「安全書類について知りたい!基本的な成り立ちがわからないので、把握しておきたい」
「安全書類って形式的なもの?こんなに手間をかける意味があるのかな…」
建設業に携わる方なら、一度は安全書類に触れたことがあると思いますが、多くの方が、
「なぜ必要なのか?」「何のために作成するのか?」までは、理解できていないのではないでしょうか。
安全書類は、現場の安全を確保し、作業員(働く人)の命を法的に守るために必要不可欠な書類です。
安全書類があるからこそ、労働災害防止に関する管理が徹底され、安全対策がきちんと実施されるのです。

かつては、法律で「安全対策を実施する義務」や「労働災害防止対策に取り組む義務」が示されていても、その実施状況を証明する仕組みがありませんでした。
そんな中、現場と働く人の安全が確かに守られていることを示すツールとして、安全書類が採用されるようになったのです。
この記事では、安全書類の成り立ちや作成の意義をわかりやすく解説します。
【この記事を読めばわかること】 |
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安全書類は、現場や作業員の安全を守るために欠かせないものですが、作成に手間がかかるのも事実です。
そこで記事後半では、安全書類を効率的に作成する4つのコツをご紹介します。
ひとつずつ実践することで、作業の効率が確実に上がりますので試してみてください。
安全書類への取り組みが少しでも前向きになるきっかけとして、ぜひ最後まで目を通していただければと思います。
1. 安全書類とは|現場で働く人と会社を法的に守るために必要な書類

安全書類は、建設業界において労働安全衛生管理を適切に行うために必要不可欠な書類で、「グリーンファイル」とも呼ばれます。
30種類近くもある安全書類には、建設現場のさまざまな情報が記載されており、下請け会社と元請け会社間で情報を共有することができます。
情報共有によって、現場の安全確保や責任の所在を明確にすることが可能となります。
※すべての書類が常に必要というわけではありません
まず1章では、現場や作業員の安全を守るために欠かせない「安全書類」の基本的な概要を以下の順に解説します。
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しっかり把握しておきましょう。
1-1. 安全書類の基本情報一覧
安全書類の基本情報を一覧表にまとめました。
すでにご存知の情報もあれば、初めて目にするものもあるかもしれません。
確認してみてください。
安全書類の基本情報 | |
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【項目】 | 【詳細】 |
作成する人 | 現場に入る下請会社・全体を管理する元請会社がそれぞれ必要な安全書類を作成する。 社内での作成者に決まりはなく、営業、事務員、現場監督など企業によって異なります。 |
書類の種類(数) | 現時点で20~30種類ぐらいあるが、必要な種類は、案件や契約形態によって異なる。 ※種類については、2.【種類別】安全書類の一覧表で詳しく解説しますので、そちらも参考にしてください。 |
フォーマット | フォーマットに決まりはなく、「元請から指定されるケース」と、「下請側が自由に作成するケース(こちらが多い)」がある。 ※中小の建設事業者に広く採用されているフォーマットとして、一般社団法人「全国建設業協会」の全建統一様式のテンプレートがあります。法律に則り、統一された規格ですので、書式に迷った際は、これを利用すると良いでしょう。 |
提出先 | 状況によって異なる。 例) ※下層の下請になるほど安全書類の必要性への意識が薄れやすい傾向があり、元請と直接やり取りを行う1次請けが全ての書類を作成するケースも多いです。 |
提出のタイミング | 各企業の方針や現場の状況、書類の種類によって異なる。
※提出後であっても、工事日や作業者が変更された場合、その都度更新が必要になります。 |
保管期間 | 一般的に5年間の保管が求められる。 ※但し、「施工体系図」は10年間保管をする必要がある他、工事の性質、発注者の要求によっても保管期間が異なる場合があるので、契約書等で確認しておきましょう。 |
このように、安全書類は種類や内容が多岐にわたり、フォーマットも統一されていないため、対応が非常に複雑です。
