建設業の働き方改革|事業者側が対応すべき4要素をわかりやすく解説

「建設業の働き方改革について詳しく知りたい!何が変わる?」
「働き方改革って、会社が対応しなきゃいけないんだよね?どこから始めればいい?」

2024年4月から、建設業でも本格的な働き方改革が適用されました。

しかし、実際には「働き方改革で何が変わるのか」「どこから手を付ければいいのかわからない」という声が、依然として多く聞かれます。

建設業の働き方改革で、事業者側が対応すべき主な要素は以下の4つです。

建設業の働き方改革の4要素
1.時間外労働の上限
  • 1ヶ月で45時間まで
  • 1年で360時間以内
2.同一労働同一賃金の導入
  • (正社員と非正規社員の間にある)賃金や福利厚生、待遇の不公平を是正
3.時間外労働の割増賃金率の引き上げ
  • 中小企業も大企業と同じ50%へと引き上げ(従来は25%)
4.年次有給休暇の取得義務化
  • 「年間5日以上の有給休暇の取得」を義務化

この記事では、建設業の働き方改革の概要をくわしく解説します。

また、改革推進とサポートのために国が策定した、「建設業働き方改革加速化プログラム」の内容もわかりやすくお伝えします。

さらに、条文だけではイメージが湧かないという方のために、実際の企業の取り組み例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

【この記事を読めばわかること】
  • 建設業の働き方改革の内容
  • 働き方改革を進めるための国の取り組み
  • 【事例紹介】他社の働き方改革の実例
  • 働き方改革に悩んだときまず何から始めればいいか

働き方改革は決して簡単ではありません。

むしろ、作業員の負担が増えたり、現場の混乱を招いたりするケースも少なくないのが現状です。
特に、中小建設業者からは「国の施策や支援は大手の元請業者には有効だが、現実的な対応策ではない」との声も上がっています。

それでも、適用が始まった以上、改革への対応は避けられません。

本記事では、「まず何から手を付けるべきか」という優先順位にも触れながら、具体的な対策を解説します。

この記事を読むことで、働き方改革をきっかけに、会社の未来を見据えつつ「今、何をすべきか」を明確に判断できるようになります。

「期限が過ぎてしまい、どう対応すればいいかわからない」という方も大丈夫です。
改革のポイントを理解し、今からでも落ち着いて準備を進められるようになりますので、ぜひ最後まで目を通していただけたらと思います。

目次

1. これが変わった!建設業の働き方改革の4要素

これが変わった!建設業の働き方改革の4要素

建設業における「働き方改革」の最大のポイントは、時間外労働の上限規制と、それに関連する労働条件の改正です。

【前提条件として知っておくべきこと】

「働き方改革」とは、2019年4月から施行された「働き方改革関連法」に基づく国や企業の取り組みです。

少子高齢化や育児・介護など、働く人のニーズが多様化する状況に対応するため、多様な働き方を選択できる社会を実現するために、下記のような施策が導入されました。

  • 労働条件の改正
  • テレワークの普及
  • 育児・介護休業制度の充実
  • 正規と非正規の格差是正

他業界では2019年から施行されていたこの改革ですが、建設業は人手不足や高齢化、長時間労働が常態化しているため、急激な変化に対応するのは難しいとされ、5年間の猶予が与えられていました。

しかし、ついに2024年4月1日、その猶予が終了し、建設業にも時間外労働の上限規制を主とする「働き方改革」が本格的に適用されることになったのです。

1章では、建設業の働き方改革で、事業者側が対応すべき4要素を解説します。

  1. 時間外労働の上限が設けられた
  2. 同一労働同一賃金が導入された
  3. 時間外労働の割増賃金率が引き上げられた
  4. 年次有給休暇を5日取得させなければならない

順に解説します。
しっかり把握して、変化に適応していきましょう。

1-1. 時間外労働の上限が設けられた

時間外労働の上限が設けられた

まず1つめの大きな要素は、2024年4月から時間外労働の上限が設けられたことです。

具体的には、時間外労働は、原則「1カ月で45時間、1年で360時間以内」が限度と定められました。※時間外労働:法定時間(1日=8時間、1週間=40時間)外で労働することを指す

