在庫管理とは？目的やメリット、導入の可否判断に役立つ基本を解説！

「本当に、今のようなずさんな管理状況で、問題ないのだろうか？」
「在庫管理って、そもそも何が正解？」

同僚や上司が、自社の在庫管理について「問題ない」としていても、「本当にそうだろうか？」と、違和感・不安感を覚えてはいませんか？

確かに、在庫管理がずさんでも、以下のような状態なら、表面上は経営が成り立つ場合もあります。

表面上は経営が成り立つ場合の例
売り上げが好調で、在庫が多くてもどんどん売れる 利益率が高く、多少の在庫ロスは気にならない 資金に余裕があるから、過剰在庫でも困らない お得意様が多く、納期が遅れても特にトラブルにはなっていない

しかし、上記のような理由から成り立っている場合、本当の意味での「在庫管理ができている状態」とはいえないでしょう。

なぜなら、在庫管理とは、「会社が持っている物を正確に把握して、必要なときに必要な分だけ、スムーズに用意できるようにする」ことだからです。

今は何とかなっているように見えても、このまま放っておくと大きな問題になるかもしれません。

現状のままでもなんとかなるだろう、ではなく、いったん立ち止まり、在庫管理の必要性を検討してみることが大切です。

とはいえ、「本当に必要なのか？」「自社でどこまでやるべきか？」と判断がつかない場合もあるでしょう。

そこで今回の記事では、まずは在庫管理をするかどうかの判断を行えるよう、目的やメリット・デメリットなど、在庫管理についてわかりやすく解説していきます。

この記事を読んでわかること
在庫管理の目的やメリット・デメリットがわかる 在庫管理が自社に必要かどうか、チェックシートで確認できる 在庫管理を行う基本の流れを図解で紹介 在庫管理表の作成・運用を行う2種類の方法の概要がわかる

最後まで読んでいただければ、在庫管理とはどのような取り組みかを知り、自社にとって必要なものかどうか判断できるようになりますので、ぜひ参考にしてください。

1. 在庫管理とは「会社が持っている物を正確に把握して、必要なときに必要な分だけ、スムーズに用意できるようにすること」

在庫管理とは、「会社が持っている物を正確に把握して、必要なときに必要な分だけ、スムーズに用意できるようにする」ことです。

「倉庫や棚に、だいたいこれだけの物がある」という程度の、ざっくりとした所在や数がわかっているだけでは、「在庫管理ができている」とはいえません。

誰か（あなたや同僚、上司）がなんとなくわかっている、という記憶上の管理に頼っている状況だと、注文や出荷、販売の計画に役立たない（あるいは、差しさわりが出る）可能性が高いからです。

「いつ出荷できるのか」「この注文に対応できる在庫状況なのか」「この商品の稼働状況は？」といった経営判断につながる管理こそ、本来の在庫管理の在り方といえるでしょう。

では、具体的にどのような状態であれば、本当の意味での在庫管理ができているのかと言いますと、下記の4原則を押さえているかどうかが重要です。

まずは、どの商品がどこに保管されているか、誰か一人が知っている、なんとなくわかっているというのではなく、「誰もが正確に把握できる」社内の仕組みが必要です。

そして、各商品の正確な在庫数を、知りたいときに即座に確認できる状態を整えなくてはいけません。

また、各商品の需要によって、「この商品は確実に在庫として確保すべきだ」などと、優先順位を付けて、補充の判断を下せることも必要でしょう。

最後に、古い在庫から順に、出荷・販売できる状態にしておくことも、効率的で正確な在庫管理には、重要な要素となります。

上記4つの原則を押さえることで、「いつ販売・受注可能か」という、経営判断に役立つ在庫の管理ができるのです。

2. 在庫管理を行う目的は「無理・無駄・ムラをなくして会社の成長につなげること」

では、正しい「在庫管理」を行うことには、いったいどのような目的があるのでしょうか。
一言で言いますと、「無理・無駄・ムラ」をなくし、会社の成長につなげることです。