さらに、表には記載していませんが、元請けからの依頼方法も担当者ごとに異なり、FAX、電話、メール、専用システムなど様々な手段が使われます。
同じ会社内でも担当者によって依頼の仕方が違って、ときには工事直前に依頼が来ることもあります。
対応には柔軟性と迅速さが求められ、作成者の負担が大きいことは否めません。
それでも安全書類は、現場の安全を守るために重要な役割を果たしているため、避けては通れないものです。
次項では、なぜこれほど大変な安全書類が必要なのか、その理由を詳しく解説します。
よく読んで理解を深めておきましょう。
チェック!「施工体制台帳=安全書類」はコミュニケーションの誤解を生む可能性あり |
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施工体制台帳を「安全書類そのもの」と認識していないでしょうか? 施工体制台帳は、数ある安全書類のひとつで、工事の体制や責任者を明確にするために使用されるものです。 ところが、現場監督や作業員の中には、「安全書類=施工体制台帳」と思い込んでいる人が少なくありません。 それに気づかず会話を進めてしまうと、手続き等で誤解を生じることがあるので注意が必要です。 具体的には、会話が噛み合わない場合、相手が、施工体制台帳は安全書類のひとつであることを認識しているかどうかを確認するとよいでしょう。 |
1-2. 安全書類を作成しなければいけない理由
安全書類を作成しなければいけない理由は、現場の安全を確保し、作業員の命を守るためです。
安全書類は、現場での安全対策を計画し、実行するための具体的な仕組みであり、働く人々や会社を守るための重要な役割を担っています。
安全書類が生まれた背景には、「建設業法」や「労働安全衛生法」で定められた項目を遵守する必要性がある一方で、それを具体的に運用・管理するための明確な方法やツールが存在していなかったことが挙げられます。
「建設業法」や「労働安全衛生法」で定められた項目とは、それぞれの責任者に課される以下のような義務を指します。
- 建設業者に対して労働災害防止に関する管理を行い、安全対策を実施する義務
- 元請負人(発注者)と下請負人(受注者)の双方に労働災害防止対策に取り組む義務
- 建設業者は従業員に対して適切な安全教育を行う義務
- 事業場を一つの適用単位として、各事業場の業種や規模に応じて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医を選任する義務
出典:建設業法|e-GOV法令検索、労働安全衛生法|e-GOV法令検索
どうやってこれらを実現するかを模索する過程で、安全書類が作られるようになりました。
つまり、「法律で定められた安全対策を現場で実現するためのツール」として用いられるようになったのが安全書類なのです。
このことを理解すれば、「形式的なものでは?」と感じていた方にも、安全書類があることで作業員の生命や健康が守られ、現場の安全が確保されるということがおわかりいただけるでしょう。
安全書類は、労働災害防止や安全衛生管理を、具体的に実行するための計画書であり証明です。
現場の安全確保と作業員の命を守るという法的責任を果たすために、適切に作成・管理する必要があることをしっかり覚えておきましょう。
2.【種類別】安全書類の一覧表

安全書類を種類別に一覧でご紹介します。
前述のように、現在安全書類は20〜30種類以上ありますが、その中で多くの現場で使用されるのは下表に記載した17種類です。
表では、工事の規模や契約形態を下記の3つに分け、各々必要になる書類にチェックを入れています。
- A:元請から下請に発注する金額400万円以上(税込)
- B:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円以上(税込)
- C:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円未満(税込)
※この区分は、建設業法や労働安全衛生法に基づく一般的な基準を参考にしていますが、発注者や元請企業によっては必ずしもこの基準に当てはまらない場合があります。
工事の規模に関わらず、一覧に掲載した書類以外の提出を求められる可能性もあることに留意してご覧ください。
一覧の分類は以下の通りです。
【安全書類の分類】 |