上限規制の詳細を、下表にまとめましたのでご覧ください。

これまでの規制2024年4月以降の規制
時間外労働の上限上限なし
  • 1ヶ月で45時間以内
  • 1年で360時間以内
臨時的な特別措置※なし
  • 年間の時間外労働は720時間以下
  • 直近2〜6ヶ月平均で80時間以下(休日労働含む)
  • 1ヶ月の時間外労働は100時間未満(休日労働含む)
協定使用者と労働者が「36協定」※を結べば、上限なく時間外労働が可能使用者と労働者が協定を結んでも、上記の上限を超えることはできない

臨時的な特別措置:繁忙期などに限り例外的に時間外労働が認められる。ただし、一時的なものであり、年間を通じて適用できるものではないことに注意が必要
36(サブロク)協定:時間外労働や休日労働をすることについての協定
※災害復旧の場合は、例外が適用されることもある

しかも、この規制には違反した場合に以下のような罰則が科されます。

  • 6か月以下の懲役
  • 30万円以下の罰金

違反すると、事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があるため、法令順守が非常に重要です。

1-2. 同一労働同一賃金が導入された

同一労働同一賃金が導入された

2024年4月からは、建設業でも、同一労働同一賃金が正式に導入されました。

同一労働同一賃金とは、同じ業務内容・責任を担う従業員に対して、雇用形態(正社員・非正規社員)に関わらず、公平な賃金を支払うという考え方です。

これは、正社員と非正規社員の間に存在する賃金や福利厚生、待遇の不公平を是正することを目的とした制度です。

他業界では働き方改革の一環として2021年から施行されていましたが、建設業では、

  • 職務内容が多様で業務範囲の明確化が難しい
  • 慢性的な人手不足で賃金引き上げがコストの負担になる

などの理由から導入が遅れていました。

しかし、2024年の適用開始で、これらの課題を克服しつつ、業界全体に雇用の公平性向上が求められるようになったのです。

現状、罰則等はありませんが、制度違反があった場合、労働者から損害賠償などの訴訟を起こされるリスクがあり、ケースによっては是正勧告を受ける可能性があります。

企業の社会的信用を守るためにも、適切な対応をしていきましょう。

1-3. 時間外労働の割増賃金率が引き上げられた

時間外労働の割増賃金率が引き上げられた

3つ目の要素は、2023年4月から施行されている、時間外労働の割増賃金率の引き上げです。

1ヶ月の時間外労働が60時間を超える場合の割増賃金率は、以前は中小企業では25%でしたが、改革で、中小企業も大企業と同じ50%へと割増賃金率が繰り上げられました。

この背景には、過重労働を減らし、従業員の健康や生活の質を改善しようという狙いがあります。

企業は、コストの増加を抑えつつ業務の効率化を図る必要があり、これまで以上に労働時間の管理や時間外労働の削減に取り組むことが求められています。

1-4. 年次有給休暇を5日取得させなければならない

年次有給休暇を5日取得させなければならない

既に2019年から義務化されていますが、「年間5日以上の有給休暇を取得させなければいけない」と規定されたのも、働き方改革のひとつです。

これは、従業員の健康管理や、家族との時間、リフレッシュを促進し、モチベーションを高めるための取り組みです。

しかし、建設業界では、未だにこの規定が十分に守られていないのが現状です。
元々有給休暇の取得率が低い上に、業務の繁忙期や人手不足を理由に、取得を後回しにするケースが多く見られます。

【建設業は有給休暇の取得率が低い】
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査の概況によると、令和4年に建設労働者に付与された有給休暇の平均日数は17.8日。このうち実際に取得できた日数の平均は10.3日、平均取得率は57.5%でした。

出典:厚生労働省|令和5年就労条件総合調査の概況を元に作成前回調査(2021年度)の53.2%から、4.3ポイント増えていますが、企業から付与された有給休暇のうちの7日分は利用できていない計算となっています。全産業の平均取得率が62.1%で過去最高であることからみても、建設業の有給休暇取得率が低いことがわかります。

建設業では、従業員が有給休暇を取りづらい雰囲気が残っている企業もあり、取得状況にばらつきがあるのが実情です。

年間5日以上の規定に罰則はありませんが、企業が義務を守らない場合、労働基準監督署から指導を受けることがあります。
さらに、有給休暇の取得率が低いことは、企業のイメージや社会的信用に悪影響を与える可能性もあります。