社内の誰か（あなたや同僚、上司）によるざっくりとした在庫管理では、下記のような問題が起こる可能性があるからです。

ずさんな「在庫管理」で起こる問題の例
知らないうちに、ほかの誰かが在庫を出し入れし、実際と在庫状況が違ってしまう 実際の数量を確認するには、いちいち保管スペースまで行く必要がある データを取らないから、各在庫の入出庫の状況・傾向などが見えにくい

すると、次のような「無理・無駄・ムラ」が生じやすくなります。

つまり、リアルタイムで在庫状況がわからず、コストの増加につながり、せっかくの在庫データ・販売履歴などを活用できない、ということです。

今一つ在庫管理の意義が掴めない場合は、下記のようにイメージしてみましょう。

 

在庫管理を適切に行なっていれば、上記のような機会損失を回避できたかもしれません。現状よりもっと、会社の成長につながっていたかもしれないのです。

3. 在庫管理を行うメリット

適切な在庫管理を行う意義をお伝えしたところで、続いては、具体的な在庫管理を行うメリットをご紹介しましょう。

主なメリットとして、次の3つが挙げられます。

在庫管理を行うメリット
3-1. 業務効率化が図れる 3-2. コスト削減効果が期待できる 3-3. 顧客満足度の向上につながる

3-1. 業務効率化が図れる

1つ目は、業務の効率化が図れることです。

社内に適切な在庫管理機能が備わっていれば、「現在、倉庫に商品Aがいくつある」と、在庫の数量・保管場所など、在庫状況が正確に把握できるからです。

具体的には、次のような効果が期待できます。

適切な在庫管理を行うと、保管場所に訪れて在庫を探す手間を省き、注文の確認にも即座に対応できます。

また、在庫状況・受注の判断や応対に取られる時間を節約して、その時間をほかの業務に充てられるため、全体的な生産性を向上させられます。

3-2. コスト削減効果が期待できる

2つ目は、コスト削減効果が期待できることです。

理由としては、下記のような在庫管理状況の改善を経て、資金繰りを改善できるからです。

在庫状況の改善例
欠品や過剰在庫を防ぎ、適正在庫を維持できる 先入れ先出しを行うことで、在庫の劣化を防ぎ、廃棄が少なくなる 余剰在庫を防ぎ、保管スペースを効率的に利用できる

具体的には、次のような効果が期待できます。

在庫管理をきちんと行なえば、保管コストのほか、業務あたりにかかる作業量も軽減でき、人件費の節約にもつながります。

浮いた経費を資金として、新たな業務・開発・企画などへ投資し、会社の成長や、革新にも貢献できるでしょう。

3-3. 顧客満足度の向上につながる

3つ目は、顧客満足度の向上につながることです。

顧客への対応が、スムーズにできるようになるからです。

具体的には、次のような効果が期待できます。

 

問い合わせや注文をしてきたお客様は、基本的に「すぐに知りたい」「すぐにほしい」という需要が高いです。

在庫管理を適切に行うことで、スピーディな対応が実現し、顧客満足度アップにつながるでしょう。

4. 在庫管理をこれから始めるデメリットはとにかく手間がかかること

ここまで、在庫管理の良い面にスポットライトを当ててご紹介してきました。しかし、適切な在庫管理を行う場合、デメリットも生じます。

きちんとした在庫管理の体制を整えるためには、とにかく手間がかかるのです。

なぜなら、改めて在庫管理に取り組むには、下記のような準備が必要になるからです。

在庫管理を新しく始めるにあたって必要な準備の例
現在の在庫管理状況を把握する 現在の業務フローを見直す 在庫管理の導入を社内に周知・協力を求める

まず、「今のままではダメだ」という漠然とした問題意識から、「現状ではどうダメなのか」を具体的に把握する必要があります。

今ある管理の仕組みやデータでは、「きちんとした在庫管理には役立ちそうにない」のか、それとも「ある程度、新しいシステムに活用できる」のか。

現状を把握しないことには、改善のためのスタート位置が見えてこないからです。

そもそも、「現在の在庫」として把握している内容（データ）が、本当に正しいのかという点も、確認が必要です。紙媒体で記録を取っているなら、実際に倉庫にある量と、紙面上の数字が合致しているか、見直す手間もかかるでしょう。

