフォーマンスが高い
  • 人件費の削減
    少人数で設置可能
  • 保管・運搬コストの削減
    部品が少なく、軽量で扱いやすい
  • 交換・メンテナンスコストの低減
    耐久性が高く、長期的なコストを抑えられる
  • 部品コストの削減
    部品が標準化されており、安価に調達可能

このように、全体的にコストを抑えられるのが、くさび緊結式足場の大きなメリットです。

特に、複数の現場での使用や、長期的な運用を考えた場合、コスト削減効果は非常に大きなものといえるでしょう。

6. くさび緊結式足場のデメリット3つ

くさび緊結式足場のデメリット3つ

組み立ての簡便さや汎用性の高さに定評のある、くさび緊結式足場ですが、知っておくべき注意点もあります。

ここでは、3つのデメリットを解説します。

くさび緊結式足場のデメリット3つ
  • 作業時に金属音が発生する
  • 境界線の間隔が狭いと設置できない場合がある
  • 風圧に弱いため高さ制限がある

しっかり把握しておきましょう。

6-1. 組み立て作業で金属音が発生する

デメリットのひとつめは、くさび緊結式足場の組み立て作業時に金属音が発生してしまうことです。

ハンマーで金属を打ち込む大きな音が響くので、住宅街などでは、騒音問題につながる可能性があります。

そのため、都市部の狭い敷地で作業する場合や、近隣住民の音に敏感な地域では、早朝や夜間の作業を避けるなどの配慮が求められます。

くさび緊結式足場の組立時間は通常5、6時間、長くとも8時間程度と騒音が響く時間が短いことも含めて、早めに工事についての周知をし、住民の理解を得ておくことが重要です。

6-2. 境界線の間隔が狭いと設置できない場合がある

2つめのデメリットは、隣家との境界線の間隔が狭いと設置できない場合があることです。

くさび緊結式足場の踏板は一定の幅があるため、それだけのスペースがないと設置できません。

小回りがきいて、狭い土地でも設置できる足場ではありますが、足場の踏板を設置するための一定のスペースは必要になります。

たとえば、クレーンなしで狭い道を運搬することができても、外壁工事を行う壁と隣の建物の間が狭いと足場を組むことは困難です。

狭小地や複雑な地形にくさび緊結式足場を設置する場合は、事前に、現場のスペースを十分に確認するようにしましょう。

6-3. 風圧に弱いため高さ制限がある

くさび緊結式足場には、安全面から、設置できる高さに制限が設けられています。

比較的軽量の足場であるため、風の影響を受けやすいのです。

チェック!【くさび緊結式足場が風の影響を受けやすい理由】
  • 軽量構造:枠組み足場と比べると軽量の足場であり、風の力に対して弱い。
  • 接続部分が少ない:接続部が少ないため、風圧を分散できず、安定性が低い。
  • 組み立てやすさ:組み立てが簡単で可動性が高い分、風の影響を受けやすい。

2.くさび緊結式足場の高さ制限|原則31m未満だがビル工事用なら45mまで、でもお伝えしたように、強風による倒壊や不安定さによる事故を避けるためには、高さの基準を守らなければなりません。

先述のように、くさび緊結式足場には、ビル工事用と住宅工事用の分類があり、それぞれ設置基準が異なります。

【区分別】くさび緊結式足場の高さ基準
住宅工事用軒の高さが10m未満
ビル工事用原則として高さ31m以下
ただし、補強措置を施すことで45mまで設置可能

ご覧のように、補強を施すことで45m以下であれば設置できるくさび式足場ですが、基本的には風圧に対して弱みがあるということを把握しておいた方が良いでしょう。

建物の高さ、および風の影響を事前に確認し、状況に応じて、他の足場タイプを選ぶなどの対策を講じることが大切です。

参照:滋賀労働局・労働基準監督署|足場に関する労働安全衛生法上の規定について

7. くさび緊結式足場が適している現場

くさび緊結式足場が適している現場

「くさび式緊結足場」は、柔軟性と強度を兼ね備え、施工性とコストのバランスが良い足場です。

具体的には以下のような現場での使用をおすすめします。

くさび緊結式足場の使用がおすすめの現場4つ
  • 短期間の工期で足場の迅速な設置が求められる場合

くさび緊結式足場の最大の利点は、組み立ての簡便さとスピードです。
部材が軽量で、接続部をハンマーで打ち込むだけで固定できるため、短期間の工事や急な作業に適しています。