実際、従業員の健康維持やワークライフバランスを考慮すると、年次有給休暇の適切な取得は非常に重要です。

職場で有給休暇を取りづらい空気を作らないように呼びかけたり、繁忙期に重ならないように事業者側から有給休暇の取得時期を指定するなど、従業員が積極的に有給休暇を取得できる環境を整えていきましょう。

2. 建設業の働き方改革|国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」とは

建設業の働き方改革|国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」とは

建設業の働き方改革を進めるために、国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。

このプログラムは、国が建設業界全体で取り組むべき方向性を示し、働き方改革を推進するための旗振り役としての役割を果たしていています。

プログラム自体に法的な強制力はありませんが、建設業界特有の課題を整理し、国としてどのように働き方改革を進めていこうとしているのかが明確に示されています。

具体的には、働き方改革を以下の3つの分野に分け、それぞれの課題に対応するための指針を取りまとめたものです。

  1. 長時間労働の是正
  2. 給与・社会保険
  3. 生産性向上

指針ですので、これをそのままやれば必ず成功するというわけではありません。

ただ、しっかり理解しておくことで、業界全体が同じ目標を持って進んでいく助けになります。

結果的に、貴社の従業員の方の働きやすさや、会社の未来につながることですので、よく読んで把握しておきましょう。

わかりづらい部分はできるだけ噛み砕いて解説していきます。

2-1. 長時間労働の是正に向けたプログラム

1つめは、長時間労働の是正に向けたプログラムです。

この取り組みの目的は、「働きすぎを防ぎ、休みを増やして健康的に働ける環境を作る」ことです。

ただし、休みが増えることで収入が減らないように考慮されています。

長時間労働の是正
【国が実施している週休2日制の導入を後押しする取り組み】
建設業においては、すべての工事でいきなり週休2日制を取り入れるのは現実的ではないという背景から、まずは公共工事の案件から週休2日制を始めて、次に民間工事にも推進していくという方向性です。

公共工事で週休2日制の効果や方法を実証し、それをモデルケースとして民間の工事にも普及させることを目指しています。

具体的な取り組みの方向性は以下の通りです。


  • 公共工事における週休2日工事を大幅に拡大させる
  • (週休2日制の導入により、労働時間の短縮が求められるため)公共工事において、労務費(労働にかかる費用)やその他関連する費用の調整(補正)を行う
  • 週休2日・女性登用などに積極的に取り組む企業を評価する
  • 週休2日制を実施している現場等(モデルとなる優良な現場)を見える化する
  • 民間工事でも週休2日工事のモデル工事を試行
【各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定を推進する】
各発注者の特性に応じて、適切な工期を設定できるようにするための取り組みです。
  • 受発注者双方が協力して、工期の改善を推し進める。
  • 各発注者による適正な工期設定を支援するため「工期設定支援システム」※を地方公共団体等への周知を進める

※工期設定支援システム:国土交通省が地方公共団体を含む様々な発注者の工期設定をサポートするために公開しているシステムです。

<工期設定支援システムについて詳しく知りたい方はこちらをクリック>
工期設定支援システム

2-2. 給与・社会保険

2つめは、給与・社会保険に関するプログラムです。

技能や経験にふさわしい処遇(給与)と、社会保険加入の徹底に向けた環境を整備するための施策になります。

簡単な言い方に置き換えると、「働いた分に見合った給与がもらえ、万が一のときにも保険で守られる安心感を提供する」ための取り組みです。

給与・社会保険
【スキルや経験にふさわしい給与を実現する】
すべての労働者が、スキルや経験に応じた適切な給与を実現できるようにする取り組みです。
  • 発注関係団体・建設業団体に対して労務単価の活用や適切な賃金水準の確保を要請する
  • 建設キャリアアップシステム※の稼働。5年を目処に全ての建設技能者の加入を推進する
  • 技能・経験にふさわしい処遇(給与)が実現するよう、建設技能者の能力評価制度を策定する
  • 高い技能・経験を有する建設技能者に対する公共工事での評価や、当該技能者を雇用する専門工事企業の施工能力等の見える化を検討する
  • 民間発注工事における建設業の退職金共済制度の普及を関係団体に対して働きかける