そして、現在の業務の流れも見直す必要があります。

きちんとした在庫管理を進めるには、現状の「入庫した物を保管し、必要なとき出庫していた」という流れを、変える必要があるからです。

新しい管理体制を組み込めるよう、これまで行なってきた業務フローに調整を図る手間が生じるでしょう。

新しい管理体制を始めるにあたって、社内に周知・協力を求める必要もあります。適切な在庫管理状況を整えるには、多かれ少なかれ、社内に混乱が生じるからです。

導入する在庫管理の仕組みによっては、従業員が業務上に必要な知識や技術を身に着けないといけないケースもあるでしょう。その場合、事前にマニュアルの作成や、トレーニングや研修の機会を計画する手間もかかります。

また、社内から「慣れ親しんだ業務フローを変えたくない」という声が上がるかもしれません。新体制への移行に協力を求めるために、各部署への根回しや、資料の作成など、導入にこぎつけるまでの手順に時間を要するでしょう。

このように、在庫管理の体制を整えるには一定の工数が発生することは避けては通れないのです。

5.【チェックリストで確認】在庫管理をこれからやるべきケース

では、いったいどのような企業が、大変な思いをしてまでこれから在庫管理をしっかりと行なっていく必要があるのでしょうか。

簡単なチェックリストをご用意いたしましたので、該当する項目がないか、確認してみてください。

上記に1つでも心当たりがあれば、在庫管理を見直し、新たにしっかりと管理環境を整えて行かなければいけないタイミングです。

これから紹介する基本の流れを抑えて、在庫管理の見直しに取り掛かりましょう。

6. 在庫管理を行う基本の流れ

ここまでの内容から、自社に在庫管理が必要かどうか、導入の可否について、具体的な方向性が固まってきたことと思います。

続いては、実際に在庫管理を始める際、どのように進めていくのか、おおよその流れをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

図解で示した流れのポイントを簡単にご説明しますと、まず準備段階として、在庫管理が進められる土台を社内に作り、現状を把握して、既存のデータや業務の流れの調整が必要です。

そして、在庫管理の一歩としては、下記のような情報を整理し、項目としてリスト化していきます。

リスト化する情報の例
管理したい物はどれか いくつあるのか（数量） どこに保管しているのか 発注単位はどう設定しているのか どの商品を優先して、在庫として保有すべきか

上記の在庫情報以外にも、保管場所もデータとして素早く認識できるように、倉庫内の棚、フロア、パレットなどを識別（番号を割り振るなど）しておくことが肝心です。

情報の整理後、「在庫管理表」を作成し、在庫管理を進めていくのですが、長期的に運用を行うためには、定期的な見直しが必要です。

棚卸や適正在庫の確認を行い、「もっと改善して、より効率的に業務を進められないか」という視点で、在庫管理の社内システムを更新していくことも重要といえます。

運用と見直しを交互に進め、アップデートした管理を積み重ねていくことで、会社の成長につながる管理体制を構築していけるでしょう。

在庫管理を改めて進めるには「社内の協力」が必須
在庫管理の成功には、社内（あるいは担当部署）全体の協力が不可欠です。 在庫管理は、管理責任者一人が奮闘してもうまくはいきません。 なぜなら、倉庫担当者、現場担当者、バックオフィス担当者など、在庫に関わるすべての人が同じ認識・方法のもと取り組まなければ、永遠に在庫のズレなどの問題が解消されることがないからです。 社内が一丸となって、現状の管理状態や、業務フローの確認、調整を行なっていく必要があるのです。 場合によっては「今まで大丈夫だった」という意識から、新たな取り組みへの抵抗があるかもしれません。その際はぜひ、具体的な問題点や導入メリットを数値で示し、段階的な導入を提案することで理解を得やすくしてみましょう。 また、マニュアル作成や勉強会開催など、不安を取り除くサポート体制を整えるのも良い方法です。

