建設業の平均粗利率は約23%!自社の計算法と経営改善策を紹介

「建設業の粗利率ってどれくらいが一般的なの?他社と比べたいけど、何を基準にすればいいのか分からない」
「赤字を避けるためには粗利率が重要って聞くけど、具体的にはどういうこと?」

現場の技術やノウハウには自信があっても、経営やお金の管理となると苦手意識が出てしまう方も多いのではないでしょうか。

建設業の粗利率は、工事や会社の規模によって異なりますが、約23%といわれています。

赤字を避けるために粗利率が重要といわれるのは、粗利率は、売上に対してどれだけ利益を確保できているかを示す指標だからです。

粗利率が高いほど経営に余裕が生まれ、将来の投資やリスクへの対応がしやすくなります。

「そうはいっても、毎回粗利なんて変わるものだし…」
「50%のときもあれば赤字のときもあるし…正確に出せないんじゃない?」

企業の成長を本気で目指すなら、今この時がチャンスです。
このような考え方から脱却し、粗利率を正確に把握していきましょう!

本記事では、建設業の粗利率について、業界全体の傾向から自社の粗利率を改善する戦略まで、網羅的に解説します。

この記事を読めばわかること
・建設業の粗利率の動向
・自社の粗利率の計算方法
・粗利率を改善するための具体的な対策
・システム化導入が粗利率に与える影響

この記事を読めば、建設業における粗利率への理解が深まり、自社の経営改善に必要な具体的な方針を立てることができます。

これまで経営や財務管理が苦手で、現場を重視して避けてきた方も、一歩踏み出して粗利率の理解と改善に取り組んでみましょう。

目次

1. 建設業の平均粗利率は約23%

建設業の平均粗利率は約23%

中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和4年度決算実績)​​によると、​​建設業の平均粗利率は23.14%​​です。

ご参考までに、令和4年度の業界別の決算実績を示した下表をご覧ください。

分類粗利率
全産業25.44%
建設業23.14%
製造業20.31%
情報通信業47.56%
運輸業・郵便業23.33%
卸売業15.06%
小売業30.03%
不動産業・物品賃貸業45.18%
専門・技術サービス業49.40%
宿泊業・飲食サービス業63.79%

出典:中小企業庁|中小企業実態基本調査(令和4年度決算実績)​​​​より作成

近年売上が回復傾向にあるといわれる建設業ですが、ご覧の通り、他業界の多くに比べて粗利率は低く、23.14%という値は、全産業の平均粗利率(約25%)よりも下回っています。

この理由として、資材コストや労働力不足、そして業界内での激しい競争などが考えられます。

※こちらについては、3.建設業の粗利率が低い3つの理由で詳しく解説します。

ただあくまでも23%は平均であり、建設業界の中には粗利率が30%を超える会社もあれば、20%を下回る会社も存在します。

ですので、他業界と比較しただけでは、「自分の会社は粗利率が高い」あるいは「ウチは粗利率が低い」などと一概に判断することはできません。

他業界ではなく、規模や工事の種類が似ている会社の粗利率と比較することで、自社の評価が明確になるでしょう。

2. 【建設業向け】自社の粗利率の計算方法を簡単ステップで解説

【建設業向け】自社の粗利率の計算方法を簡単ステップで解説

建設業全体の粗利率の状況を理解していただいたところで、2章では、自社の粗利率の計算方法を解説します。

売上高に対する粗利(売上総利益)の割合​​を示す粗利率は、以下の方程式で算出します。

【売上総利益(売上高ー売上原価)÷ 売上高✕100】=粗利率(%)