※建設キャリアアップシステム:技能職のキャリア・資格・社会保険加入状況などを蓄積していく仕組み。所属企業が変わったとしても、横断的に情報を保持することができます。

<建設キャリアアップシステムについて詳しく知りたい方はこちらをクリック>
建設キャリアアップシステム

【社会保険加入を建設業でのミニマム・スタンダードに】
建設業における最低限の基準として、すべての従業員が社会保険に加入することを推進する取り組みです。

働き方改革に先立ち、社会保険の加入が義務化されており、これに加入していない場合、発注ができないだけでなく、建設業の許認可も受けられないという強めの方針が示されています。

  • 全ての発注者に施工会社(下請含む)を社会保険加入業者に限定するよう要請する
  • 社会保険に未加入の会社は建設業の許可更新を認めない仕組みを構築する

2-3. 生産性向上

最後の3つめは、生産性向上を目指すプログラムです。

ICT(情報通信技術)やi-Constructionといった新しい技術を活用して効率化することで、無駄な作業を減らし、同じ時間内でより多くの成果を出せるようにします。

言い換えると、「新しい技術を使って、より早く、効率的に仕事を進める仕組みを導入する」ことで、働く人の負担を減らし、収入も向上させるための指針です。

生産性向上
【生産性の向上に取り組む建設企業を後押しする】
生産性向上に取り組んでいる建設企業を支援する取り組みです。
  • 中小の建設企業による積極的なICT活用※を促すため、公共工事の積算基準等を改善する
  • 生産性向上に積極的に取り組む建設企業等を表彰する
  • 人材育成で生産性向上につなげるため、建設リカレント教育※を推進する

※ICT:情報通信技術のことです。例)データのクラウド管理システムなど
※建設リカレント教育:建設の技能や技術を継続的に学び直す教育のことを指します。

【仕事を効率化する】
仕事の効率化を進め、よりスムーズで効果的な業務運営を実現するための指針です。
  • 建設業の許認可手続き負担を軽減するため、電子化する
  • 公共工事の関係書類の簡素化するなど、IoT※や新技術の導入等により、施工品質の向上と省力化を図る
  • 建設キャリアアップシステムを活用し、書類作成等の現場管理を効率化する

※IoT(モノのインターネット):モノに搭載されたインターネット技術が自動的に作動する仕組みを指します。

【限られた人材・資機材の効率的な活用を促進する】
限られた人材や資機材を、効率的に活用することを促進する取り組みです。
  • 現場に配置する技術者の将来的な減少を見据え、配置義務の合理化を検討する※1補助金などを受けて発注される民間工事も含めた施工時期の平準化を進める※2

※1「配置義務の合理化を検討する」について
建設現場では、「現場ごとに技術者を配置しなければならない」という決まりがあります。
しかし、将来的に技術者の数が減っていくと、すべての現場に人を配置するのが難しくなる可能性があります。そこで、「技術者配置の義務をどうすれば現実的で効率的に運用できるか」を検討しようというのがこの部分の趣旨です。

例)1人の技術者が複数の小規模現場を管理するなど効率化、合理化を検討する

※2「施工時期の平準化を進める」について
国や自治体だけでなく、補助金を受けて行われる民間の工事でも、建設工事が「忙しい時期」と「暇な時期」に偏らないように、工事のスケジュールをもっと均等に調整していこう、という意味です。

ご承知のように、建設業界では、忙しい時期(年度末や特定の季節など)に工事が集中してしまうことがよくあります。そのため、人手不足や過重労働が余儀なくされているわけです。
これを避けるために、工事を年間を通じて均等に分散させる「平準化」が重要になります。

【重層下請構造改善のため、下請次数削減方策を検討する】
建設業では、大きな会社が仕事を受注し、その仕事をさらに何層も下請け業者に回す仕組み(=重層下請構造)があります。
この構造を改善するために、「下請けの階層(段階)の数を減らす方法」を考えよう、という提起です。

方針としては、次のようなものが検討されています。

  • 直接契約を増やす:元請け会社が現場の作業者と直接契約し、間に入る会社を減らす
  • 規制や支援を導入する:下請けの段階が過剰に多くならないよう、法律や補助金を活用する