7. 在庫管理を行う方法は2つ

具体的に在庫管理の導入を進めていく場合は、在庫管理の流れでお伝えした「在庫管理表」の作成・運用方法をどうするか、事前に選択肢を固めておくことをおすすめします。

在庫管理を行う方法として、次の2つがあるからです。

在庫管理を行う2つの方法
7-1. 紙やExcelを使って自力で作る 7-2. 在庫管理システムを利用する

判断のご参考になるよう、それぞれメリット・デメリットをご紹介しましょう。

7-1. 紙やExcelで在庫管理表を作成する

紙やExcelを使う場合、メリット・デメリットは次の通りです。

上記の通り、比較的簡単かつ低コストでの導入がしやすいため、小規模企業や、管理すべき物が少なめの場合に適した方法といえるでしょう。

Excelを用いることで、基本的な在庫の数量や入出庫の履歴を手入力で記録し、数式を使って在庫状況を計算できます。

7-2. 在庫管理システムを活用する

在庫管理システムを活用する場合のメリット・デメリットは次の通りです。

 

在庫管理システムを導入すれば、より効率的で正確な在庫管理が可能になり、下記のような会社に特におすすめといえるでしょう。

「在庫管理システム」がおすすめのケース
取扱商品の種類が多い 在庫の動きが速い 複数の店舗や倉庫で在庫を管理している リアルタイムでの在庫状況把握が必要 在庫データを経営判断に活用したい 人的ミスを減らしたい 複数拠点やチームで管理を行いたい

ぜひあなたの会社の状況と見比べてみて、「在庫管理システムの導入を検討すべきかどうか」の参考にしてみてください。

8. ビジネスの成長を見据えて導入するなら「在庫管理システム」の検討を

前の章では、紙やExcelでの管理方法と、在庫管理システムを活用した方法の2つを挙げ、それぞれ適する企業タイプをお伝えしました。

そのなかで、紙やExcelでの管理は、「小規模企業や、管理すべき物が少なめの場合」におすすめだと触れましたが、会社の成長を見据え、業務をより効率的に進める土台作りをしたい、と希望される場合は、ぜひ在庫管理システムの導入を検討してみましょう。

理由としては、在庫管理システムは、紙やExcelとは次元の異なる、業務の効率化・自動化が図れるからです。

具体的には、下記のような内容が実現できます。

在庫管理システムでできることの例
商品の入出庫状況や在庫量をリアルタイムで把握できる 複数の人が同時に情報にアクセスできる バーコードやRFIDタグで、素早く・正確に在庫データを読み取れる 手作業での入力を省き、作業時間を短縮、人的エラーを減少できる 過去の販売データや市場トレンドを分析できる より精度の高い需要予測ができ、過剰在庫や在庫不足のリスクを軽減できる 個人の経験や知識に依存せず、新人でも容易に在庫管理が可能になる クラウド型システムの場合、インターネット接続があればどこからでもアクセスできる

導入には投資とトレーニングが必要ですが、長期的に見れば業務効率は大きく改善されます。自社の状況に合わせて、ぜひ前向きに検討してみてください。

建設業界・仮設資材の在庫管理なら「LPRE（エルプレ）」がおすすめ
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9. まとめ

この記事では、在庫管理の概要について解説しました。最後に、記事の内容を振り返りましょう。

在庫管理とは、「会社が持っている物を正確に把握して、必要なときに必要な分だけ、スムーズに用意できるようにする」ことであり、その目的は、「無理・無駄・ムラ」をなくして、会社の成長につなげることにあります。

在庫管理を行うメリットは次の通りです。

在庫管理を行うメリット
業務効率化が図れる コスト削減効果が期待できる 顧客満足度の向上につながる

メリットがある反面、現在の在庫管理状況や業務フローの確認・調整をしたり、在庫管理の導入を社内に周知して協力を求める必要があったりと、手間がかかることも知っておきましょう。

「現状は必要ない」と判断する前に、上記の目的や、メリット・デメリットなどを知って、自社に必要なものか、現状を見直し、検討することが大切です。