「純利益とか原価とかいわれても…」と計算式をみただけで難しく思われたかもしれませんが、以下のステップに沿って試せば、誰でも簡単に計算できます。

ステップ1|自社の売上高と売上原価を出す
ステップ2|計算式にあてはめる

一緒に進めていきましょう。

2-1. ステップ1|自社の売上高と売上原価を出す

まず、計算に必要な売上高と売上原価を出していきます。

2-1-1. 売上高とは

売上高は、文字通り、売り上げて得た利益です。
噛み砕いていうと、請け負った工事やプロジェクトから得た総収入にあたります。

たとえば、ある工事を5,000万円で請け負ったとしたら、売上高は、そのまま5,000万円になります。

2-1-2. 売上原価とは

売上原価は、工事やプロジェクトを完成させるために発生した材料費や外注費などの直接的な費用のことです。

具体的には以下のような項目が含まれます。

材料費建設に必要な資材や部品の購入費用 (コンクリート、鉄筋、木材など)​​
外注費​​専門技術が必要な部分を外部の業者に依頼した場合の費用 (電気工事、配管工事など)
労務費現場で働く職人や作業員の給与や賃金
経費・工事現場における交通費や通信費
・現場管理者の人件費
・光熱費
・機械等経費
・設計費
・労務管理費
・租税公課
・地代家賃
・事務用品費
・通信交通費
・交際費
・雑費​​​​など

これらの費用をすべて合計したものが「売上原価」です。

point!
【売上原価に含まれないものに注意!】

たとえば、本社での印刷費や本社スタッフの人件費は、売上原価には含まれません。
これは販管(はんかん)費(会社全体の運営に関わる費用)に分類されます。

迷いやすいので、販管費に該当する主なものを以下に挙げます。

・事務用品費やコピー機のリース料
・本社スタッフの交通費や出張費
・役員報酬
・広告宣伝費(マーケティング費用)
・会社が所有する事務所や車両などの減価償却費
※但し、工事現場で使用する重機や建設機械の減価償却費は売上原価に含まれる

本社や会社全体の運営に必要な費用は、工事と無縁でないにしても、販管費に分類されるので、注意しましょう。

「これは売上原価?販管費?」と迷ってしまったら、『直接工事に必要なものかどうか』と考えると判断しやすいです。

“売上原価=工事に直接的にかかる費用”

と覚えましょう。

出典:国土交通大臣登録 経営状況分析機関 建設業経営情報分析センター|売上高・原価 | 損益計算書 | 個人用 | 建設業財務諸表の解説​​
国土交通省|建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類​​

2-2. ステップ2|計算式にあてはめる

自社の売上高と売上原価が出たら、そちらを下記の計算式にあてはめていきます。

【売上総利益(売上高ー売上原価)÷ 売上高✕100】=粗利率(%)

ここでは、例として具体的な数値を入れて計算式を示しますので参考にしてください。

【Aさんの例|会社が携わったあるプロジェクトの粗利率】

・売上高:5,000万円
・原価:3,800万円

1,200万円(5,000万円ー3,800万円)÷ 5,000万円✕100=24%(粗利率)
【Bさんの例|中規模建設会社・1年間の粗利率】

・売上高:8億円
・原価:6億5,000万円

1億5,000万円(8億円ー6億5,000万円)÷ 8億円✕100=18.75%(粗利率)
【Cさんの例|大規模建設会社・1年間の粗利率】

・売上高:50億円
・原価:40億円

10億円(50億円ー40億円)÷ 50億円✕100=20%(粗利率)

このように、計算式に沿って、御社の粗利率を算出しましょう。

3. 建設業の粗利率が低い3つの理由

建設業の粗利率が低い3つの理由

あなたの会社やプロジェクトの粗利率は、どのような数値になりましたか。

「え?こんなに低いの?」と焦っている方が少なくないのではないでしょうか。

建設業の粗利率が他業界より低くなりがちな理由として、以下の3つが考えられます。

・原価(材料費や人件費)が高騰しているから
・入札によって工事の低コスト化を避けられないから
・予測外のコストが発生しやすい​​から

順に解説します。
自社の問題を適確にとらえるためにも、建設界の現状を頭に入れておきましょう。

3-1. 原価(材料費や人件費)が高騰しているから

粗利率が低くなる1つめの理由は、建設業の原価、つまり材料費や人件費が他業界に比べて高いためです。

建設業では、特有の材料や専門技術が必要なため、原価が上がる傾向にあります。

原価の内訳高騰の原因
材料費・コロナ流行、海外紛争の影響で資材輸入が困難になった
・大手建設会社による資材の大量確保で資材不足や価格上昇が加速
・国内の物価高
人件費・高齢化による人手不足
・(若い世代の育成が進まないことによる)技能労働者の不足
・働き方改革により企業が人手補充を余儀なくされている