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〈労務安全関係書類〉 現場作業員の危険作業や使用工具の管理などに関する安全書類です。下請金額の総額に関わらず、現場の労務安全を管理する上で必要とされます。 |
〈施工体制台帳関係書類〉 工事を担当する会社の構成を管理し、工事関係者間の役割や責任を明確にする安全書類です。 民間工事で下請金額の総額が4,000万円 (建築一式工事:6,000万円)以上となった場合と、公共工事の場合は無条件で必要になる書類です。 ※発注者や元請企業の方針により、民間工事においては例外として必要ないケースもあります。 |
〈その他の書類〉 上記以外で必要に応じて揃える安全書類です。 現場の特性や状況に応じて、求められるため、都度対応する必要があります。 |
安全書類は、このように「労務安全関係」「施工体制台帳関係」「その他」の3つに分類するのが一般的です。
適切に分類することで、書類の整理や管理がしやすくなり、効率的な運用が期待できます。
次章からは、これら3つの分類ごとに、主要な安全書類について、それぞれの内容と目的を解説していきます。
現場や作業員の安全を守るために欠かせない安全書類について、さらに理解を深めていきましょう。
3. 安全書類の分類1|労務安全関係8つ

労務安全関係に分類されるのは、現場作業員の安全確保を目的とした書類で、作業中の危険防止や使用工具・設備の適正管理に関する内容を含んでいます。

A:元請から下請に発注する金額400万円以上(税込)/B:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円以上(税込)/C:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円未満(税込)
比較的小規模な工事の場合、「1.工事安全衛生計画書」は必要ないことがほとんどです。
また、5〜8については、使用する機械や設備がある場合にのみ提出が求められるため、「必要に応じて作成する」ことになります。
労務安全関係の主な8つの安全書類について、内容と目的を下表にまとめましたのでご覧ください。
安全書類の分類1|労務安全関係8つ |
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1.工事安全衛生計画書 <概要> 工事現場の安全衛生対策をまとめた計画書です。 通常、工事の開始前に作成し、作業員への周知が求められます。 <目的> 作成の目的は、現場での安全確保と労働者の健康保護です。 事故を防ぎ、労働者の健康を守るために必要な対策を事前に整理します。 <記載項目(例)> ・安全衛生目標 ・作業員の安全教育計画 ・危険予知活動計画 ・安全作業手順 など ※多くの場合、現場責任者や安全管理者の署名が必要になります。 |
2.新規入場時等教育実施報告書 <概要> 新規入場者に対する安全教育の実施内容と、その実施状況を記録する書類です。 <目的> 新規作業員が現場に入る際の安全に対する意識を向上させることを目的として作成します。 <記載項目(例)> ・参加者名 ・教育実施日 ・教育内容(作業安全、危険予知活動)など ※多くの場合、教育担当者の署名が必要になります |
3.安全ミーティング報告書 <概要> 定期的な安全ミーティングの内容と、その結果に基づく改善策を記録した報告書です。 <目的> 安全管理体制の強化と、問題点の早期発見、解決を促進することを目的とした書類です。 <記載項目(例)> ・ミーティング日時 ・参加者名 ・議題 ・改善策や対応策 |
4.持込機械等(移動式クレーン/車両建設機械等)使用届 <概要> 移動式クレーンや車両建設機械等の使用に関する届け出です。 <目的> 特定機械の使用に際して、適正な運転と安全確認を行うこと、その許可を目的として作成します。 <記載項目(例)> ・使用機械名 ・機械所有者の氏名 ・操作する人の氏名 ・責任者名 ・使用場所 ・使用期間 ・機械の点検状況 |
5.持込機械等(電気工具/電気溶接機)使用届 <概要> 電気工具や電気溶接機の使用に関する届け出です。 <目的> 特定機械の使用に際して、適正な運転と安全確認を行うこと、その許可を目的として作成します。 <記載項目(例)> ・使用機械名 ・機械所有者の氏名 ・操作する人の氏名 ・責任者名 ・使用場所 ・使用期間 ・機械の点検状況 |