出典:国土交通省|建設業働き方改革加速化プログラムを元に作成

このように、働き方改革加速化プログラムは建設業の未来に向けて大きな変革を促しています。

次の章では、実際に働き方改革に取り組んで国から評価された企業を3つご紹介しますので、具体例をみていきましょう。

3. 【3つの事例】建設業の働き方改革|実際の取組み

【3つの事例】建設業の働き方改革|実際の取組み

建設業の働き方改革について大枠を掴んでいただけたでしょうか。

具体的にイメージしていただくために、3章では、国土交通省が発表している働き方改革推進のための事例集より、実際の企業の取り組みをご紹介します。

  1. ⼤福⼯業株式会|従業員が⼯程管理を意識して働くようになった!
  2. 太啓建設株式会社|勤怠管理システムで残業時間の削減に成功!
  3. 刈屋建設株式会社|クラウド共有による作業効率化!

ご覧いただけばわかる通り、取り組み方は従業員のモチベーションを上げるため、また会社の将来的な成長を見据えたものまでさまざまです。

貴社では何から始められるか、何が参考になるかを考えながらみていってください。

3-1. ⼤福⼯業株式会|従業員が⼯程管理を意識して働くようになった!

⼤福⼯業株式会|従業員が⼯程管理を意識して働くようになった!
出典:大福工業株式会社

島根県出雲市に本社を置く大福工業株式会社では、⻑時間労働是正の取組として、休⽇の確保と処遇の改善を実施しています。

また、新たな担い⼿を確保するため、会社全体の労働環境整備の充実に力を入れています。

企業情報
主な許可業種土木一式工事業
年間完成工事高10億円以上
従業員数30〜99人
元請・下請割合元請工事が主である

取り組みの具体的な内容は以下の3つです。

1.週休2日制の導入
  • 従業金の長時間労働是正に係る取り組みとして、週休2日制度を取り入れている。
2.人員配置の見直し
  • 毎週⾏っている⼯程会議により⼈員配置(下請業者含む)を⾒直し、社員が計画的に有給休暇を取得できるように努めている。
3.各種制度の見直し
  • 確定拠出年⾦の加⼊、社内表彰制度、資格取得⽀援、予防接種全額補助、各種レクリエーション等、福利厚⽣を充実させている。
  • 給与等受給者⼀⼈当たりの平均受給額を前年⽐1.5%以上アップする宣⾔を⾏っている。

こうした取り組みの効果を得るため工夫した点、実際の効果は次の通りです。

【取組の効果を得るために⼯夫した点】
  • ⼤型連休付近での有給休暇取得や計画的に何時でも⾃由に休暇取得ができるように部⾨⻑が管理し、常に声がけをしている
  • ⼯程会議を行い、問題点や各現場の状況、施⼯⽅法(時間短縮や必要⼈員、新技術の導⼊など)を共有し、全社員が協力できる体制を整えている
  • 新規従業員の確保のため、率先して学⽣達の職場体験や企業説明会に参加している
  • 第三者へも当社の魅⼒を発信するため、初任給や就業規則の改定、福利厚生の見直しなどをHPに記載、更新を怠らないようにしている
【取組の効果】
  • 週休2⽇制度を加味した⼯程表を作成した結果、従業員が⼯程管理を意識して働くようになった
  •  ⼈員配置を常に留意する事により、平均残業時間が減少するとともに有給取得率(前年⽐15%アップ)も向上し、従業員のリフレッシュ効果や家族と過ごす時間が増加した
  • 資格取得に向けての勉強時間が確保され、仕事への取組意識がより強まった
  • 福利厚⽣を充実させることにより、安⼼して働ける環境になったとともに、⼊職者数も毎年増加傾向にあり、1⼈当たりの⻑時間労働を抑制している
    (⼊職者数R3年3⼈、R4年5⼈)
  • 平均給与受給額前年⽐1.5%以上アップの宣⾔を⾏ったため、従業員が安⼼して休暇が取得できるようになった

3-2. 太啓建設株式会社|勤怠管理システムで残業時間の削減に成功!