こうした状況下で、どこも原価を抑えるのは非常に難しく、建設業(特に中小企業)では利益が削られ、粗利率が圧迫される事態が続いています。

3-2. 入札によって工事の低コスト化を避けられないから

他にはない「入札」があることも、建設業の粗利率が低い理由のひとつといえるでしょう。

特に公共事業や大型プロジェクトでは入札が行われることが多く、そのプロセスにおいて企業は合計金額で受注を競い合います。

いかにコストを抑え、安い価格で提供できるかが勝負となるのです。

建設業では価格が他の業種よりも重要視され、企業は利益を犠牲にしてでも受注を確保しなければならないことが少なくありません。

入札があることが競争を激化させ、価格争いを引き起こし、結果、建設業の粗利率を低下させる大きな要因になっているのです。

3-3. 予測外のコストが発生しやすいから

予想外のコストが発生しやすいことも、建設業の粗利率の低下を招いています。

例えば、地盤調査を行った際に予期せぬ土壌汚染や地下水などの問題が発生したり、気象条件によって工期が延びることは珍しくありません。

さらに、クライアントからの追加要望に対応するためのコストも見逃せません。

特に中小企業の場合、プロジェクトの規模が小さく、リスクヘッジの手段も限られているため、予測外のコストが発生した際のダメージは小さくありません。

こうしたプロジェクトごとの利益計画の崩れの繰り返しが、建設業の粗利率低下の一因となっています。

4. 粗利率を本気で上げたいなら「今まで通り」はやめよう

粗利率を本気で上げたいなら「今まで通り」はやめよう

あなたは、自社の粗利率に満足していますか?
満足していないのに、このままを続けようとしていませんか?

ここまで読んできて建設界の現状を理解された方の中には、

「建設業界全体の粗利率が低めだったら、ウチなんかがいくら頑張っても難しいのでは?」

と感じた方もいるかもしれません。

建設業界では、現場の技術やノウハウに優れていても、原価管理や収益の把握を後回しにするケースが多く見受けられます。

しかしながら、
「嘆いていても仕方ないから日々の仕事を頑張ろう。もっと良い仕事をしよう」
といった“今まで通り”を続けていたのでは、この先、利益が確保できないどころか競争力まで失ってしまうリスクがあります。

年々上昇する原価と下がり続ける受注単価の中で、近い将来、現状維持すら難しくなるかもしれません。

そんなリスクを回避するには、粗利率の低さに気づいた今こそ、新しい視点を持って行動することが必要です。

自社の粗利率を上げたいと本気で思うなら、今までのやり方に固執するのはやめましょう。

次章では、粗利率を改善するための具体的な戦略をお伝えします。

5. 建設業の粗利率を上げるための3つの戦略

建設業の粗利率を上げるための3つの戦略

現場に強いという強みを活かしつつ、経営面でも成功を収めるためには、原価管理やプロジェクト管理の見直しが不可欠です。

建設業における粗利率を改善するためには、以下の3つの戦略が有効です。

・原価管理を徹底する
・材料の仕入れ先を再検討する​​
・外注先を見直す

ぜひ読み進めて、御社が新たな利益を生み出すためのヒントを見つけてください。

5-1. 原価管理を徹底する

まず、ムリ・ムラ・ムダをなくすため、原価管理を徹底しましょう。

原価管理とは、プロジェクトにかかる全ての費用を把握し、無駄を排除するための手法です。

具体的には、材料費や人件費の見積もりを細かく行い、予算内に収めるよう努めます。

【原価管理の例】
資材調達

1.何の材料を:必要な資材を特定
2.どのメーカーから:業者を選定して品質や価格を比較
3.何個:必要な数量を正確に見積もり、過剰発注を避ける

→価格交渉を有利に進めることが可能になる
作業手順や人員配置の最適化

1.どの人員を:スキルや経験に応じた適切な人選
2.どの会社から:協力会社や派遣会社などを選定、適正な料金で採用
3.何日間:各作業に必要な日数を計算し、無駄な工期を削減