例:リフォーム工事、塗装工事、補修工事

  • 複雑な形状や高低差のある現場で足場を組む場合

くさび緊結式足場は、コンパクトな構造と柔軟性を兼ね備えているため、複雑な建物形状や高低差がある場所に対応できます。
枠組足場では設置が難しい狭い場所や、単管足場では強度が不足する場合にも、安定した足場を確保できます。

例:狭小地での作業、屋根やベランダ周りの工事

  • 大規模工事ではないが安定性を重視したい場合

枠組足場ほどの大掛かりな設備は不要でも、安定性のある足場が必要な中小規模の工事では、くさび緊結式足場が最適です。
作業者の安全を確保しながら、効率的に作業を進められます。

例:住宅の外壁工事、設備メンテナンス工事

  • 一定の強度が必要だがコストを抑えたい場合

くさび緊結式足場は、組み立てがシンプルで、作業時間を短縮できるため、コストを抑えつつ、十分な強度を確保できます。

例:中小規模の建築工事、改修工事

くさび緊結式足場は、柔軟性、強度、コストのバランスが取れた足場であり、特に中小規模の工事を請け負う際に使いやすい選択肢といえます。

8.【FAQ】くさび緊結式足場のよくある質問

【FAQ】くさび緊結式足場のよくある質問

ここでは、くさび緊結式足場に関するよくある質問にお答えしていきます。

くさび緊結式足場に関するよくある質問
Q1|くさび緊結式足場はビケ足場と何が違うのですか?
Q2|くさび緊結式足場の積載荷重はどれくらいですか?
Q3|くさび緊結式足場の相場はいくらですか?

興味のあるところからご覧ください。

8-1. Q1|くさび緊結式足場はビケ足場と何が違うのですか?

くさび緊結式足場とビケ足場の違いは、足場タイプと商品名の違いです。

ビケ足場は、(株)ダイサンが開発した「くさび緊結式足場の一種」で、Bタイプにあたります。

商品としての「ビケ足場」が広く普及したため、ビケ足場が単独の足場タイプと思われたり、ビケ足場=くさび緊結式足場のようなニュアンスで使われたりしますが、どちらも違います。

厳密には、

  • くさび緊結式足場とは、くさびパルプを支柱とし、手すりや筋交いをハンマーでくさびに打ち込んで緊結する足場のタイプ
  • ビケ足場はくさび緊結式足場の中のBタイプで、(株)ダイサンの商品名

と理解しておきましょう。

こちらの記事もおすすめ!
ビケ足場とは|勘違いしやすいポイントと特徴・相場・入手方法を解説

8-2. Q2|くさび緊結式足場の積載荷重はどれくらいですか?

くさび緊結式足場の最大積載荷重は、労働安全衛生規則により、作業床の許容積載荷重に基づき、下記のように目安が定められています。

くさび緊結式足場の最大積載荷重の目安
  • 400mm幅の作業床の許容積載荷重は200kg
  • 240mm幅の作業床の許容積載荷重は150kg
  • 軒の高さ10m未満の低層住宅建築工事に用いる場合は、1スパンあたり200kg以下、かつ足場一構面につき400kg以下
  • 前後踏み間隔が900mm以上の場合、1スパンあたりの最大積載荷重は400kg以下
  • 同一スパン上2層までの荷重とし、連続スパンにわたって積載しないこと