太啓建設株式会社|勤怠管理システムで残業時間の削減に成功!
出典:太啓建設株式会社

愛知県豊田市の太啓建設株式会社では、⻑時間労働是正の取組として、スマートフォンを活⽤した勤怠管理を実施しています。

勤怠管理情報をデータ化することで、現場の労働状況の把握が可能となりました。
これを利用し、⼈員が不⾜している現場には応援として増員することで、時間外労働時間の削減を図っています。

企業情報
主な許可業種とび・土木工事業
年間完成工事高10億円以上
従業員数100人〜299人
元請・下請割合元請工事が主である

取り組みの具体的な内容は次の通りです。

<スマートフォンを活⽤した勤怠管理>
勤怠管理システムを2019年より導入。
出勤退勤時間、休暇申請を社員各⾃がスマートフォンのシステムに登録し、所属上⻑が確認をして、残業時間・休暇⽇数を把握するようにしている。

各⾃の勤怠管理を毎週データ化して、主管部において残業時間・内容・⼟⽇作業の状況を確認。
ヒアリングにより、⼈員不⾜による残業増加・付き合い残業等を把握することで、時間外労働時間削減に努めている。

こうした取り組みの効果を得るため、工夫した点、実際の効果を以下にまとめました。

【取組の効果を得るために⼯夫した点】
  • 残業時間の詳細(各残業内容及び要した時間、残業削減に対する取り組み、休暇・残業時間削減が出来なかった理由等)をアンケート⽅式で毎⽉実施し、調査内容をデータ化して、今後の改善点に繋げるようにしている
【取組の効果】
  • 各現場の繁忙期が週単位で確認でき、忙しい時期における⼈員の増員を⾏うことにより、残業時間の削減を⾏うことができた
  • 勤怠管理システムを導⼊したことにより、毎⽉の現在の残業時間が把握できるようになり、⽬標労働時間内であるか判断する際の⽬安として活⽤できている

3-3. 刈屋建設株式会社|クラウド共有による作業効率化!

刈屋建設株式会社|クラウド共有による作業効率化!
出典:刈屋建設株式会社

岩手県宮古市に本社を置く刈屋建設株式会社では、⽣産性向上の取り組みとして、現場の通信環境整備、クラウド共有による作業効率化を図っています。

グループウェアを導⼊することで、現場の進捗状況を会社が随時確認することが可能となり、早期の問題解決が可能になりました。

企業情報
主な許可業種土木一式工事業
年間完成工事高10億円以上
従業員数30人〜99人
元請・下請割合元請工事が主である

取り組みの具体的な内容は以下の4つです。

1.週休2日制の導入
  • 令和2年より4週6休から4週8休をめざして完全週休2日制に取り組む。
2.インターンシップ受⼊等による積極的な採⽤活動
  • 毎年新卒求⼈を出し、積極的な採⽤活動をしている。また、⾼校性のインターンシップも受け⼊れている。
  • 新⼈教育はベテラン技能者のもとでOJTで⾏い、技能を修得させている。

※OJT(オンザジョブトレーニング):上司や先輩が実際の仕事を通じて指導し、知識や技術など身に付けさせる教育方法

3.通信環境整備による移動時間削減
  • 各現場事務所にネットワーク環境を整え、会社に戻らなくても仕事ができるようにした。
  • グループウェアにより現場と会社の情報共有を図っている。
    (各現場の作業所⻑は、毎⽇その⽇の作業内容、⼈員配置、作業状況の写真をグループウェアにあげて、⼯事の⾒える化を図っている。現場の進捗状況を随時確認でき、⼯期の遅れがあった場合そちらへ⼈員を回すなど、会社全体で問題解決にあたることができる。)
4.クラウド共有による作業効率化
  • 現場でクラウドシステムを導⼊し、複数⼈で書類の共有
  • タブレット端末を利⽤することにより、写真撮影から写真管理ソフトへのアップロードまでの時間を短縮
  • 最新のiPhoneを活⽤し、現場の3D写真を撮って発注者と打合せを⾏うようにしている。
    (3D 写真は全体の様⼦をリアルに⾒ることができ、2点間の距離も画⾯上ですぐ取得可能。3D撮影したデータを、現場から発注者へ送付し、発注者と会社で情報を共有することができる)
  • パソコンがあまり得意でなく書類作成等に時間がかかりそうな⼈には、パソコンが得意な技術者や事務員がフォローにあたるなど、⼈員配置を⼯夫した。