6.工事・通勤用車両届 <概要> 工事や通勤に使用する車両に関する届け出です。 <目的> 車両による事故を防ぎ、安全な現場移動を管理するために作成します。 <記載項目(例)> ・使用する車両の種類 ・車両の点検状況 ・使用目的(工事移動、通勤)など |
7.有機溶剤・特定化学物質等持込使用届 <概要> 有機溶剤や特定化学物質等を使用するための届け出です。 <目的> 化学物質の適切な取り扱いと管理方法を確認し、リスクを最小限にするために作成します。 <記載項目(例)> ・物質名 ・使用場所 ・使用者名 ・管理責任者名 ・使用目的 ・保管方法 ・安全対策(換気、保護具)など |
8.火気使用願 <概要> 火気の使用に関する届け出です。 <目的> 火気を使う場所や使う人の安全に管理して、 火災などのリスクを防ぐための事前確認と適切な対策を講じるために作成します。 <記載項目(例)> ・使用する火気の種類 ・作業する人の名前 ・管理責任者の名前 ・使用場所 ・使用日時 ・消化器や防火対策の有無 など |
労務安全関係の安全書類は他にも、
- 新規入場者アンケート:作業員の安全意識や健康状態を把握するための安全書類
- ヒヤリ・ハット報告書:事故を未然に防ぐためのフィードバックツール
など、作業員の安全意識を高め、監督者が作業員の安全や健康状態を把握するための書類が数多くあります。
こうした書類も含め、労務安全関係書類は現場の安全管理体制を構築・維持するための基盤となります。
4. 安全書類の分類2|施工体制台帳関係6つ
施工体制台帳関係に分類されるのは、工事全体の管理体制を整備し、関係者間の役割や責任を明確にするための安全書類です。

A:元請から下請に発注する金額400万円以上(税込)/B:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円以上(税込)/C:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円未満(税込)
「1.工体制台帳作成通知書」および「2.施工体制台帳」、「4.再下請通知書(変更届)」は、規模の小さい工事では作成が求められない場合がほとんどです。
「3.下請負業者編成表」、「5.施工体系図」に関しては、Cのパターン以外では、大抵必要となります。
適切な施工計画の実施や安全管理の一貫性を保つうえで重要な、施工体制台帳関係の主な6つの安全書類について、内容と目的を下表にまとめました。
安全書類の分類2|施工体制台帳関係6つ |
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1.施工体制台帳作成通知書 <内容> 施工体制台帳を作成し、関係者に通知する書類。 <目的> 施工体制の整備と確認。 作業の進行に必要な全体の構成を明確にし、安全管理体制の整備を促進する目的。 <記載項目(例)> ・作成日 ・現場名 ・施工体制の確認者名 ・作成者の署名 |
2.施工体制台帳 <内容> 施工現場での作業員や機械、管理体制を記載した台帳。 施工現場における作業員、機械、監督者、各作業段階などを詳細に記録し、現場の安全管理体制を明示する。 <目的> 施工体制の詳細な把握と安全管理。 現場での作業状況、監督体制、使用機械等を記録することで、必要な時に安全確認を迅速に行えるようにする。 <記載項目(例)> ・作業員の名前、役職、担当作業内容 ・使用する機械や器具、設置場所 ・現場責任者と安全管理者の氏名 ・各工程の作業内容、予定工期 |
3.下請負業者編成表 <内容> 下請業者の構成や役割を示した書類。 どの業者がどの作業を担当しているかを記録します。 <目的> 下請業者の確認と管理体制の把握。 下請業者の役割や責任範囲を明確にすることで、業者間の連携や安全確保をしやすくする。 <記載項目(例)> ・下請業者名 ・業者ごとの作業内容 ・業者の担当者名 ・必要な資格や免許の確認 ・管理者名や連絡先 |
4.再下請通知書(変更届) <内容> 再下請業者の変更を通知する書類。 元請けと下請け間の契約内容に基づいて変更を行う際に使用する。 <目的> 再下請の変更に伴う安全管理の見直し。 変更により新たなリスクが発生しないよう、体制の再確認を行うために作成する。 <記載項目(例)> ・変更前と変更後の下請業者名 ・変更内容(業務範囲の変更、担当者の交代など) ・変更理由とその詳細 ・変更通知日とその承認者 |