→現場での作業効率を高めてコストを抑え、無駄をなくすことができる

加えて、過去のデータを元にした原価分析も、プロジェクトのコスト管理に役立ちます。

原価を正確に把握することで、プロジェクト全体のコスト構造が明らかになり、粗利率を意識した経営判断が可能になります。

5-2. 材料の仕入れ先を再検討する

次に、コスト削減のために、材料費の仕入先を見直しましょう。

仕入れ価格のわずかな差が、全体のコストに大きく影響するからです。

仕入れ価格が1個100円の部材が99円に下がっただけでも、200個使用すれば、全体で2,000円のコスト削減につながります。

小さな変化の積み重ねが、経営全体における大きな差を生むのです。

長年の付き合いであるなど、仕入先を変更してこなかった事情はさまざまあると思いますが、生き残りをかけるのであれば、別のメーカーを探すことも選択肢に入れるべきです。

柔軟に仕入れ先を見直し、コストを最適化することが生き残りの鍵となります。

5-3. 外注先を見直す

コストの大きな部分を占める、外注先の見直しも重要です。

外注先の選定や契約条件の再交渉を行うことで、無駄な外注費を削減し、コストを最適化することが可能です。

【外注先を見直す具体的な行動(例)】

・契約内容の再検討:外注先との契約内容を見直し、コスト削減や品質向上の交渉を行います。

・​複数の外注先の利用:競争原理を働かせるために、複数の外注先を検討し、見積もりを比較することで、最適な条件を引き出します。

・内部リソースの活用:1つの外注先に対する依存度を見直し、自社の内部リソースを最大限に活用します。外注費の削減だけでなく、社内のスキル向上にもつながります。

※内部リソース:自社内で利用できる人材、技術、設備、資源など

point!
既に社内リソースを活用している場合は、さらなるコスト削減や生産性向上を目指すために、社内人材への投資が有効です。
たとえば、従業員の資格取得を支援し、新たな技術や業務を社内で対応できるようにすることで、長期計画ではありますが、外注に依存しない体制が強化されます。

上記のうち、「契約内容の再検討」は、​​定期的にチェックして、現状に合った料金や業務内容の最適化を提案していきましょう。

また、価格削減だけでなく、品質向上や作業効率の改善を長期的に目指すことで、外注先との関係を強化しつつ、コスト管理を行えます。

外注費を抑えることで全体的なコスト構造が改善され、結果として、粗利率の向上に寄与します。

6. 粗利率を劇的に向上させるならシステム化がおすすめ!

粗利率を劇的に向上させるならシステム化がおすすめ!

粗利率を、なるべく早く、劇的に向上させたいなら、システム化がおすすめです。

システム化とは、業務プロセスを整理し、デジタルツールやソフトウェアを活用して管理することです。

粗利率を上げる戦略をお伝えしましたが、手作業に頼り続けていると、予算超過やコストの見落としが生じる可能性が否めません。

こうしたリスクを防ぐためにも、システム化を検討しましょう。

以下に、システム化によって実現できる4つの事例をご紹介しますのでご覧ください。

システム化によって実現できる4つのこと
1.原価管理のシステム化

デジタルツールを使って原価をリアルタイムで確認し、コストの見落としや予算超過を未然に防ぐことができます。
2.工事進捗の見える化

プロジェクト管理システムを活用して、工事の進捗状況を一目で把握できるようにし、無駄な作業を排除して全体の効率化を図ります。
3.受発注業務や外注管理のシステム化

受発注プロセスや協力会社の管理をデジタル化することで、作業の手間を減らし、コスト削減効果が期待できます。
4.データ分析で利益率が高い施工方法の採用

システムで蓄積されたデータを分析することで、最も利益率の高い施工方法を特定し、選択することが可能です。

このように、システム化を導入することで、効率的かつ戦略的なコスト管理が可能になり、粗利率の向上に大きく貢献します。

「システム化」と聞くと、手間がかかると感じる方がいるかもしれませんが、導入後は負担やストレスが大きく軽減されますので、ぜひ検討してみてください。

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7. まとめ

建設業の粗利率は約23%と、他の業界に比べて低い傾向にあります。

理由として、原価(材料費や人件費)が高いことや、業界内での激しい競争の影響が考えられます。

粗利率を改善するためには、次の3つの戦略が有効です。

・原価管理を徹底する
・材料の仕入れ先を再検討する​​
・外注先を見直す

劇的な向上を目指すのであれば、早めに原価管理等のシステム化を検討しましょう。

あなたの会社の経営改善や利益向上に、この記事を活かしていただければ幸いです。

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