こうした取り組みで得られた主な効果は次の通りです。

【取組の効果を得るために⼯夫した点】
  • 毎年施⼯管理ソフトの講習に参加している
  • 測量機メーカーや建設機械メーカーなどが開催する、ITツールやICT機械の講習にも積極的に参加している
【取り組みの効果】
  • 現在4週8休を達成している
  • クラウド管理によって、複数⼈で書類を共有することができ、作業の分担が可能になった
  • 現場と会社間で情報共有をして進捗状況を随時確認できるようになり、早期に問題解決できるようになった

出典:国土交通省不動産・建設経済局建設業課|建設業における働き方改革推進のための事例集

いかがでしょうか。
働き方改革にいち早く取り組んだ企業では、おしなべて良い効果を得ていることが分かっていただけたかと思います。

ただ、「素晴らしいとは思うが、ウチですぐ取り入れるのは難しい」と、感じる方もいるのではないでしょうか。
次章では、建設業の働き方改革が直面する問題を探ってみましょう。

4. 簡単じゃない!建設業の働き方改革で起きる問題

簡単じゃない!建設業の働き方改革で起きる問題

ここまで、建設業の働き方改革の概要や成功例について紹介してきました。

しかし、実際の現場では、働き方改革を進める中でさまざまな課題が浮き彫りになっています。

  1. 賃金低下と作業員への負担の増加
  2. 工期短縮による現場の混乱

国の施策や支援は、大手の元請業者には効果的であっても、中小建設業にとっては現実的な対応策ではないという声もあります。

4章では、働き方改革で起きる2つの問題について掘り下げていきます。

4-1. 賃金低下と作業員への負担の増加

働き方改革の影響で、かえって作業員の賃金が下がり、負担が増加してしまったという状況が起きています。

時間外労働規制など労働時間短縮の取り組みが進むことで、時間単価制で働く従業員の収入が減少してしまうというケースが少なくありません。

また、短時間で従来と同じ仕事量をこなす必要があるため、作業効率が上がらない現場では逆に負担が増大してしまうことがあります。

<具体例>ある現場では、残業削減の取り組みにより時間外手当が大幅に減少し、生活に影響が出た従業員が続出しました。

同時に、新しい作業ツールや効率化の施策が遅れたため、限られた時間内で過重な作業が求められる事態に陥りました。

働き方改革を進める中で、収入の維持と負担軽減のバランスを取ることは、大きな課題となっています。

4-2. 工期短縮による現場の混乱

働き方改革により、従来の工期で仕事を受けられないという現実から、現場の混乱を引き起こす場面が増えています。

改革により、週休2日制や労働時間制限が求められる中では、工期の短縮は避けられません。

そのためには十分な人員の補充が必要ですが、中小建設業者では十分な人員やリソースを確保するのが難しく、無理なスケジュールが作業員の疲弊や安全リスクの増加を招いているのです。

<具体例>たとえば、週休2日制を導入した現場では、工期の短縮に伴い作業スケジュールが詰め込み型になり、結果的に現場全体が混乱していまいました。

短い工期に追われたために、ミスやトラブルが続いて突発的な対応が増え、効率化どころか非効率な状況に陥ってしまいました。

工期短縮への対応には、無理のないスケジュール設定や柔軟な体制づくりが不可欠です。

しかし、これを実現するには多くの課題が伴います。
前述の、国が提供する工期設定支援システムなどを参考にしながら、一歩ずつ改善を進めていくことが求められます。

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5. 建設業の働き方改革は優先順位を決めて一歩ずつ進めよう

建設業の働き方改革は優先順位を決めて一歩ずつ進めよう

働き方改革は必須だとわかっていても、常に忙しく、リソースも不足している状況の中、

「課題が多すぎて何から始めればよいかわからない」
「できればこのまま変えたくないのに…」

と悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。

働き方改革は、優先順位を決めて一歩ずつ前に進めましょう。

容易に変えられない現状も理解できますが、立ち止まっている時間はもうありません。

建設業に与えられた5年の猶予期間が過ぎ、今後の成長や企業の存続を考えれば、改革を進めることは避けて通れません。

改革は、単に法令遵守のためではなく、業界全体、そして貴社の将来のためにも必要です。
今行動しなければ、競合に差をつけられる可能性もあります。

ただし、急にすべてを変えようとするのは逆効果で、以下のような事態を招きます。

【注意】一気に改革しようとするとこんな事態を招く!
  • 新しい技術を導入しても、従業員が使いこなせず、現場が混乱する
  • 休みを増やすだけでは、賃金が減り、会社の負担が増える
  • 仕事のスケジュールがタイトすぎると、事故やトラブルが起きる