5.施工体系図 <内容> 施工現場の組織構成や作業工程を図で示したもの。 作業の流れや関係者を可視化する。 <目的> 施工体制の可視化と作業工程の確認。 作業の進行において、各担当者や部署がどのように協力して作業を行うかを確認するために作成する。 <記載項目(例)> ・主要作業の工程別フロー ・作業員と管理者の配置図 ・使用する機械や設備の配置 ・連携する部署や関連業者との関係 |
6.作業員名簿 <内容> 現場で働く作業員の名前や資格、勤務状況などを記載した名簿。 <目的> 作業員の管理と安全確保。 各々の資格や経験に基づいて、適切な作業を割り当てることで、事故の予防に繋げる。 <記載項目(例)> ・作業員の氏名 ・役職や担当作業 ・資格や免許(高所作業車運転者、溶接士など) ・作業開始・終了時刻 ・勤務シフトや作業時間 |
施工体制台帳関係の安全書類は他にも、
- 外国人就労者管理台帳:外国人労働者の雇用状況や資格確認、健康状態の把握のための安全書類
- 安全施工サイクル表:工事進捗に合わせた安全管理のスケジュールを明確化する安全書類
など、工事の体制や責任、役割を整備するための書類が数多くあり、現場の特性や工事の内容に応じて活用されています。
5. 安全書類の分類3|その他の書類3つ

「その他」に分類しているのは、特定の作業や関係者間の調整、安全活動の記録を目的とし、現場の安全管理をより実効的なものにするために活用される、「労務安全関係」「施工体制台帳関係」以外の安全書類です。

A:元請から下請に発注する金額400万円以上(税込)/B:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円以上(税込)/C:元請、下請に関わらず、受注した工事の金額が500万円未満(税込)
これらは、工事規模の大小にかかわらず、通常、安全管理を適切に行うために必要とされます。
「就労表」「危険予知活動シート兼協力会社作業日報」「協力会社安全巡視記録」の3つについて、内容や目的を下表にまとめましたので、ご覧ください。
安全書類の分類3|その他の書類3つ |
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1.就労表 <概要> 作業員の出勤状況や作業内容を記録した書類です。 <目的> 作業員の労働時間や作業内容を確認することで、適正な労働環境を維持し、労働時間の管理や安全配慮を行うことを目的に作成します。 <記載項目(例)> ・作業員氏名 ・出勤日、出勤時間、退勤時間 ・担当作業内容 ・作業開始・終了時刻 ・連絡先(緊急時対応用) |
2.危険予知活動シート兼協力会社作業日報 <概要> 単独または協力会社が行う危険予知活動の記録と、作業進捗の報告をまとめたシートです。 現場での危険予知活動(KY活動)や、安全対策を実施した内容と協力会社の作業進捗が記録される。 <目的> 作業中のリスク管理と事故や危険な事態を未然に防ぐことと、 作業進捗の把握や、協力会社との連携を確保するために作成します。 <記載項目(例)> ・危険予知活動の内容(事前のリスク評価や注意点) ・作業員の安全確認や指示事項 ・協力会社名 ・作業進捗について(開始時間、進捗状況) ・達成目標や作業目標 ・事故報告やトラブルの有無 ・使用した安全対策(例: 防護具、警告標識など) |
3.協力会社安全巡視記録 <概要> 協力会社による現場の安全巡視結果を記録したものです。 協力会社の担当者が現場を巡視し、発見した安全上の問題点を記録します。 <目的> 現場の安全確認と改善点の把握のため作成します。 <記載項目(例)> ・巡視者の名前 ・巡視日時 ・現場の安全確認結果 ・発見された問題点(不適切な作業環境、機械の不具合など) ・改善措置や対応策(注意喚起、修理など) ・次回巡視の予定や改善確認日 ・署名・押印(確認事項として) |
これ以外にも、「その他」に分類できる安全書類で、現場の特性や状況に応じて必要となるものは数多く存在します。
たとえば、
- 高齢者就労報告書:高齢作業員の安全配慮を目的とした安全書類
- 適正配置通知書(血圧):作業員の健康状態を考慮して適正配置を行うための安全書類
- 情報漏洩誓約書:現場で取り扱う機密情報を守るための安全書類