注意点は以下の通りです。

  • 作業床には、床付き布わく及び緊結部付床付き布枠の許容積載荷重を超えて積載しない
  • 足場の一部を6mを超えて高くした一側足場の場合、6mを超える部分の全積載荷重は200㎏以下とする
  • くさび緊結式足場用梁枠で構成された開口部上方の足場の全積載荷重は200kg 以下とする
  • 足場には見やすいところに最大積載荷重を表示すること

積載荷重を超えると足場の強度が損なわれ、重大な事故につながる恐れがあります。

くさび緊結式足場を組む際は、必ず規定を確認し、積載荷重のルールを徹底しましょう。

出典:労働安全衛生規則第562条

8-3. Q3|くさび緊結式足場の相場はいくらですか?

くさび緊結式足場の単価は、1㎡あたり平均800円から1,000円前後です。

一般的な住宅工事の現場用に新品一式を購入するとなると、目安として約100万円ほどにもなります。

※「一式」とは、特定の数量ではなく、用途に合わせて揃えられた部材セットを指します。

ただ、足場の価格は現場の規模や設置条件によって、また地域、店舗、さらには社会情勢によっても変動するため一概にはいえません。

正確な価格が知りたい場合は、図面や現場の詳細がわかる資料を用意してメーカーや専門業者、販売代理店に相談することをおすすめします。

コストを抑えるためには、複数の業者から見積もりを取り、価格や条件を比較するのも有効な手段です。

足場や足場材の価格をもっと詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
足場材ってどれくらい?種類別に新品・中古・レンタル価格を比較

【足場材を購入するなら足場JAPANがおすすめ】
「足場材を安く購入したい」と考えている方におすすめなのが「足場JAPAN」です。

足場JAPANは、くさび式足場・次世代足場・単管パイプ・安全鋼板・シートやネット類など、建設工事に必要な資材を新品・中古の両方で取り揃えています。

さらに、足場JAPAN運営元である私たちエルラインは、自社でも建設工事を行うため、メーカーから大量に資材を仕入れることで、大幅なボリュームディスカウントを実現しています。

セットで大量に購入する場合は、さらに値引きも可能ですので、ぜひご検討ください。

また、「必要な足場材の種類や数量がはっきりとはわからない」という方に向けては、相談サービスも提供しています。

足場を架ける建物の図面を送っていただくだけで、経験豊富な担当者が足場材の数量を算出し、無料で見積もりを出させていただきます。 足場材を定期的に購入する必要がある方は、足場JAPANの利用をご検討ください。

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9. まとめ

くさび緊結式足場とは、鋼管(くさびパルプ)を支柱とし、手すりや筋交いをハンマーでくさび(楔)に打ち込んで緊結する足場です。

メリットとデメリットは以下の通りです。

メリット
デメリット
  • 組み立てが簡単で早く行える
  • コンパクトで柔軟性が高い
  • コストパフォーマンスが高い
  • 作業時に金属音が発生する
  • 境界線の間隔が狭いと設置できない場合がある
  • 風圧に弱いため高さ制限がある

適している現場は次になります。

  • 短期間の工期で足場の迅速な設置が求められる場合
  • 複雑な形状や高低差のある現場で足場を組む場合
  • 大規模工事ではないが安定性を重視したい場合
  • 一定の強度が必要だがコストを抑えたい場合

この記事を、あなたの現場作業や足場選びにぜひお役立ていただけたらと思います。

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この記事を書いた人

株式会社エルライン 社長室 1級電気工事施工管理技士

新卒で大手総合設備会社に施工管理として就職し、大型現場の再開発工事を経験。その後、建設人材派遣会社へと移り、複数現場で施工管理としての経験を積む。1級電気工事施工管理技士に合格したのを機に、同社の本社へと出向し、教育に携わる。2024年4月にエルライングループにジョインし、教育や採用活動、広報・マーケティング業務などに従事。

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