働き方改革は、一度にすべてを変えようとせず、優先順位を決めて一歩ずつ進めることが大切です。

まず最初に取り掛かっていただきたいのが、業務を効率化する基盤づくりです。
それができれば、現場への負担を抑えつつ、働き方改革を進められます。

次章では、業務効率化を手軽に実現し、働き方改革を促進できるクラウドツールの導入について解説します。

6. 建設業の働き方改革はクラウドツールの導入から始めるのがおすすめ

建設業の働き方改革はクラウドツールの導入から始めるのがおすすめ

働き方改革の最初の一歩として、業務を一気に効率化できる建設業界に特化したクラウドツールの導入がおすすめです。

クラウドツールは、インターネットに接続するだけで、クラウド上のソフト(アプリ)を利用できるサービスです。

クラウドツールを導入すれば、現場の進捗状況をリアルタイムで把握でき、他の業務やシステムとの連携もスムーズになるため、業務の効率化が一気に進みます。
その結果、ミスやトラブルが減り、人員や作業時間の不足を補うことも可能です。

しかも、クラウドツールには、次の3つの利点があります。

  • 費用がリーズナブル
  • 簡単に導入できる
  • 専門知識がなくても使える

クラウドツールの導入の効果を下表にまとめましたのでご覧ください。

機能具体的な効果
工事の進捗状況の可視化進捗がリアルタイムで把握でき、スケジュール調整が迅速になる
受発注や外注先の管理ミスが減り、外注先との連携がスムーズになる
データの一元管理資料や情報がどこからでもアクセスでき、共有が容易になる
過去のデータ分析コスト削減や業務改善に繋がるデータを活用できる

デジタル操作に不慣れな方は「クラウドの導入って難しいんじゃ…?」と不安に思うかもしれませんが、現在のクラウドツールは導入が非常に簡単で、ほとんどの人が使いこなせる仕様になっています。

働き方改革の対応にお悩みなら、まずは導入しやすく、徐々に業務の効率化を実感できるクラウドツールの導入から始めましょう。

建設事業を行う「エルライン」だからできる “働く人のためのDX

建設業の働き方改革でDXを検討されている方は、
現場革命を牽引するエルラインにお任せください!

専門工事事業の実績を持つエルラインは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて建設業界の中小企業経営を支援し、経営を安定化する様々なサービスを展開しています。

【LPRE(エルプレ)】
自社の資産でもある資材の数量をいつでもどこでも把握できる在庫管理システム。オンラインで受注管理をおこなえるため、エクセルや紙による管理が不要になり、従来の管理業務にあったさまざまな負担を解消します。

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建設事業を行っているエルラインだからこそ、実際の現場で働く人の目線に立って本当に必要なシステムを開発することで、現場レベルのDX化を実現可能にしています。

働き方対改革の第一歩として業務効率化を考えるなら、現場で働く人のためのイノベーションを推進するエルラインのシステムをご検討ください。

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6. まとめ

2024年4月から適用された「建設業の働き方改革」は、大きく4要素に整理できます。

  1. 時間外労働の上限規制
  2. 同一労働同一賃金の導入
  3. 時間外労働の割増賃金率の引き上げ
  4. 年間5日以上の有給休暇の取得の義務化

労働環境の向上を目的として施行された働き方改革ですが、建設業の現場では、以下のような課題も浮き彫りになっています。

  • 賃金低下と作業員への負担の増加
  • 工期短縮による現場の混乱

これらの課題を解決するためには、働き方改革を一度に全て実現しようとするのではなく、優先順位をつけて、段階的に進めていくことが重要です。

この記事が、御社の業務の効率化や改革の実現に少しでも役立てば幸いです。

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