など多岐に渡っており、これらは安全管理体制を強化するうえで重要な役割を果たしています。
6. 安全書類を効率的に作成する4つのコツ

これまでの内容で、安全書類の重要性や、それぞれの書類作成に求められる目的について、しっかりとご理解いただけたかと思います。
とはいえ、日々の忙しい状況下で、正確さが求められる安全書類の作成を負担に感じることもありますよね。
そこで、最後の6章では、安全書類を効率的に作成する4つのコツをお伝えします。
・全建統一様式のテンプレートを使用する ・必要項目を事前に関係者と共有する ・パソコンの便利機能を活用する ・クラウドシステムを導入する |
順にみていきましょう。
6-1. 全建統一様式のテンプレートを使用する
安全書類を効率化する第一歩として、すべての安全書類を一般社団法人「全国建設業協会」の全建統一様式のテンプレートに統一することをおすすめします。
1章のフォーマット部分で触れたように、このテンプレートは法律に基づいて作成されていて、基本的にどんな現場でも通用するため、義務化された内容を漏れなく記載でき、書類作成の手間を削減できます。
安全書類のフォーマットに決まりはないものの、オリジナルの書式は、会社間での普遍性が低く、認識のズレが生じる可能性があります。
全建統一様式は業界で広く認知された統一規格であり、関係者間での認識違いが最小限に抑えられます。そのため、確認作業の負担が軽減され、トラブルを防ぐことができます。
元請け会社が別のフォーマットを指定してきた場合は、基本的にそれに従うしかないですが、特に指定がない場合は、このテンプレートを使っていれば間違いありません。
誰が担当しても同じ基準で書類を作成できるため、作業が効率化し、作成者間の引き継ぎがスムーズになるのもメリットのひとつです。
チェック!全建統一様式のテンプレートの入手方法 |
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一般社団法人「全国建設業協会」は、全建統一様式のガイドラインを書籍として販売していますが、一般向けにテンプレートをダウンロードできるサービスは提供していません。 ただし、以下の方法で全建統一様式のテンプレートを入手することができますので、試してみてください。 ●地域の建設業協会に問い合わせる 地域の建設業協会では、会員向けに全建統一様式のテンプレートを提供している場合があります。 非会員でも一部の書式が利用可能なことがあるため、最寄りの協会に問い合わせてみましょう。 ●オンライン販売・ダウンロードサービスを利用する 建設業関連のWebサイトで、全建統一様式のテンプレートがExcelやPDF形式で提供されています。 Google検索で「全建統一様式 安全書類テンプレート」と入力して検索すると、いくつか挙がってきますので、御社のニーズに合ったものを選んで入手しましょう。 |
参照:一般社団法人 全国建設業協会|(改訂6版(令和6年10月))全建統一様式 記載例及び解説
6-2. 必要項目を事前に関係者と共有する
2つめのコツは、安全書類に記載するための 必要な情報を事前に関係者に確認し、共有しておくこと です。
事前に情報を集めておくことで、作成途中で担当者に連絡をとる手間や、追加の問い合わせをする負担を大幅に減らせます。
安全書類を作成したことがある人なら、記載しなくてはならない項目や情報はおおよそ把握されているかと思います。
その中の自分では判断できない以下のような情報を、あらかじめ現場監督等の関係者に確認しておくのです。
事前に共有しておくと良い情報(例) |
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情報を事前に共有しておくことで、確認の手間が減らせ、作業時間が短縮します。
情報を持つ人と連絡が取れないといった、ストレスを避けるためにも有効です。
6-3. パソコンの便利機能を活用する
安全書類の作成時には、パソコンの便利な機能を活用するようにしましょう。
辞書登録や、ショートカット機能などの搭載機能を積極的に使うことで、同じ言葉を何度も入力する手間が省け、誤入力のリスクも軽減します。
ここでは代表的な書類作成に使える便利機能を3つご紹介します。
ユーザー辞書登録 文字入力を簡略化する機能 よく使う単語や語句をあらかじめ登録しておくと、その語句は、通常の変換候補よりも優先的に表示されるため、安全書類の入力作業も効率化します。 <例> ◯山田太郎(作業員名)→やま ◯田中建設株式会社(取引先)→たなけん ◯エル総合重機運用支援センター(協力会社)→える ◯安全確認→あんかく ◯プロジェクト→ぷろ |
ショートカットキー 特定のキーを組み合わせることで、パソコンの操作手順を短縮する機能 マウスで操作する代わりに、キーボードの文字キーや数字キーの組み合わせで操作が行えます。 <例> ◯コピー:Command+C(Mac)、Ctrl+C(Windows) ◯貼り付け(ペースト):Command+V(Mac)、Ctrl+V(Windows) ◯特定の場所にジャンプ(Excel):Command+G(Mac)、Ctrl+G(Windows) |
マウスの速度調節 マウスを自分の作業スタイルに合わせて調節する機能 適切な速度にすることで、ドラッグやクリックのミスが減少し、無駄な操作時間を軽減できます。 <方法> ◯Macは、画面左上の Appleメニュー(リンゴマーク)から設定→マウスから ◯Windowsは、画面左下の スタートメニューから設定→マウスから それぞれ速度調節が行えます。 |
安全書類に使える便利な機能については、下記の記事で詳しく解説していますので、そちらも参考にしてください。
【こちらの記事もおすすめ】
安全書類の作成を効率化して負担軽減!6つのコツをわかりやすく解説
6-4. クラウドシステムを導入する
「ここまで紹介したコツを実施したけれど、少ししか負担が減らせない。もっと劇的に効率化したい!」
…という方に、クラウドシステムの導入をおすすめします。
クラウドシステムを導入すれば、安全書類や関連データの一元管理が簡単に行え、手作業のミスを減らし、Excelや紙ベースで発生する問題を根本的に解決できます。
クラウドシステム、と聞いただけで、
「手間のかかるものは無理だし、使うのも難しそう」
と思われるかもしれませんが、クラウドシステムの導入は簡単で、特別な専門知識も必要ありません。
以下に、安全書類に関してクラウドシステム導入で実現できる3つのことを紹介しますので、ご覧ください。
【安全書類】クラウドシステム導入で実現できる3つのこと |
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1.安全書類の一元管理 クラウドシステムでは、安全書類(作業員の安全教育記録、事故報告書など)を一元管理できます。これにより、必要な情報をすぐに取得でき、手作業でのデータ入力や管理の手間を削減できます。 |
2.作業員との効率的な情報共有 作業員や協力会社とのコミュニケーションを一元化できるため、安全に関する重要な情報(緊急連絡先や事故報告など)を迅速に共有できます。 情報共有が円滑化され、伝達ミスや遅延も防げて、書類作成の効率が上がります。 |
3.文書・データのバージョン管理 クラウドシステムでは、膨大な文書やデータが自動的にバージョン管理されます。 履歴が自動的に保存され、誰がどの部分をいつ更新したかが明確にわかるようになるため、更新履歴がわからず迷ったり、古いバージョンを間違って使用することがなくなります。 |
このように、クラウドシステムを導入することで、安全書類作成の効率が一気に向上します。
「システム化」と聞くと、手間がかかると感じる方がいるかもしれませんが、導入後は負担やストレスが大きく軽減されますので、ぜひ検討してみてください。
株式会社エルラインは、建設業に携わる方々の現場にコミットし、経営環境や働く人の環境改善を徹底サポートする会社です。
現場を知り尽くし、現場の声に耳を傾け、常識にとらわれない経営課題の解決方法をご提案します。
安全書類に関してお困りの方は、ぜひ一度エルラインへご相談ください!
7. まとめ
安全書類は、単なる「法律を守るための手続き」ではなく、作業員の生命と健康を守り、現場の安全を徹底するための重要なツールです。
適切に作成・管理することで、万が一の事故に備えると同時に、現場全体の安全意識を高め、法的責任も果たすことができます。
作成には手間がかかるかもしれませんが、現場の安全を守る第一歩として、しっかり取り組んでいきましょう。
この記事が、安全対策への理解を深め、貴社の安全対策の一助となれば幸いです。
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